0-1 女神様とプロローグ
予告していた新作です。最初のパートは短め。
「陽向さーん。朝ですよー」
「ぅんん……あと5分」
ダメです。と、布団を剥がされ、5分どころか1分も寝かせてもらえなかった俺はしぶしぶ目を覚ました。
「まったく、夏休みだってのに」
「まったく、じゃないですよ。もう9時ですよ?」
「まだ、9時の間違えだろ」
「このようでは、しばらく帰れそうにないですね」
「もとを辿ればお前が悪いんだろ」
「むぅ……たしかにそうですけど」
そんなことを話しながら俺は朝食を口にする。
「そういえば今朝、奏多さんから電話がありましたよ」
「奏多から?なんだって?」
「海に連れてって欲しいみたいです。水辺さえあれば山でもいいと言っていました」
もう8月の下旬である。イメージだとお盆を過ぎると海にはクラゲが居そうだな。
「今更海ってのはな。山にしとくか」
「私はどちらでも構いませんよ。2人で話し合って決めてください」
と、言いながらアイリスはのんきに湯のみでお茶を啜っている。
おっと、自己紹介がまだだったな。
俺は保井陽向。高校1年生で、今年の春から親元を離れて一人暮らしをしている。
俺を海に誘った奏多というやつは、俺の幼なじみの月宮奏多。クラスのみんなからはカナちゃんとかツキちゃんとか呼ばれていて結構人気者。
そして、一人暮らしをしているはずの俺の目の前にいるこのアイリスというやつはだな……
俺が連れて帰ってきた女神様だ。