06 セレンとサリー
「ルル様は、私たちの不祥事をローザさんには話してなかったんですね」
「気を使わせて申し訳ございません」
グラントとセレンが悲痛な表情を浮かべている。
この状況からして、あまりいい話ではないと思うけど、何も知らない私はどう反応したらいいかわからない。ライルも私と同じで首を傾げていた。
「サリーが行方不明になったのは、私が持ち場を離れたからなんです」
「セレン様がお嫌でなければ、ローザたちにはすべてをお話ししてもらえるとありがたいのですが」
「もちろんです」
「悪いのはセレンだけじゃありません。私も同罪です」
そのあと私は、セレンの口から聖教会の話を聞く。だけどそれは、ある意味当事者でもあった私が初めて耳にする話だった。
「聖女の素質がある子どもが見つかると、確認が取れるまで聖騎士が護衛も兼ねてこっそり見張るんです。五年前、私とグラントさんはその任務についていました」
ということは、まったく気がつかなかったけど、私も聖騎士に見張られていたのか。
「素質だけではなくて、人格も聖女として問題がないのか一緒に調べているのよ」
そうだとすれば、私はこんなんだけど、人格的にはOKが出たと? アウトだったらどうなっていたんだろう。
あの頃どんな子供だったかな……考えると悲しくなりそうなので私は思考を止めた。
「サリーがいなくなった日は、たぶんサリーの家の近くで火事が起こった日だと思います」
「思う?」
そこがはっきりしていないのは、サリーを養っていた叔父夫婦が、サリーがいなくなったことをずっと隠していたかららしい。
もともと、サリーの母親が、父親が誰だかわからないサリーをひとり残して亡くなってしまったため、母親の弟にあたる叔父夫婦が引き取って育てていた。
ところが、サリーに聖女の癒しが使えそうなことがわかり、それをその夫婦が大袈裟に風潮したため、サリーを利用しようとした者に攫われたのではないか、というのが聖教会の見解だ。
叔父夫婦は自分たちの不手際を隠したくて、サリーの父親が迎えに来たんだと言って譲らなかったそうだが。
「セレン様が火事の現場に駆け付けたおかげで、助かった人もいたと聞いておりますわ」
「だからと言って許されるものではありません。聖騎士として職務怠慢であったことは揺るぎようのない事実です。そのせいでサリーが犠牲になってしまったのですから」
「ちゃんとセレンを教育できていなかった私がいけないんです。私たちはずっとサリーが無事でいることだけを祈っておりました。やっと、あの娘に償いができると思っていたのに、薬屋の娘はまったくの別人です。残念でなりません」
セレンだけじゃなくて、グラントさんも窓から覗いていたんだ……。
「あれ? だけどルル様はイヴさんがサリーさんだと思ったから、声を掛けたんじゃないんですか」
私の質問に対して、ルル様は珍しく少し考えてから返事をした。
「人違いだったとしても、あの治癒能力がどういうものなのかを知りたいの。他にも気になることがあるわ」
効能がないはずの茶葉が、なぜ患部に効いているのか。ルル様はご自分の喉に炎症をわざと起こして実際にそれを体験している。その理由を調べる必要があるんだろう。
「まずは、明日イヴさんとそのご家族とお話をしてみようと思っているわ。グラント様、ライル様、セレン様、申し訳ありませんが、イヴさんがこれから誰と接触するか、どなたかに見張っていただきたいのです。お願いしてもよろしいでしょうか」
「それは構いません、ルル様たちはトリスタンが戻ってきたら、五人で宿へ移動してください。ライルたちが護衛しているとしても、何かあるといけませんから、部屋にはカギをかけて絶対外に出ないようにお願いします」
「ええ、そうしますわ。ご迷惑をおかけしてごめんなさいね」
「今回のことは私たちの落ち度で発生した案件です。こちらこそルル様のお手を煩わせることになってしまい、大変申し訳ございません」
「いいえ、わたくしがシャンヒム王国の町を見たいと教皇様に申し上げて、自分から立候補しましたのよ。ですから、わたくしに対して畏まることはひとつもありませんわ」
「そうでしたか。でしたら私は全力で今回の職務を全うするだけです」
「お願いしますわね」
その後私たちは、その場にグラントだけを残してトリスタンが予約した宿屋へと向かった。




