14 あまりしつこいと神罰がくだりますよ
コーデリアは有言実行であれからずっと私にべったりくっついている。ルル様にお友達ごっこの話はしたけど、別にかまわないようだ。国を揺るがす人物でなければ基本的には不干渉らしい。
あれから三日目、私はとても悩んでいた。
私がルル様と一緒にファーガス皇帝と夕食をとっている間、コーデリアが私たちが食べ終わって出ていくまで廊下でずっと待っているからだ。
コーデリアは王宮の敷地内に造られている建物で暮らしている。身分が曖昧な皇族たちが一纏めにされている場所らしい。
希望があれば市井に移ることも可能だけど、それは平民と結婚したいとか、商売がしたいとか、そんな理由がある人くらいしかいない。
監視下に置かれているとはいえ、わざわざ恵まれた生活を手放すなんて稀なことなんだろう。
だから、すぐそこに住んでいるコーデリアは、時間などかまわずに王宮内をウロウロしている。子どもということもあって、あまり警戒もされていないみたいだから好き勝手ができるようだ。
それでも安全面で入室制限をしている私たちの部屋や診察室まではやってこれないんだけど。
「いつご飯食べてるんだろう」
「コーデリア様のことかしら?」
私がポツリとつぶやいた言葉にルル様が反応した。朝から晩まで、私が仕事をしている間以外は、ずっと張り付いている。
それがコーデリア自身の望みのためだとはわかっているけど、ファーガス皇帝をちらっとだけでも見るために、私に合わせて行動しているから、いつでも廊下で待っているので心配になる。
ルル様が無言のままファーガス皇帝に視線を送った。
「放っておけ。可哀そうだとは思ってもひとりだけを特別扱いはできん。コーデリアをここへ呼んだら、それを知った者からの希望が後を絶たなくなるだろうからな」
それはそうだろう。
ファーガス皇帝の妃の座を狙っている令嬢はたくさんいると思うから、コーデリアがファーガス皇帝の心を射止めない限り優遇は難しい。
結局私はコーデリアに何もしてあげられそうにない。あとでちゃんと謝ろう。
「そろそろ、お妃様をお決めになった方がよろしいかと思いますわ。期待して待っていらっしゃるご令嬢たちが不憫ですもの」
ファーガス皇帝を諦められない令嬢たちは婚約もせずにいるのだろう。中には親族に強制されて、自分の意思とは関係ない女の子たちも。適齢期前に他に目が向けばいいけど、そのままだったら婚期を逃すことだって考えられる。
「ルルが聖女の仕事を続けたいなら、それはかまわないのだ。ゼ・ムルブ聖国からウォークガン帝国に拠点が移るだけのことで、儂は何も口出しする気はないぞ」
「ずっと申しておりますが、わたくしはゼ・ムルブ聖国に骨を埋めるつもりですの。お戯れがすぎるようですと、わたくしは二度とこの地に赴くことができなくなりますわ」
「なぜ拒む!? 儂の気持ちは十分わかっているのであろう? あまりに頑なだと儂にも考えがあるぞ」
「わかっているからですわ」
ルル様がファーガス皇帝の気持ちを受け入れられない以上、この話は平行線だろう。
それにたとえファーガス皇帝がルル様を離さないために、物理的に拘束や監禁をしたところで、姿を変えられるルル様を捕え続けることは不可能に近い。
きっとそのことは知らないんだろうけど、そんなことをしたら最後、ファーガス皇帝にも神罰がくだるだろう。
これだけ親しい人間に、ルル様はそんなことしたくはないんじゃないかと思うんだけど……。
「しかたありません。明日この時間に、ファーガス皇帝陛下が納得がされる理由をお話いたしますわ」
「今すぐに話せないことなのか?」
「ええ、用意がございますから、恐れ入りますが明日までお待ちくださいませ」
コーデリアの話から、ルル様とファーガス皇帝の話になってしまった。
だけど重い話のわりにはファーガス皇帝は笑顔のままなんだよな。
何か奥の手でも隠しているんだろうか。
権力者って上辺と思っていることが違ったりするから、本当はすごく激怒してたり、落ち込んでたりするのかもしれないけど。
それにしても、ルル様は本当にファーガス皇帝を納得させることなんてできるんだろうか。




