13 恋する乙女
「コーデリア様もロイヤルヴァイオレットの一員なんですか?」
「そんなわけないでしょ」
「紫キャベツ色の瞳をしているのに?」
「紫キャベツ!? なんて例え方してるのよ貴女は! 普通はワイン色とか牡丹色とかでしょう」
そう言われても、コーデリアの目の色=紫キャベツ色、で私の中では定着してしまっている。
「すみません。それで、どうしてロイヤルヴァイオレットではないんですか」
「――それはお父様がロイヤルヴァイオレットとして認められていないからよ。ロイヤルヴァイオレットの直系でなければ、たとえ私のように瞳が紫色でも皇族の中では傍系扱いになるの」
コーデリアはとても悔しそうだ。
確かに紫色だからと言って、なんでもかんでも皇位継承権を与えていたらきりがないからだろう。
「だから、ファーガス様にも気軽に近づけないのよ」
「そのわりにブリジット様は堂々とされているようですけど?」
「お婆様はお爺様のお気に入りだったから特別なのよ。私の身分ではあそこまで厚かましくはできないわ」
ブリジットは寵姫だったらしい。
だからあんなに強気なんだろう。それに比べてコーデリアは自分の立場はわきまえているっぽい。この子は思っていたより案外まともなのかも。
お貴族様特有の上から目線的な感じはあっても、肩書で言ったら一般人とほぼ変わらない私の質問にも素直に応えてくれるし。
「ちなみにファーガス皇帝陛下のどこがいいんですか」
「全部よ!」
恥ずかしがって誤魔化すかと思ったら即答だった。
「格好いいし、お強いし、それになんと言ってもファーガス様はとてもお優しいのよ。私がお父様のことでからかわれたり、虐められたりしていた時に助けてくれたもの」
それで好きになっちゃったんだ。
ファーガス様は皇帝だけど、コーデリアにとったら物語の王子様みたいな存在なのかもしれない。
「それでね、貴女には、ファーガス様の好みを聞いてきてほしいのよ。私はそれを目指すから」
ファーガス皇帝はルル様に執着しているから好みと言えばルル様だと思う。
「たぶんそれは、誰にでも優しくて、慈愛に満ちている女性、心の美しい人じゃないですかね」
「ファーガス様がそう言ったの?」
「言ってはいませんけど、見てればわかるって言うか……」
「だったら、そういう女性になるわ」
たとえファーガス皇帝を振り向かせることができなかったとしても、本当にコーデリアがルル様みたいになれれば、誰にでも好かれるような女性になるんじゃないかな。
目指すことはコーデリアにとってもプラスになるはずだ。がんばれ。
「今度は貴女の番よ」
「なんのことですか?」
「一方的では主従関係になってしまうじゃないの。親友なんだから貴女の望みも聞くわ。言いなさいよ」
コーデリアはこのままお友達ごっこを貫き通すらしい。
「望みと言われても特に何もありませんが、コーデリア様が頑張ってくだされば、私の幸せにもつながりそうですかね」
「そうなの?」
ファーガス皇帝の相手さえみつかれば、別にどこの令嬢でもかまわない。教皇様から頼まれているルル様だって、この件は早く解決したいだろう。
ここにやる気満々のコーデリアがいるんだし、なんとなく仲良くなってしまったので、私はこのお友達ごっこに付き合ってもいいと思っている。
コーデリアはちょっと若すぎるけど、ファーガス皇帝がルル様を好きなんだから見た目の件はたぶん大丈夫なはず。それに数年待てば、りっぱなレディになるだろう。
その後私は、延々とコーデリアの想いのたけを聞かされた。
どこが好きかなんて聞くんじゃなかったよ。
ルル様の治療が終わって、診察室に使用している部屋に私が戻る前、
「仕事が終わったら、絶対に声を掛けなさいよ」
そう約束させられてから、コーデリアとはいったん別れた。
どうやら私はあの子のことがそれほど嫌ではないらしい。確かにファーガス皇帝のことを目を輝かせて語るコーデリアは純粋でとても可愛らしかった。
「夕食時にコーデリアの席を設けてもらうことはさすがに無理かな」
でも、どうにかしてあげたいとは思っている。




