04 謝罪
「私は聖女と話をしているのだ」
今日もルル様に断られたため、ただでさえ機嫌の悪かったエラン王太子が私の言葉でさらに悪化してしまった。
「ローザさん、口を挟むなんてエラン王太子殿下に向かって失礼ですよ。聖教会は規律や規則がとても厳しいはずですのに、教養のない平民あがりはこれだから困る」
王太子とリコードから責められる私。この場の雰囲気からして、謝った方がいいんだろうけど、また難癖つけられる恐れがあるし。どうしようかと迷っていた私をルル様が手で制する。
「皆様、申し訳ございません。ローザの不敬はわたくしの責任です。お叱りは聖女であるわたくしがお受けしますわ」
そしてルル様が私のために謝罪した。すかさず私もルル様の横で同じく四十五度になるよう腰を折った。
「申し訳ございません」
私がルル様のためだと思ってやることが、逆にいつもルル様の足を引っ張ってしまう。
全世界で敬わられている聖女ルル様。そんな人がずっと頭を下げたままだ。
それでも、ここで私が口を開けば、もっと酷い仕打ちが待っているかもしれない。だからじっと我慢するしかなかった。
「もうよい」
「そうですよ、聖女様のせいではありませんから、頭を上げてください」
その言葉でルル様と私は背筋をまっすぐにして姿勢を正した。それでも私の視線はずっと自分のつま先にむかっていた。
このまま悲しそうなふりをして退出してしまおう。そう思っていたのに……。
「それではローザ嬢だけでもお付き合いくださらぬか。腹がいっぱいだと言うなら話し相手だけでも構わない」
「仕方がないから、僕、二人っきりじゃなくても我慢するよ」
ニクソンとモールスだ。
このふたりは空気が読めないのか。行くわけがないだろうが。
「ローザもお手伝いしてもらっているので、わたくしと同じですわ。体調を崩して明日の夜会に出られなかったら可哀そうだと思いませんか? わたくし、とても楽しみにしていますもの」
「夜会か――――そうであったな。事前に連絡した通り二人のドレスは私が用意しておいた。部屋に届けさせたので確認しておいてくれ」
「お疲れのところ無理強いするのもよくありませんね。聖女様、こちらこそ明日を楽しみにしていますよ」
「ふむ」
「ちっ」
なんてことだ。
ルル様の前で阿呆が舌打ちしやがった。早く帰りやがれ。