03 一方的な約束
「申し訳ございませんが、わたくしたちは伯爵様のところでお食事は済ませてしまいましたの。恐れ入りますが皆様だけでお願いします」
「なんだと? 私がここでどれだけ待ったと思う」
「そうですよ。約束を破るつもりですか。貴女も嬉しそうにしていたではありませんか」
「わたくし、今日のように治療のあとには急な予定が入ることがありますので、お返事をした覚えがないのですが……」
そうなのだ。
こいつらはいつも、自分の用件だけをルル様に押し付けて返事も聞かない。それを約束と言うのだから頭がどうかしている。
いや、こいつらがどうかしていることはこの国に来てから、ずっとこうやって押しかけてこられて迷惑しているから十分わかっている。
それでも優しいルル様はいつも丁寧に対応していた。
「約束ではなかったかもしれないが、それでも私の気持ちは伝えておいたはずです」
「それは重ね重ね申し訳ございません」
ルル様はそう言って頭を下げた。
「そうやっていつも私の誘いを断ってばかりいるが、本当にお主はちゃんと食べているのか。碌なものを食べていないから、ちっとも成長しないのではないのか」
イライラしているのか、エラン王太子は不機嫌な態度も隠さず、ルル様に対して嫌味を言う。
「そうですね。お口にしたことのないような最高級の食材を私たちならご用意できますのに」
「そんなに小さくては威厳も風格ない。そんななりでは軽んじる者がいても仕方がないと思いますぞ」
この部屋にいる連中はいつも上からものを言う。
王太子は自分に逆らう者はいないと思ってるようで、思い通りにならないルル様に対して辛辣な言動が多い。
リコードは自分の容姿に自信があるのか、ルル様も自分に気があると思っている節があるし、どれほど頭がいいのか知らないが、私なんかはいつも馬鹿にされている。
ニクソンは肉体の力が正義だと思っている。聖女の力はまったく次元が違うのに、何を基準にしているのか自分より劣っていると思っているようだ。
「あの、ルル様は癒しの力をお使いになったため、とてもお疲れなんです。皆様には申し訳ございませんが、すぐにでもお部屋でお休みいただく必要がございます。今日のところはご容赦ください」
嘘も方便。
癒しの力は神の力だ。
ただ媒介している私たちには負担がない。ルル様のような力を使っても代償はまったくないそうだ。
ゼ・ムルブ聖国の大司教様から教えてもらったことなので間違いない。
それにいままで私は、ルル様が疲れているところなんて一度も見たことがなかった。