15 天罰?
「お会いしてくださるとは思いませんでした」
そう言ったのはアマンダの弟、ジャックだ。
今日はアマンダの代わりにジャックが教会にやって来た。あれだけ貶されていたのに、実は仲が良かったのだろうか。
「そっちから訪ねてきたくせに、ジャック様がそんなことを言うんですか」
「いえ、姉が何度ここへ来ても追い返されていたようなので、私でも無理だと思っていましたから」
ショールのお礼分くらいは、話を聞いてあげてもいいと思っただけだ。
「それで、ご用件は」
「えーっとですね。ローザさんは姉のことをご存知ですか」
ご存知も何も、ジャックは公爵家でアマンダと私が会っているの見ていたではないか。
「アマンダ様のことですか? いつも押しかけてきて教会では迷惑しておりますが」
「それは申し訳ございません。そうではなくて、身体のことです」
「身体? 何のことでしょう」
ジャックの言っている意味がわからない。何かの比喩でもなさそうだし。
「ローザさんは本当に何も知らないようですね。実は姉のアマンダが、誰にも言えないような病気になりまして、それを治してくださる方を探しているんです」
「ルル様は無理ですよ。二度と目の前に現れないと神様に誓っていますから」
間髪いれずに私は拒否する。
「他の聖女様でもいいのですが……」
「聖女の癒しって何でもできるわけではないんですよ。誰にも言えないような病気なんて治せるわけないじゃないですか」
「そうですよね……」
ジャックは困ったなぁとため息をついた。
「悩んでいらっしゃるところ悪いですけど、アマンダ様はとてもお元気そうでしたけどね」
教会の門で大騒ぎしている姿はとても病人とは思えない。あの人はいつでもパワフルだ。
そのエネルギーをもっと役立つことに使えばいいのにと私は思っている。
「病気とは言っていますが、命に別状があるわけでもないんです」
「だったらいいじゃないですか。なんでもかんでも聖女を頼られたら困るんですけど」
「それはわかっていますが、姉の身体が治らないことには、結婚もままならず、ずっと家にいられたら私が心労で倒れてしまいます。それをローザさんが癒してくださると言うのなら目をつぶりますけど」
なぜ私を巻き込もうとする?
「さっきから意味がわかりません。こんなことしてても時間の無駄ですね」
私だって暇ではないのだ。
席を立とうとした私より先に、ジャックがドアの前を身体でふさいだ。
信用して二人きりで話をしてあげたのに、まさかそんな暴挙にでるとは。
「こんなことしてすみません。ローザさんに包み隠さずお話しします。それで話を聞いたあとに、もし治療方法があったら教えてもらえないでしょうか」
「えー、そんな面倒くさい秘密、私は聞きたくありませんよ。そこをどいてください」
「そう言われると逆に聞いてもらいたくなります。姉たちはですね、天罰がくだったんですよ」
私は耳を塞ぐ仕草をして拒否したのに、それを無視して、ジャックはアマンダに起こった出来事を話はじめた。