14 自業自得
「今日もまた、あの国の方たちがお見えになっていますね」
「ルル様にあんなひどい仕打ちをしておきながら、よくこのゼ・ムルブ聖国に来ることができますこと」
「かの国は恥というものを知らないのだ」
教会で司祭や助祭の方たちが噂しているのはダンダリア王国のことだ。
ルル様に手を上げたエラン王太子の件で、ゼ・ムルブ聖国はダンダリア王国へ正式に抗議し、国としてのすべての派遣や交流を停止した。
そのため、ダンダリア王国の代表者はもちろんのこと、ルル様を傷つけた例の五人の親族や従者がかわるがわるこの国に訪れては謝罪をしている。
ルル様への面会を希望しているようだけど、どんなにお金を積まれても国のトップである教皇がそれを受け入れない。
今回の件、大国のダンダリア王国に頭を下げさせることで、ゼ・ムルブ聖国は、周辺国に聖女の存在意義を見せつける政治的意図もあるようだ。だから、そう簡単に折れたりはしないだろう。
ダンダリア王国の中にはルル様だけではなく他の聖女様に癒された者もたくさんいる。
この事態を敬虔な信者となった人たちが放っておくはずもなく、王家に抗議することは火を見るよりも明らかだった。
エラン王子は王太子の称号を剥奪されるかもしれない。現在は身分保留のまま王宮の奥でひっそりと暮らしているらしい。
あの件に係わった他の者たちも自分たちの屋敷に籠って一歩も外に出ることができなくなったそうだ。
その中で唯一アマンダだけが行動していた。
彼女はルル様と私が暮らしている聖都の大聖堂に何度も押しかけてくる。
『私たちお友達でしょ。だからお許しになって』門の外で大騒ぎをしてはルル様に会おうとしているが、ルル様は二度と目の前に現れないと神に誓ってしまわれたので、当たり前だがいつも門前払いを食らっていた。
彼らが屋敷に籠ってしまったことと、アマンダがゼ・ムルブ聖国に足を運んでまでルル様に許しを請うとしている理由は、罪滅ぼしや周りから責められた精神的苦痛からの逃避によるものだけではない。
彼らがルル様に必死に懺悔する理由。それはとても恐ろしいものだった。