表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
うちの聖女様は怒らせたらマジでヤバイ  作者: うる浬 るに
本編「ダンダリア王国編」
13/116

13 最悪の夜

 まさかの、その行動に周りで見ていた者たちが目を見開き、

『本命はモールスだったのか?』

『エラン王太子殿下たちをふったばかりだぞ?』

『聖女が残るなら誰でもいいんだろ』そんな言葉が飛び交う。


「ローザも同じですから。あなたも諦めて、付け回すのはおやめくださいね」


 みんなが見守るなか、ルル様の口から出た言葉は意外なものだった。


「なんだよ、ちび。いたたたたたた」

「あまり目に余ることをなさいますと、どうなるかわかりませんよ」


 私、ストーカーされていたの?


 確かに行く先々で偶然出会うことがあった。あとで教えてもらったけど、宿の向かい側の建物を借りて覗きもしていたらしい。

 怖っ。



「あの、アマンダ様……」


 さきほどニクソンとモールスが痛がる光景を見ていた子息令嬢たちが、恐怖からか口を閉ざしたので、ホールは静かになっていた。


 ルル様が真ん前で騒動を見ていたアマンダに声をかける。それは小さな声だったけど、静寂のなか、私のところまで聞こえてきた。


「何よ」


 今度はアマンダの手を取ろうとしたルル様だったが、すぐに振り払われる。それどころかアマンダに突き飛ばされた。


「ルル様!」


 もういいだろう。もう十分だ。


 これ以上ルル様が傷つけられるのを見たくなくて、私はルル様に近づき手を貸して立ち上がらせた。


 私の気持ちが伝わったのか、ルル様はもう拒むことはしなかった。


「わたくしたちお友達ではないのですか?」


「何バカなこと言っているのよ。エラン様たちに無礼を働いた貴女が友達なわけないでしょう。貴女がゼ・ムルブに帰るんだったら、もうお肌の手入れもできなくなるし、この際言っておくけど、小汚い貴女なんか、癒しの力がなければ誰が相手をするもんですか」


「姉上、なんてこと言うんだよ」

「いいのですジャック様。わたくしの独りよがりだったのですわね」


 ルル様は寂しそうに下を向いた。



「ルル様もう帰りましょう」


 私は、くしゃくしゃになってしまったルル様のスカートを直す。

 腰のリボンも潰れてしまったので、うしろで形を整えていて、その時ルル様に近づいてきたエラン王太子が、手を振りあげたことに気づくことができなかった。


 パアーン


 静まり返ったホールに響いたのは、ルル様が頬を叩かれた音だ。


「貴様ぁ、すぐに私の前から立ち去れ、二度とその顔を見せるな。いままでの仕打ちと、パーティーを台無しにした今日のことは、正式にゼ・ムルブ聖国に抗議するからな。覚えておけよ」


 暴力をふるっておいて何て言い草。どう考えたってそっちが加害者でルル様は被害者だ。


「承知いたしました。以後わたくしは二度と皆様の目の前には現れません。神に誓ってお約束いたします。皆様に神のご加護がありますように。ローザ行きますわよ」


「ルル様、このような者たちのために祈らなくても……」

「いいのよ、さあ早く」


 そう言ってルル様は叩かれて赤くなった頬を気にすることもなく、私の腕を掴むと足早で王宮から飛び出し、用意していた馬車へと乗り込んだ。


 そしてそのまま、ゼ・ムルブ聖国の国境にむけて、最短の道のりをどこへも寄らずに全力で進ませたのである。


「ごめんなさいね、ローザ。本当だったら各地の教会に寄るつもりだったのに。でも最悪な事態になってしまったから」


「ダンダリア王国の貴族はひどすぎます。自分の思い通りにならないからって、子供のように怒りをぶつけてくるなんて、二度とこの国には足を踏み入れる必要はございません。私も絶対に来ませんから」


「そうね。その方がいいと思うわ」

「それよりルル様、お顔は大丈夫ですか」

「ええ、ほら」


 私の方に向けたルル様の左頬はもう元通りになっていた。いつの間にかご自分で治されていたようだ。


 さすがは癒しの聖女様。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ