はじまりとお願い事
神隠し
:喪中に神棚を白い紙や布で覆う慣わし。
:人間がある日忽然と消え失せる現象。
神域である山や森で人が行方不明になったり、
街や里からなんの前触れも無く、
失踪することを神の仕業としてとらえた概念。
古来もちいられていたが、
現代でも唐突な失踪のことを名称で呼ぶことがあり
別名、天狗隠しとも言う。
登場人物
コグレフウカ
木暮楓夏:小3(女)
サワムラリョウタ
沢村諒太:小3(男)
チカサカケイ
近坂啓:小3(男)
タカジョウミホ
髙城未歩:小3(女)
サカクラマサル
酒倉優:小3(男)
楓夏:「ねえ?影神様って知ってる?」
学校の帰り道いつもの楓夏の「~知ってる?」が始まった。
優:「なにそれ?」
未歩:「知らないわ」
未歩が退屈そうに背伸びをする。
夕暮れに照らされて鴉が鳴き声をあげる。
楓夏:「あのね、?。一緒に遊んでくれる神様なんだよ。」
啓:「一緒に遊ぶって、どうやって?」
楓夏:「影踏みだよ。」
楓夏が啓と優の影を踏む。
諒太「違うよ。楓夏、どうやって神様と遊ぶんだ?」
横路の平地に皆を手招き、楓夏が皆の手を取り、繋がせる。
楓夏:「5人でね。手を繋いで丸くなるの。
そしたら、皆で目を瞑るの。それで、皆で一緒に
『影神様、影神様一緒に遊びましょう。』って言うと
太鼓の音がするんだって。目を開けるとね?
影がひとつ増えてるんだって。それが『影神様』。
そしたら影踏みの始まりなんだって。」
未歩:「うそ~」
未歩が楓夏に肩を預ける。
優:「なんだかこわいよ」
啓:「こわくねえよー?」
啓が優に肩組をする。
楓夏:「それでね?『影神様』から逃げられたらね?
お願い事がひとつ叶うんだって。」
諒太:「願い事ね、」
諒太は空を見上げる。
優:「えー、何にしようかな。」
優が堕ちてた木の棒で砂地に願い事を書き出す。
未歩:「面白そうね」
未歩も同じく書き出す。
啓:「なんでもいいのか?」
楓夏は後で手を組み少し申し訳なさそうに、
楓夏:「なんでもいいんだけど、
皆同じ願い事じゃないと駄目なんだって」
啓:「なんだそりゃ、皆で同じか、」
啓が優の願い事のいっぱいのお菓子にばってんをする。
諒太:「楓夏は決まってんだろ?」
楓夏は驚く。
優:「なになに?」
優は書くのをやめて楓夏の顔を覗き込む。
未歩:「私もそれでいいわ」
近い優を未歩が遠ざける。
楓夏:「未歩?。」
未歩:「貸しよ?」
未歩が楓夏にウィンクする。
諒太:「俺も楓夏のでい。」
夕暮れに黄昏ながら諒太は言う。
啓:「楓夏が言い出しっぺだしな。優もそれでいだろ?」
優:「次は僕のお願い事ね?」
楓夏:「皆、ありがとう、、」
楓夏は笑顔で嬉しそうにする。
諒太:「それよりルールは?本当に影踏みするだけ?」
楓夏は慌てたように言う
楓夏:「そうだった、、あのね、3つだけあるの。」
楓夏は3本指を立てる。
啓:「なんだ?」
優:「なあに?」
楓夏:「ひとつ。『影神様』と影踏みをする前に皆の
ポケットの中に金平糖をねひとつ入れとくの。」
楓夏がポケットに手を入れる。
諒太:「金平糖?」
優:「金平糖好き。」
未歩が楓夏のポケットに手を入れる。
未歩:「なんで金平糖なんか入れるのよ?」
楓夏:「『影神様』は金平糖が好きみたい。
影踏みしてもらったお礼に影踏みが終わると
ポケットの金平糖は無くなるんだって」
啓:「金平糖が無くなったらどうなるんだ?」
楓夏:「『影神様』が怒る!」
頭の上に手を乗せ指で角を作って鬼の真似をする。
優:「ひぃい」
優が怖がる。
啓:「落としてもいいようにいっぱい入れときゃいじゃねーか」
諒太が笑う。
諒太:「そうだね。啓、さすが」
未歩:「ふたつめは?」
未歩がVサインをする。
楓夏:「陰には入っちゃ駄目。」
楓夏が手でばってん印をつくる。
諒太:「『影神様』だからか。」
楓夏:「当たり!。陰は『影神様』が移動できるから
入ると捕まっちゃうんだよ。」
啓:「それじゃあ、俺達不利じゃないか?」
啓は首を傾げる。
未歩:「日が早いうちにやればいいのよっ。
そうね、遅くても7時ぐらいかしらね。」
啓の頭を軽くつつく。
諒太:「できるだけ広くて回りになにもない所でやれば
『影神様』の勝ち目は薄いね。
ここなんかちょうどいいんじゃないかっ?」
優:「諒太は頭がいいね。」
諒太の頭を優が撫でる。
楓夏:「そして最後。もしも捕まっちゃったらね、、
自分から影が消えちゃうんだって。」
未歩:「影が消えちゃう?」
啓:「これ?」
自分の影を指す。
優:「影が消えちゃったらどうなるの?」
慌てたように訪ねる。
楓夏:「動けないんだって」
場が静まりかえる。
啓が唾をのむ。
未歩:「なにビビってんのよっ!。男がだらしない。」
啓:「ビビってねえし、」
楓夏が場を和ますように、明るく振る舞う。
楓夏:「もし、途中で誰かが捕まっちゃったら、
帰って貰えばいいんだって。」
諒太:「どうやって帰ってもらうの?」
バラバラになった皆を手で繋ぎ直し、
楓夏:「始めた5人で手を繋いで丸くなって、
『影神様、影神様また遊びましょう』って言うと
『影神様』は帰ってくれるみたい。」
諒太:「楓夏、この話し誰から聞いたの?」
楓夏:「裏に住んでるお爺ちゃん。」
啓 :「あの爺さんか」
啓が腕を組む。
優:「あのお爺ちゃんお菓子くれる。」
優は嬉しいそうにする。
未歩:「んで、どうするのっ?」
皆が目を合わせる。
啓:「もちろん。」
手を広げて前に出す。
諒太:「賛成」
啓の手の上に載せる。
未歩が楓夏の手を握ってその上に載せる。
優:「僕だって!」
皆が笑う。
未歩:「じゃあ、明日!」
諒太:「金平糖忘れないようにっ」
啓:「遅刻するなよっ」
優:「金平糖、金平糖、金平糖。」
楓夏:「皆ありがとう~明日ねっ。」