表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
1/3

1.馴れ初め

確か、小学2年生の頃だったと思う。

新しい友達が出来た。


その友達は、絵が抜群に上手かった。

ときどき気が向いたとき、

プリントの余白とか裏とかに、ゲームや漫画のキャラの絵をサッサッと描いていたのだが、

いつもその絵は、元の絵にそっくりだった。

厚紙を切手サイズの長方形に切り、

そこに、その友達がドラゴンなどの色々なモンスターの絵を描いたものは、

当時、クラスで大いに持て(はや)されたし、

絵のコンクールがあれば、

その子の描いた絵は、大抵一番の賞を取っていた。

私も、

その友達が紙に描いてくれたモンスターの絵は、きっちりとクリアファイルに挟んで、

自分の宝物用の抽斗(ひきだし)の中に入れて、大切に保管していたし、

しばしば、何かの拍子で思い出したときにその絵を取り出し、

ぼーっと眺めて、

また、抽斗の中に戻していた。


ただ、

その友達は、学校で人気があったわけではなかった。

どちらかと言えば、多くの人から疎まれていた。



その友達と最初に話したのは、

確か、

学校が終わったあと、別の友達と遊んでいるときだったように思う。

何かの拍子で一緒になって、

互いに自分の名前を紹介し合って(2年生の頃まで、ずっと別クラスだった)、

それで、その子を含めたみんなで遊んだ。


夕方になり、

門限の早い子や家が遠い人が、だんだんと帰り始めた。


「バイバーイ」

「バイバーイ、またあしたねー」

「うん、またあしたー」


そんな感じで別れていく。

その子も家が遠かったので、

割と早い段階で、マウンテンバイクにまたがって帰っていった。


そのとき、

私と同じく、まだ残っていた友達のひとりが、

私に顔を寄せ、耳打ちした。


「あの人とは仲良くしない方がいいよ。危ないから」


正直言って、意味が分からなかった。

遊んでいるときは普通だったし、

話した感じも、

ちょっと強引だなぁ・・・とは思ったけど、やっぱり普通だった。

それに、

”危ない”という意味が、よく分からなかった。


危ない・・・というのは、

当時の私にとっては、

例えば、

包丁とか、車の往来が激しい道路とか、カビの生えたパンとか、

そういったものに対して使う言葉だと思っていた。

その子の手が刃物でできていて、それで握手をしたらケガをしてしまう・・・みたいな、

そんな言い方のように思えて、

私には、いまいちピンと来なかった。



キッカケはよく覚えていない。

その子と私は仲良くなった。

友達になった。

3年生か4年生のとき、同じクラスになったので、

もしかしたら、それがキッカケだったのかもしれない。

何しろ、

いつ頃から仲良くなったのか、私の記憶に無いので、

さっぱり分からない。

とにかく、

ほぼ毎日のように、その友達と一緒に遊ぶようになった。

学校から帰ってきたら、

私の家に、

その友達とは別の、もうひとりの友達も呼んで、

それで、

3人でゲームをしたり、双六を作ったり、ボール遊びをしたりして、

外が暗くなるまで遊んだ。

3人とも、いつもたくさん笑っていたし、

いつも楽しかった。


その友達は、

当時の同学年の子たちと比べて、考え方がしっかりとしていた。

私は、

その友達を通して、色々なことを学んだ。

頭の回転も、私よりずっと速かった。


あるとき、

その友達と私のふたりで、カードゲームを作ることになった。

イラスト担当は、

勿論、その友達で、

私は、ルール担当だった。

でも、

私は、カードゲームのルールをなかなか思い付けなかった。


しばらくして、その友達が私に訊いた。


「イラストはこんな感じで、どう?」


私は、

焦りの気持ちを隠しつつ、普通の声で返した。


「いいんじゃない」


「ルール、どんな感じになった?」


「うーん、まだ思い付けない」


「カードの隅っこに、何か数字を入れた方が良いと思うんだけど・・・」


「数字?」


「HPとか攻撃力とか」


「あぁ、そうか。じゃあ、入れよう」


「このカードの名前はどうする?」


「名前? うーん、何が良いかなぁ」


「デスドラゴンとか、どう?」


「いいんじゃない? それにしよう」


「うん、分かった。じゃあ、そうしとく。

 ルール思い付いたら教えて」


万事がそんな感じで、

結局、ルール自体もその友達がアイディアをバンバン出して、

私は、


「いいんじゃない?」


と、それに賛成するばかりだった。

自分は何のためにいるんだろう・・・と、ちょっと自己嫌悪になった。


そして、

その友達は、相変わらず多くの人に避けられていた。

他の友達と遊んでいるときに、

私が、その友達を呼ぼうとすると、

みんながイヤな顔をした。


「オレ、アイツが来るんだったら帰るよ」


「オレも帰る」


「オレも」


「あんなヤツ、呼ぶなよ。楽しくなくなる」


「そうだそうだ。何で呼ぶんだよ」


なので、私は呼ばなかった。

その友達に対し、申し訳ない気持ちを抱いたまま、

みんなと遊んだ。

そんなときは、

遊びの楽しさは、いつもの半分も無かった。

鼻風邪を引いたときに食べるお菓子の美味しさのような、そんな感じだった。

「Summer Echo」は、

先の展開に関して色々と悩んでいることがあるので、もう少し遅れます。

この「コーヒーゼリー」については、

あらすじにも書きましたが短いので、明日(12/26)か明後日には完結してると思います。


2019/12/26

完結しました。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ