ゲーム本編
その日、ルーズカースは窓の外を見ていた。
「いい天気だ、久しぶりに我もレンヤと外で散歩に行きたいが……誘ってみようか」
本日は仕事が休みの日であり、しかも空もよく晴れている。
どこまでも空は青く澄んでいて、風も温かく遊びに行くには絶好の日だった。
しかも今はレンヤもこの魔王の城にいる。
数日前は元勇者として人間の方の城に仕事に行っていたが、今は戻ってきている。
だが、昨日戻ってきたばかりなのに誘うのはどうだろう?
そうルーズカースが悩んでいると、
「いいぞ」
「! レ、レンヤ、いつの間に」
気が付くとレンヤがルーズカースの背後に立っていた。
まった喰気づいていなかったルーズカースが焦っていると、レンヤがいtずらっぽく笑って、
「驚かせようと思って近づいたらそんな独り言が聞こえただけだ。……遊びに行こう。その間は偽名のルカで、ルーズカースは呼ぶ」
「うん」
こうしてその日はレンヤに連れられて、ルーズカースはとある村に行く事になったのだった。
転移の魔法をレンヤが使って、ルーズカースとある村の近くにやってきた。
普通っぽい村人の服に、黒いローブを羽織っている。
アクセントに青色のリボンを付けたそれは、レンヤとルーズカース、お揃いの物だった。
暖かい風と日差し、明るい緑が広がる森の道を抜けると、遠くに煙が見えてくる。
人のいる気配。
村が近いのだろう。
そこをさらに進むとピンク色の花をたくさん咲かせた木から花弁が風に乗って運ばれてくる。
そのうちの一枚がルーズカースの頭にくっついて、レンヤがそれを外す。
「花びらにまで好かれているのか。焼けますね」
冗談めいた口調でレンヤがルーズカースに言う。
それにルーズカースは、
「それはこちらのセリフだ。ほら、レンヤにだって。……我にだって嫉妬の感情はある。レンヤが好きなのだし」
そう言ってレンヤの頭に付いた花びらをルーズカースはとって笑いあう。
久しぶりの休日は、楽しいものになりそうだ。
そう思っているとそこでレンヤが顔をしかめた。
「……」
「? どうした?」
「いえ、何か妙なものを感じた気がしたので」
「? どんな?」
「懐かしいような……けれどあまり触りたくないような……」
遠くを見るようにレンヤが呟くのを見て、ルーズカースはある予感を覚えながらレンヤの手を握る。
「ルーズカース?」
「大丈夫だ、行こう。それに我も今日は、特別製の防御力がすごく強い魔道具等も持ってきたからな」
「……大丈夫か?」
「なぜそこで心配をする」
「いえ、ルーズカースは結構抜けているから」
「し、失敬な! 我だってこう見えても歴代最強の魔王で……」
「でも今はレベルゼロでしょう?」
「……」
「ですから、大人しく俺に守られていてくださいね」
そうレンヤが言うのを聞きながらルーズカースは、弱いのは嫌だけれどレンヤに守られるのは嬉しいし、どうしようかと思う。
そうこうしていると、木々が開けて行って、村が見えたのだった。
村の入り口にやってきたレンヤとルーズカース。
入り口付近よりその村を見ていたルーズカースが、
「穏やかな人族の村のようだな」
「そうですね。なんでもここで売られている、“かららの果実”という果実がとても美味しいそうです。また花や特別な薬草がよく採れる村なのだそうです」
「そうなのか?」
「今日は花などを見て楽しもうと思ってここに来たのです。……“かららの果実”の方が興味がありますか」
「そ、それはその……うん」
「では、少し待っていてください。早速購入して……」
そこまでしかレンヤはいえ無かった。
何故なら自分たちの方に走ってきた男性が一人いたからだ。
「お~い、こちらです~」
彼はレンヤ達の前に来て、
「ようやく冒険者の方が来ていただけたのですね、私は村長のミライです」
「え? いえ、俺達は観光で」
「……そうだったのですか」
そこでがっかりしたようにその男(村長)はうつむく。
それにレンヤが困ったように、
「ルーズ……ルカ、一緒に遊べる時間が減ってしまうが、いいか?」
「もちろんだとも。レンヤのそういった優しい所は我も好きだぞ」
「……ありがとう」
そう返して、レンヤが男に、
「どうされたのですか?」
「え? 依頼を受けていただけるのですか?」
「はい。こう見えても都市ではそこそこ名のしれた冒険者でしたから。お力になれれば」
「ありがとうございます! 実は……この村の“氷の倉庫”の奥に、ドラゴンが住み着いてしまったのです」
「“氷の倉庫”……ですか?」
「あ、失礼いたしました。実はこの村の近くのダンジョンには、その昔魔族の何か施設があったらしく、一年中雪に閉ざされているのです。そのためそこを倉庫として使っていたのですが、そこにドラゴンが住み着いてしまったのです」
「……なるほど。ですがドラゴン、ですか? 随分と強力な魔物ですが」
「はい。我々も不思議に思っていたのですがそれよりも日々の生活の方が重要でして調べられないのです。しかも、そのドラゴンが住み着いてダンジョンにも魔物が増えて……まだそのドラゴンが住み着いている奥の部屋の転送の魔法陣が使われていないのは幸いですが、今後どうなる事やら」
そこでルーズカースが反応した。
「転移の魔法陣がこの場所に?」
「いえ、その昔魔族が使っていたものを我々も使っているのです。その昔この村に住み着いた魔族が人間でも使えるようにと改造してくれたとかなんとか」
「そう、なのですか」
「古くて魔族が捨てて行ったものだから問題ないでしょう、といった話だそうです」
「……」
ルーズカースは沈黙した。
まさか自分たちの昔作って遺棄したものが、そういった形で再利用しているとは思わなかったのだ。
しかも変わり者の魔族という、自分たち側の魔族が勝手にやらかしていたらしい。
有効利用してもらえているのはいいのだが、突然そういったものに遭遇すると変な感じがするとルーズカースは思った。
しかも転移の魔法陣関係は魔族にとっては結構重要な魔法ではあるのだが……それに整備もしないと危険な魔法であるしどうしようとルーズカースは思って、自分の休日に仕事が一つ増えたことに頭が痛くなった。
そこでレンヤが、
「それで……ドラゴンを倒すのにルカを連れて行くのは危険だ。だからこの村で待っていて欲しい」
「……分かった」
そういった話をしているとそこで、話しかけてきた男(村長)が、
「ではルカさんでしたか。私の家でお待ちください」
「いいのか?」
「もちろんですとも。恋人の方にお願いするわけですし」
「こ、恋人……そんなに見てわかるものなのか?」
「仲がよさそうでしたから」
そう会話して、ルーズカースは黙る。
そこで村長が、
「では、もし準備が出来ましたら私に話しかけてください」
との事でレンヤとルーズカースは必要なものを一通り見て回ることにしたのだった。
何故か村を見て回ると、馬などの動物がお小遣いをくれたり、薬草をくれたり、食堂地下にいる猫がにゃ~と鳴いたらレンヤが何か技を思いついたり、食堂前の出店では薬草がもらえる“かららの実”の販売店があったのはいいとして。
レンヤはルーズカースと別れて村に接しているクロックの森にやってきた。
すぐそばに雪で覆われた場所が見えたため、あそこが“氷の倉庫”なのだろうと見当をつけて進む。
途中犬の鳴き声で新たな技を思いついたりしながら進む。
だがその入り口は扉で閉ざされていた。
しかもその扉には、『倉庫の鍵は近くの家で保管しています』と書かれている。
一応は二件家が近くにあるのを見たがどちらかと思って、とりあえずレンヤは赤い屋根の方の家に向かう。
ノックをしてはいると、家の中では男が一人鍋の前で何かを作っていた。と、
「まいったな、“コレッタ草”が足りない。トマトケチャップにはあれが欠かせないのに……でも今は手が離せない……おや?」
そこで彼はようやくレンヤに気づいたらしい。と、その人物が、
「君、もしよけれ場近くにあるもう一軒の家から、“コレッタ草”をもらってきてくれないか? 今手が離せなくて……」
「それは構いませんが……」
「本当か! 助かるよ」
そこまでこの家の人物は言って、ようやくレンヤが村の人でないと気づいたらしかった。
「そういえば君はどうしてここに?」
「実は村長に“氷の倉庫”のドラゴン退治を依頼されてきたのです」
「あ~、ようやく冒険者が仕事を受けてくれて……でもそれならなおさら都合が良いかもしれないな」
「? どういう事ですか?」
「“氷の倉庫”の鍵はこの家と、もう一つの蒼い屋根の家のアイツとで一つづつ管理しているんだ」
「そうなのですか?」
「ああ。まあ建前は、もしも族に鍵を奪われても洞窟から魔物が溢れないように、という話だが……その、な、こう、同じものを二人で分けて持っているのってこう……こ、恋人同士見たいな……いや、なんでもない」
焦ったようにこの家の家主が言う。
どうやらこの家の彼は、青い家の人物が好きであるらしい。
だがそれは恥ずかしい話のようなのでレンヤはそれ以上何も言わずにいると、
「でも村長から鍵がいる話は聞いていなかったのか?」
「はい」
「あの人結構抜けているからな。それじゃあよろしく頼むよ」
そう言われてレンヤは、青い家に向かう。
ちょっとした丘のような場所に立つその家に向かう。
見晴らしのいい場所だとレンヤが思いながらその家に入り、その人物に恋愛方面以外の事情を説明すると、
「分かった、これが“氷の倉庫”の鍵だ」
「ありがとうございます。……氷のように冷たいですね」
「ああ、おかげで夏場はこれを持っていると涼しくていいぞ」
「なるほど」
といった会話をしながら鍵を借りたレンヤ。
そして“コレッタ草”も渡されたレンヤだが、
「……変わった感じのする草ですね」
「あ~、確かにこの地方でしか生えていないらしからな。なんでもこの村に以前住んでいた“変わり者の魔族”がこの村に来たら突然生えてきたとか」
「……」
「“かららの実”もそうだぞ? “氷の倉庫”の中で、一年のうちに一回しか実がならないものが、この村で育てると一年中実をつけるようになってな。もともとは魔族が品種改良した植物らしい。今は村の名物で、ジャムなどの加工品を最近は都市にも出荷しているし、今は魔族とも和平を結んでいるし……今は魔族様々だよ」
そう話すのを聞きながらレンヤは、これをルーズカースが聞いたら微妙な顔になりそうだ、後で話してみよう、困った顔も可愛いしと思った。
そしてその“コレッタ草”をもっていき、もう一つの鍵をもらう。
そのカギは暖炉近くの箱に入っていたが、
「夏場はいいが、冬場は寒いから暖炉のそばにある箱の中に入れているんだ。一応は“氷の倉庫”といった形でいるから氷系の魔法で、この鍵も作っているから冷たいんだ」
「なるほど」
「それで“氷の倉庫”の中は寒いが、そんな恰好で大丈夫か?」
「お気遣いありがとうございます。魔法で防寒関係は何とかなりますから」
「そうなのか? ……一応“氷の倉庫”の中には避難所のような小屋があるから、もしもの時はそこで休むといい。村に戻るための転送陣や、そこには食べ物もあるし、少しだが温かい温泉も沸いている。体調が悪くなったらすぐにそこに駆け込むといい。魔物よけの結界も貼ってあるから安全な方だと思う」
「では、機会がありましたら使わせていただきます」
そう返してレンヤは“氷の倉庫”に向かったのだった。
内部は雪で覆われた広い場所だった。
天井はどことなく空のような青い色をして狭さを感じない。
しかも雪山のような場所もある。
魔族が遺棄したとはいえ、なかなか大きな施設のようだった。
「魔族は人間よりも文明が進んでいる、か。だがどうしてここを遺棄することに……ッ」
そこで頭にレンヤは痛みを感じる。
何か思い出したくないことを思い出しかけるようなそんな感覚だ。
この村周辺で感じた感覚といい……。
「いや、今はドラゴン退治が先だ。……確かにこの倉庫内の魔物は強くなっているな。俺の敵ではないが」
そう呟きながら倒して進んでいく。
途中、洞窟内では環境が変化していたりするものの、転移関係の魔法の力を感じて進んでいく。
ドラゴンは一番奥にいるらしいため、普通の人間と同じような銃所でたどっていく。
その道中も魔物を倒して“氷の倉庫”を安全な状態に更に近づけることもできる。
そう思いながら進んでいくとやがて、広い洞窟の中で赤いドラゴンに遭遇する。
危険な敵ではあるが、強い力を持っているとは言意識が混濁し、やや暴走状態に入っているドラゴンはレンヤの敵ではなかった。
すぐに倒す事が出来たレンヤだったが、
「しまった、力を強くしすぎてしまった、洞窟が崩れる」
つい早く終わらせてルーズカースと遊びたいと思い下限を間違えてしまったレンヤは、慌ててそこから退散する。
完全につぶれてしまったその場所からは逃げきれたレンヤ。
失敗したなと思いながらも、ドラゴンを倒したため、小屋の転送陣を使って村に戻り村長に報告しに行く事にしたのだった。
一方その頃、ルーズカースは村長の娘に、案内された場所で着替えをさせられていた。
この世界は女性が少ないため、やた我ま……気が強く育てられる傾向もある。
そして、ルーズカースの見た目は村長の娘にとって“着せ替え人形”としての欲求をそそるものであったらしい。
すでに十着以上着せ替えをさせられたルーズカースは涙目になりながら、
「も、もう許して」
「え~、こんなきれいな人、なかなか見ないので次いきましょう!」
「レンヤ、早く帰ってきて。というか我は男なのですが」
「やだ~、冗談はほどほどにしてよルカ~」
「……(泣)」
ルカは何も言えなくなった。
そして村長の娘が新しい衣装を探しに行ったところで、空いた窓から一羽の蝶が風に舞うように入り込んでくる。
懐かしいような惹かれるような愛しさがこみ上げるようなものを感じるルーズカース。
「綺麗な蝶だな。こんな蝶……が」
しばらく見ているとルーズカースは意識がぼんやりしてくる。
「………………………………………………」
その蝶が今度は窓の外に行くが、
「………………………………………………スッ」
ルーズカースはその蝶をぼんやりとした目で見て、それを追っていく。
そして誰もいなくなった部屋に村長の娘が戻ってくるも、
「ルカ次はこれ……あれ、いない?」
そこには誰もいなかったのだった。
転送陣で戻りレンヤが村長の家に行くと、村長の娘が、
「大変なんです。ルカさんが目を離したすきにいなくなってしまったのです」
「え? 何をしたのですか?」
「色々私が着替えさせたから……」
「それはないと思います。ルカは俺を待つ人ですから。それに、うっすらと魔法の気配がありますから、それのせいでしょう。この村の人に、ルカを見かけなかったか聞いてきます」
そう返しながらレンヤは嫌な予感が当たったと気づく。
しかもこの村には先ほど村の外でうっすらと感じた以上に、懐かしい“愛憎の魔力”を感じる。
それで引き付けられたのだろうか、ルーズカースは。
そう思いながら微かな魔力と村の人に話を聞いて目撃した情報を集めて追いかけていく。
宿屋の上の階の、カーテンで仕切られた部屋で聞き、次は武器屋、その次は魔道具屋の上にある転送場所、食事処の上の階、宿屋の奥の方の廊下の窓のそば、食事処の地下、そして神官のいる家に向かう。
その神官の家には一人の男がいたがレンヤを見ると、
「冒険者の方ですか? 実は湖にある教会の方に幽霊が住み着いてしまい退治して欲しいのです」
「それは構いませんが、俺の知人を探すのが優先ですがよろしいでしょうか?」
「それは構いませんが……そういえば、さっきこの世の物とは思えないような銀髪美人がそちらの方に行ったのを見ましたが……」
「それは俺の探している人物ですね」
「そ、そうなのですか?」
「ではついでに倒してきましょう」
そう返してレンヤは教えてもらった場所を進む。
確かに教会には幽霊がいて、とても強くて……レンヤには身に覚えのある魔力を持っていた。
それらを倒してから、
「どうせすぐに分かることだ」
一人、苦い思いを呟きながら呟いたのだった。
そしてさらに進んだクロックの森でレンヤは予想通りの存在に遭遇する。
黒い影のような怪物。
繰り返し、ワタサナイという執着に似た悪意の魔力。
懐かしい。
レンヤはそう思いながらそれを倒した。
そして倒した時に手に入れたその指輪は“約束の指輪”というもので、
「理由は覚えていないが、その昔俺……“光の神”が渡した道具だったはず」
それを手にし、どうしようかと思うけれどレンヤは躊躇するも、回収する。
もう大丈夫だと思うが、もしもまた何かを呼び寄せることになれば大変だからだ。
だがこれで、先ほどの敵も倒し、“原因”も何とかしたがためにこれからは普通にあの“氷の倉庫”は使えるようになるだろうとレンヤは思う。
そこで大きく息を吐き、更に道をすすむ。
やがて、森の一角の小さな泉のそばの花畑。
そこに生える一本の木の陰で眠るルーズカースを見つける。
穏やかで幸せそうで、このまま押し倒したい気持ちになるくらいに可愛いが……。
「こんな所で眠っていると風邪をひくぞ」
「ふえ! 我はいったいどうしてこんな所で眠っていた?」
「蝶を追いかけていなくなったらしい。村長の娘さんが心配していたぞ」
「あ……申し訳ない事をしてしまった」
ルーズカースはそう呟く。
なんでもその蝶は、どこか“レンヤ”に似ていて惹かれてしまったらしい。
レンヤは困った。
とりあえずは村に戻ろうといった話になり、戻ることに。
途中教会で幽霊を倒したことを神官に報告して村長の家に。
そこでは、村長さんがドラゴン退治のお礼のパーティを準備していた。
そこで村長の娘さんがルーズカースを見て、
「良かった、無事だったんですね」
「心配をかけて申し訳なかった」
ルーズカースは謝る。
そこで村長の娘は、
「でもその服似合っているから上げますよ」
「え? いや…」
ルーズカースがお断りをしようとするとレンヤが、
「ありがとうございます」
「レ、レンヤ勝手に…」
「いいじゃないか」
そう言ってきかないレンヤに涙目になるルーズカース。
そこで村長の娘が面白そうに笑ってから、
「仲が良くていいですね。では、私もドラゴンを退治してもらえたお礼のパーティのお手伝いをしてきますね」
村長の娘がいなくなる。
ようやく安堵したルーズカースは、レンヤに、
「ふう、だがどうして我はこんな風になったのだろうな。蝶を見つけて追いかけるなど……レンヤとの約束を破ってしまうとは」
「それは多分、俺が昔…」
「?」
「いや、なんでもない。俺はずっとルーズカースが大好きだって事だ」
「よく分からないが、レンヤが我の事を好きなのは嬉しい。我もレンヤが好きだから」
そこで村長さん達がパーティにレンヤ達を呼ぶ声が聞こえる。
そしてレンヤ達は、そちらに向かう。
「“氷の倉庫”のドラゴンをレンヤさんが倒してくれました!」
「「「「おおおおおおおお」」」」」
そんな歓迎の中、
「あ、この果物美味しい」
「それは“かららの果実”ですよ~」
村長の娘が教えてくれる。
むいた状態では淡いオレンジ色をした果肉にしか見えず、かずつの形は分からなかった。
だがとても美味しいのは事実だったのでルーズカースは嬉しい。
そこでレンヤが、
「このサラダも美味しい」
「それはこの村特産の薬草ですよ。美味しいって評判なんです」
そう言ってパーティを開かれたルーズカースとレンヤは楽しむ。
そして村の人達はお酒を飲みだすものの、“昼間から酒を飲まないの!”と村長の娘さんが怒っていたりした。
またお昼時を回ったあたりで全てを終わらせられたのは良かったとレンヤは思いながらルーズカースに、
「少し行ってみたい場所があるが行っても構わないか?」
そう問いかけたのだった。
レンヤが行ってみたい場所は、レンヤが黒い怪物を倒した場所だった。
そこに来て、やはりとレンヤは呟く。
それを聞いていたルーズカースが、
「レンヤ、どうしたのだ?」
その問いかけにレンヤは少し悩むも意を決して、
「この場所で今回の原因となる敵と俺は戦ったのです」
「そうなのか?」
「はい、そして先ほどの歓迎会で色々と話を聞いてきたのです。何でも“氷の倉庫”の雪かきをしていた時に、奇妙な箱を掘り出して壊してしまい“指輪”が零れ落ちて、その時一瞬光ってその場から消えてしまったそうです。けれどそれ以降ドラゴンや幽霊が現れたとか」
それを聞いてルーズカースは気づいた。
「……指輪は“光の神”関係の魔道具か?」
以前にも経験があって、その魔道具が何かルーズカースは気づく。
だからレンヤの手をそっと握りしめるとレンヤは悲し気に微笑んで、
「そうですね。だからルーズカース、魔王である貴方が今回狙われた。その指輪にとりついていた“呪い”のようなものは、過去の俺の……負の感情を帯びた魔力でしたから」
そう絞り出すようにレンヤは告げる。
レンヤの前世に当たる“光の神”は“闇の神”の化身である魔王に……憎しみと愛しさが入り混じった歪んだ感情を抱いていたから。
それが魔力に影響し、残り……この魔道具に残っていたものが何らかの科の理由で“封印”されたが、掘り出され……結果、今回のようなことになってしまったのだ。
魔物にすら影響する“悪意”。
それでもルーズカースが無事なものの連れ攫われたのは、魔力の中にあった魔王への“光の神”の“執着”に他ならない。
そうレンヤが思って黙っているとそこでルーズカースが、
「なるほど。それで我は呼ばれてしまったのか。だが、ふむどちらにしてもレンヤに“呼ばれた”ようなものだから特に問題はないな」
「ですが……」
「我も無事だったしそれにこの村には迷惑をかけてしまったが結局レンヤが一人でドラゴンは倒したわけだし、全ては丸く収まったのだから何も問題はない」
「……分かりました。そう思う事にします」
レンヤが困ったようにルーズカースを見て微笑む。
問題は解決して、ルーズカースは気にしないといってくれている。
だから、それでいい。
ルーズカースがそばにいてくれるならそれでいいとレンヤは思った。
そこでルーズカースが、
「しかしレンヤの想いの強さは恐れ入る。ドラゴンやら幽霊やら…幽霊は別として、強い生物すら…」
「当然ですよ。俺は貴方が好きなのですから」
「……我もレンヤの事が大好きだ。だからこの程度の事は何とも思っていない
。だから気にしなくていい。我も無事だしな。それにこうい見えても我は歴代最強で……」
「ですが今はレベルゼロですよね」
「……」
「……」
「……レンヤの意地悪」
「もとはと言えば俺に貴方がその呪いのアイテムを付けようとした事が原因でしょう?」
そう言ってルーズカースについているペンダントを指さす。
服で隠れて見えないそれだが、未だにルーズカースの首にかかったままのそれ。
けれどルーズカースだって思う所はあるわけで。
「で、でも……」
そういいわけをしようとするとレンヤが笑って、
「……はあ、こんな話をしては日が暮れてしまいます。さあ、また遊びに行きましょう」
「うん」
そう答えるルーズカース。
そうレンヤに手を引かれてルーズカースは歩きだす。
こうしてその日は、二人でこの村や村周辺の散策を楽しんだのだった。
頑張りました