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stage3. 脳筋の本気

3話目です!!!

この作品は大学のサークルで部誌に載せて頂いたものです!どうせなので、いろんな方に読んで頂こうかと思い、投稿させていただきました!!

趣味ゲームを詰め込んだ感じの作品です(笑)

どうぞ、のんびり読んでくだされば幸いです(*´꒳`*)

今回の目的物の「氷炎竜の鱗」はゲーム内でも高レベルのフィールドである「氷炎の城」の最奥、そこに眠るドラゴンから手に入るレアアイテムだ。

このアイテムはなかなかドロップしないくせに、「氷炎の剣」という特殊武器の作成に大量に必要となる厄介な代物となっており、苦戦するプレイヤーも数多い。

かく言う俺も最近集めていて、藤堂の奴にも自慢したが、現在は残り一個というところまで来ている。

そのため実は、今回の件は個人的にも都合が良かったりする。これぞまさに一石二鳥ってな!


「おぉ……フロアのモンスター一掃とか、倉内さんナイス」

『いやいや、乃木くんのサポートあっての賜物だよ!』

「嬉しいこと言ってくれるなぁ」

『いや、本当に!すごく悩んだけど、乃木くんに助けてもらって正解だったぁ』

「あはは、ありがと。この調子で次も行こっか!」

『はーい!』


欲しいアイテムは取りに行けるし、倉内さんとのタッグも思いのほか上手くいって、気づけばなんだか最初より仲良くなれたような気がしてテンションはひたすら高まるばかりだ。


「でもほんとすごいよなぁ……始めたの数日前って言ってたのに、攻撃のタイミングとか敵の攻撃の見極めとか的確で軽くプロレベルで正直羨ましいっていうか……そのセンスが欲しいわ」


フロア移動のための階段に向かいながら感嘆の意味を込めて何気なくつぶやく。

俺でも操作や戦闘などに完全に慣れるまでは少なくとも一週間以上はかかった。その難しさがまた売りで、このゲームの奥深さなんだが……さすがは倉内さん。やはり我らがマドンナは次元が違う。


『我ながら結構頑張ったからねぇ、これでも必死だったんだよ?』

「必死、かぁ……」


不意に「そういえばこれ藤堂のためだったんだっけ」なんて思いだして、せっかく上がっていたテンションが見る見るうちに縮んでいく。

あいつゲームなんてめったにやらないからそもそも渡せもしないかもしれないっていうのに……ほんっとに好きなんだなぁ。


「……その、さ。なんで倉内さんは、そんなにまでして頑張るの?」

『え?んーそうだなぁ……実は私、好きなものとかそういうの全然知らないから…せめてアイテムが手に入ったらそれを誕生日のプレゼントとして渡そうと思っててさ、それで私の思いにちゃんと気づいてほしいっていうかなんて言うか……と、ともかくそのためにはやっぱ、頑張っておかないとでしょ?』


あらかた予想通りの回答に納得するとともにまたしても気持ちが急下降。わかっててもつらいもんはつらい。でもそれは倉内さんを応援しない理由にはならないわけで……


「そう、だね。……ま、まぁ頑張ってね」

『え、あ……うん…』


俺は全力で悲壮感を殺しながら倉内さんへの精いっぱいのエールを送る。が、返ってきた倉内さんの声はどこか落ち込んだ雰囲気。なぜ!?


『…ん?あれ?乃木くん、あの大きな扉って……』

「え?………まじか。もうボス部屋来ちゃった」


 倉内さんの声ではっとすると、通路奥に大きく明らかにやばい雰囲気の扉が見えてきていた。

どうやら、女心というまたしても複雑な壁に直面してる間に目的の城の最奥に着いてしまったようだ。

……無意識にもゲーム出来てた俺すげぇな。


『おお、これが……意外に早かったね』

「そうだね。軽く半分寝てたのに着いてびっくりしてる」

『え!?眠いの!?じゃあ早く終わらせちゃおう!』

「あ、いや、今のは言葉の綾で……って倉内さん!?なんでもう扉開けてんの!?準備がまだ……」

『今の私ならいける』

「その自信はどこから!?」


ごまかして軽率に「寝てた」発言したのが失敗だった。

なぜか倉内さんのやる気に火を点けてしまったようで、まだしっかりと回復もできてないのにさっさと部屋へと入っていってしまった。

ここのボスであるドラゴンは体力が多く、属性ダメージを与えられる武器がない場合は長期戦になるのが定石。つまり、こちらも体力勝負と言えるわけで……いくらここまでにあまりダメージを受けてこなかったにしてもレベルの低めな倉内さんの体力ではたかが知れてるし、加えて職業が狂戦士のため体力は普通の職業より断然低い。

つまりだ。俺たち二人で戦う場合、俺の回復魔法が命綱というわけで、一人でずかずかと挑みに行けるような次元ではない……と、事前に注意しとこうと思っていたのに、これだ。

いくら好きな人とは言え悪態の一つもつきたくなるってなもんだ。


「ったく!!倉内さんのバカ!」

『! ……えへへ』


急いで後に続いて部屋に入れば、待ち構えていたかのように、途端に侵入者に怒りをあらわにする巨大な影が俺たちを包んだ。

体中にクリスタルのように輝く鱗を持つこのドラゴンこそが、俺たちが目指した最後の砦だ。


『うっわぁ……かっこいい』

「……っとりあえず、MP回復したいからタゲ取りつつ距離を保ちながらでお願い。途中でブレス来るから、その時は後ろじゃなく左右に逃げて、そのあと隙ができるからそこを……」

『うん!わかんないからとりあえず行ってくるね!』

「うん、よろしk……って、ちょ!とりあえずで行くなっ!!おい!!!」


焦りのあまり早口に作戦を言ってしまったためか、倉内さんは動き出したドラゴンを見ると説明を聞くことなく、早々に飛び出して行ってしまった。

バカみたいにまっすぐに突っ込む姿を見て、やはり倉内さんは脳筋なのだとようやく理解して、頭を抱える。

俺でもソロの時こいつ相手にどれだけ苦労したことか……そんな相手にいくら俺のサポートがあるとはいえレベル50にも満たない倉内さんが無策で突っ込んで勝てるわけが……



[グオオオォォォ……ッ!]



『おお!効いてる効いてる!』

「…………マジか……」


衝撃とはまさにこのことだ。

倉内さんが攻撃するたびにドラゴンの体力が信じられない勢いで減っていっていく……。


「………まさか…!」


もしやと思い、倉内さんのステータス画面から装備を確認してみると、ようやっと合点がいった。

彼女の武器は「煉獄大包丁」という、氷属性の敵に有利な炎特性を有する武器の一つだ。

加えて、本来はない竜特攻という特性まで付与されているため、もはやこの武器は氷炎の城のドラゴンを倒すためだけにあるような、そんな武器と化している。

いったいどうやってこんなとんでも武器を手にしたのかは甚だ疑問だが……ともかく、倉内さんの自信の源がわかり、一安心。

これでようやっと俺も落ち着いてサポートに集中できるってなもんだ。

…だけど、倉内さん…一言だけ言っておきたい。


そんな大事なことは先に言っててくれ。


(裏話)

最初はレベル表記が見えない設定で、実は倉内さんも100レベ…なんていう設定でしたが、さすがに数日前に始めた程度でそこまで行くのは無理だろ。という現実主義な作者の意向で無かったことになりました☆


ちなみに、作者は遠距離タイプかスピードでタイプの職業ばっか使ってます。



次回は、明日の18時に投稿されます!!お楽しみに!!

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