stage1. ゲーマーの後悔
この作品は大学のサークルで部誌に載せて頂いたものです!どうせなので、いろんな方に読んで頂こうかと思い、投稿させていただきました!!
趣味を詰め込んだ感じの作品です(笑)
どうぞ、のんびり読んでくだされば幸いです(*´꒳`*)
「私と一緒に……狩りに行ってくれませんか?」
……ある日、俺の好きな子がとち狂ったことを言い出した。
————……事の始まりは数分前。
いつも通り教室を早々に出て帰路についていたところを突然後ろから腕を掴まれ、半ば無理やり校舎裏へと連れてこられた。
いきなりのことに驚いたが、それ以上にその犯人が俺の一目惚れ相手である「倉内舞」だとわかった途端、そりゃもう天地でもひっくり返るのかってくらい驚いた。
だが、それだけに収まらず加えて冒頭のセリフだ。もはや何が何だかわからなかったものだが…よくよく彼女の手に握られてるものを見れば、そこには見慣れたゲームの記事が載った雑誌。
…まさか、と流石の俺も察する。
まさか狩りとはそのゲームでってこと…?
え、何?つまり、俺とゲームがしたいってこと?!
これにはさすがの俺も、死期を悟るほどには驚きを隠せなかった。
なんせ相手はあの「倉内舞」なのだから…
彼女、倉内さんは容姿端麗でだれにでも優しく、教師陣からも厚い信頼を寄せられている文武両道の才女。いわゆる学園のマドンナ的な存在だ。俺以外にも彼女にほの字の男子はごまんといる。
そんな彼女に対し、俺なんてろくでもない廃ゲーマーで、目の下のクマとかひどいキモオタで……
それなのに、そんな俺なんかに、ましてやゲームがしたいなんて……これは夢かと疑わざるを得ない。声が裏返ってしまうのも当然ってなもんだ。
「なんで……俺?」
「え、あー……えっと、その……藤堂くんが……ね」
倉内さんのその一言で俺はすべてを察した。察したくはなかったが、察してしまった。
倉内さんの言う藤堂とは、俺の数少ない友人の一人のことだ。こいつもまた顔がよく、気さくで腹立たしいほどにモテる奴なのだが、小学校からの長い付き合いのおかげで女子が苦手というのを知ってるため何とも言えないのが現状だ。
そんな藤堂に俺は数日前、実体験をもとにあるアドバイスをした。それは、告白された時に「俺、ゲームのレアドロップアイテムくれる人としか付き合えない」というゲーマー発言をするというものだ。
ぱっと見ばかばかしいアドバイスだが、これがなかなか効き目があったりする。
実際、この断り方を始めてからクラスの女子が「藤堂くんってゲーマー女子が好きらしい」「彼女に求めるのがそんなのってどうなの?」と噂しているのを聞いている。ざまぁ。
…話が少し逸れたな。閑話休題。
ともあれ、以上のことを踏まえて考えてみれば当然一つの結論に帰結するってなもんだ。
おおよそ、藤堂に告白したところ似たようなことを言われ、なんと素直なことに倉内さんはそれを実現しようとしているのだ。
「さっすが我らが倉内さん!」と思う反面、倉内さんとの初めての会話に浮ついていた心が急速に縮むのを感じた。これぞまさに因果応報。身から出た錆。……藤堂の奴、一生怨んでやる。
「なるほど……それで俺なわけ、か」
「え? あ、うん! そうなの! 乃木くんってゲーム得意って聞いて」
「………………そっか」
ゲームが得意なことを褒められ嬉しいものの素直に受け止められないこの複雑な思春期の俺の心を誰か理解して欲しい…
正直手伝いたくなんぞない。だが、不安げに俺の顔を見つめてくる倉内さんの期待に背くようなことなんて…俺にできるはずもないのもまた事実。
「………手伝って…くれるかな…?」
「………………………っもちろん」
乃木善一、この十七年で初めてゲーマーな自分を悔いた瞬間だった。
(裏話)
最初、藤堂くんも登場させる予定でした。
それも割と乃木くんをバカにする(だがモテる)感じのキャラとして。
でも「え、なんかこいつ、うざいから書きたくないんだけど…」と作者が思ったために登場自体なくなりました☆
次回は、明日の18時に投稿されます!!お楽しみに!!