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第三話 まずっ

 目を覚ますと、横には器があった。食べ物の匂いがする。それと、足の痛みが完全に引いていた。腫れは引いて、動けるようになっていた。


「あの、これなに?」

「夕飯だが?」


 目の前には、生焼けの肉が入ったスープが置いてあった。またしても、緑味がかっている。明らかに食べるものではない。


「おいしいの?」

「…………食べれないことはないぞ」


 一瞬の間が空いた。それに、美味しいかどうかを聞かれて、食べれないことはない、という返答。美味しくは無いのだろう。


 もしかしたら、という希望を胸にラヴァは一口スープを飲んだ。


 苦い。とりあえず苦い。食べれたものじゃない。寝る前に飲んだ、飲み物に肉を入れただけのように思える。それに肉は生焼けで獣臭い。



「まずっ、よく食べれるわね」

「失礼な。食べれないことはないだろう?」


 少し怒ったようにヨイヅキが言う。確かに、一生懸命作ったのだ。ケチを付けられたら誰でも腹が立つだろう。


「明日、私が料理するわ」

「好きにしろ。だが、これよりも不味い物だったら承知しないぞ」


「大丈夫。そんな事は絶対に無いわ」


 そんな事を言いながらも、空腹には負けたのか器の中のスープは全て飲み干した。ついでに、生焼けの肉も。


「もう夜だが、寝るか?」

「なんで聞いたのよ? そうね、もう寝ようかしら」


「なら、こっちだ」

「ちょ、ちょっと話なさいよ!」

 いきなりお姫様抱っこされて、移動させられる。頬を赤く染めて、抵抗しているラヴァ。それを、柳に風と受け流して歩いていく。


 すると目の前には小綺麗なベッドがあった。ここだけは、きちんと整頓されているようだ。



「ほら」

 ぼふ!、と投げられてラヴァが一瞬の浮遊感を感じてからベッドに投げられた。かなり柔らかいベッドのようで地面に打ち付けられる痛みは無かった。


「俺はやることがあるから、そこで寝とけよ」

「分かったわよ……」



 毛布に顔を埋めながら答えた。肩が少しだけ震えている。ヨイヅキはどうしたのだろうか、と思いながらその場を去っていった。




 人間と交流しないヨイヅキにとっては、たまに行商人の所で買い物をする以外には全て手作りしないといけない。


 だからこそ、散らばっている道具の大半が手作りの品である。多くは、既製品と言っても過言ではないクオリティーである。



 大きめの布を手にとって、おもむろに切り始めた。少しずつ、少しずつそれは布から洋服の形になっていった。だが、ヨイヅキにとって女物の服など作ったことはない。


 だから、少しだけ大きめに、自分と同じ採寸で作っていた。もちろん、ワンピースのように丈は長くしている。



「ふぅ。こんなもんか? 難しいな。他人の服は」


 一度広げて見てみる。我ながら良い出来の服だ。これなら、長く使えるだろう。それに、もうそろそろ夜が明けてしまう。一心不乱に服を作っていたので、夜が明けるのが早く感じられた。




「ほら、起きろ。朝食作るんだろ?」

「うにゅ、にゅ~。んにゅ? おはよぉ」

 完全に寝ぼけていた。可愛らしい寝言ともに目を半分だけ開いていた。



「な、なん、なんで、なんで目の前に居るっ」

「ぐふぉ。いや、起こしに来ただけだっ。何を勘違いしている!」

 目の前に布団が蹴り出された。ついでに、顔面を蹴られた。竜人なので耐久的にはダメージは入らないはずである。なのに、蹴られた鼻が痛かった。



「寝てないんでしょう? 目、腫れてるわよ。少しだけ寝てなさいよ。その間に、朝食作るから。あ、布団の匂いを嗅ぐなっ! 体洗ってないからっ」


「あぁ。少し言葉に甘えさせてもらう」

 ぼふ、とベッドに寝転んだ。先程まではラヴァが眠っていたベッドである。まだ、ほんのりと暖かった。泥の匂いしかしないが。


 ずっと、集中して服を縫い上げていたからか直ぐに眠けが襲ってきてゆっくりと眠っていく。




※※※



 あちらこちらを歩いて、やっと探しだした。なぜか、洞窟内なのに滝がある。洞窟の外へと続いているのか、こちら側には水が溢れて来ない。



「さてと、どこに何があるのかしら」

 さて、眠っていていい。と言ったもののどこに何があるのか分からない。一応、気を利かせてか、ある程度の材料は机に置いてあった。


 そこにはラヴァの見慣れた食材の数々が置いてある。昨日の巨大猪肉、劇苦薬草で有名なセージの葉、芋等々多種多様な食材である。



「セージの葉をそのまま煮出したら、そりゃ苦いに決まっているでしょう」

 呆れるように、セージの葉と水の入った鍋を見て呟いた。


 セージの葉自体の栄養価は恐ろしく高い。肉とセージの葉があれば生きていける位には。だが、欠点はそのまま食べれば吐き出したくなる程に泥臭く、苦い。

 熱を加えると、泥臭さは消えて苦味も少しだけ抑えられる。



 セージの葉を滝に当てる。自身の手も、滝の水に当たりかなり冷たい。この工程は、ただ食材を洗っているのではない。セージの葉の苦味を抜くための大切な工程なのである。


 冷水に当てることにより、苦味が消えてピリッとした香辛料のようになる。それを使ってスープを作ることにするようだ。



 巨大猪肉は、少し大きめに切り両面に焼き色を付けていく。そして、近くにあった酒を加えて臭みを抜いていく。どうやら、上等な酒のようだ。


 芋の皮を削ぎ、水とセージの葉を加えた鍋に加えて茹でていく。ついでに、ラヴァが直感で選んだ野菜達も。



 少しの間煮て、岩塩があったので、それで味を整えて完成。


 椀に注いで、昨日と同じ場所に置いた。どこに置けば分からなかったからだ。



「ふぅ、完成。食事は美味しくなくっちゃ」

 満足げに頷いて、ヨイヅキを起こしに元来た道を戻って行く。

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