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道中で、お猿のように素早い男をがおり、「お前が勝ったら仲間にしてやる」と言われ、試合の前に黍団子を食べたところ腹痛を訴えました。お爺さんに持たされた薬を渡すと泣いて喜び、一緒に鬼退治に行くことになりました。
何故、猿のような男が腹痛を訴えたのか分からなかったのですが、猿のような男は「これは黍団子じゃねぇぇ! 渋すぎるわ!!」と立腹しました。
そう、お婆さんが作ったのは黍団子ではなかったのです。
黍を使っていないのですから。使ったのは栃と呼ばれる、黍と似ても似つかない木の実で、とてもあくが強く、あく抜きしないと食べられないものだったのです。それをそのまま使ったのですから、どうなったのかは推して知るべし、というものでしょう。猿は
「それは取っとけ! 俺が黍団子を作ってやる!」
そう言って別の団子を作ってくれましたが、こちらも黍で作ったのではなく、何故か稗でつくった稗団子。
お互いに「それは黍団子じゃない!」と怒鳴りあい、次に会った鳥のように髪の逆立った男に味審査をしてもらうことにしたのです。
ところが、その鳥のような男は、稗団子は食べたものの、いやな予感がした栃団子は食べようとしませんでした。何せ、あく独特の匂いが立ち込めていたのですから。
「どっちも違うな。ということで儂が作って進ぜよう」
そうして作ったのは粟団子。またしても喧嘩になり、次にあった人に決めてもらうことにして、里に向かったのです。
次に会った、犬のように鼻の利く男は、その三つを見て脱力しました。粟と稗は百歩譲っていいとしましょう。何せ同じイネ科の植物ですから。何故、栃団子が黍団子と間違われたのか、問い詰めたい気分になりました。
頭を抱えつつも、犬のような男は黍団子を作り、三人に渡します。
「これ! 昔喰った黍団子によく似ている!!」
桃太郎は喜びますが、全員呆れています。勿論、里に住む人たちもです。
「一回食ったことがあるのに、どうして間違えたかな、桃太郎君」
「え? 婆さんが、『他の飯がおかしい。自分のが正しい』って」
色々と聞いた里の一部の人たちは脱力しました。あの婆さん、まだそんなことを言っているのか、と。
「ただ、これは武器になる。鬼退治にはもってこいだ」
唯一食べた猿のような男は言いました。
「食ったんかい!」
「一瞬向こう岸を見た。桃太郎の持っている薬で命拾いした!」
だって、その時は変なにおいがしなかったのですから。
それを聞いた犬のような男が、栃団子からにおいをごまかす作業をしていきます。そして、それを鬼にさり気なく持たせられるように仕向けたのです。
鬼たちがやって来て略奪が始まりました。わざとらしく誘導して、栃団子の前に鬼を連れてきました。
そして、栃団子の隣にあった、「力団子」と呼ばれる団子を食べた桃太郎が鬼に向かっていきます。
何ということはない、料理上手で美人な女性が作った団子なのですが、桃太郎には大変よく効きました。鬼に大けがを負わせることが出来たのです。
それを見た鬼たちは、「あの団子に何か仕掛けがあるに違いない」と近くにあった栃団子を奪って行ったのでした。
その夜。
鬼の船に忍び込んでいた鳥のような男を追って、桃太郎たちが鬼ヶ島に上陸しました。猿のような男が帆の上に乗り、方向を確認しつつ、犬のような男が匂いを辿ってきたのです。桃太郎は少しでも早くつくようにと、船を動かしました。
そして、栃団子で苦しんでいる鬼たちを捕らえつつ、捕まっていた女性たちを助けました。
「二度と略奪しないというなら、その苦しみから逃れられる薬を渡す」
桃太郎はそう宣言しました。そして、同じように栃団子を食べ、その薬を飲んだのです。
実は桃太郎、お婆さんの料理のせいなのかおかげなのか、気づいたら毒耐性というものが付いており、ほとんど毒は効かないのですが、それはそれ、これはこれです。
それを見た鬼たちは、桃太郎の部下になると涙ながらに誓い、薬をもらったのです。
そして、鬼たちから里の者たちへ慰謝料を貰いつつ帰ってきました。
その後、桃太郎は鬼ヶ島に末永く住んだと言われています。
「だって、魚料理が美味いんだもん」
そう言っていたとか、いないとか。
今日も鬼ヶ島と里は交易をしながら笑いあっていたのでした。