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 昔々あるところに大変穏やかなお爺さんと、物凄く気の強いお婆さんがおりました。


 お爺さんの職業は(きこり)ですが、よく山で山菜など食べられるものも採取しています。御婆さんはその間川で洗濯をしたり、適当に畑仕事などをしていました。


 お爺さんとお婆さんのお家の近くには、他の家もないため、二人で暮らしていました。

「爺さん! さっさと洗濯物を取り込んだら、飯もさっさとくっとくれ」

「はいよ」

 こういう時お爺さんは逆らいません。

「ちょっ……婆さん。これ、飯なのかね」

 どう見ても「素晴らしい」としか言えない色をしたご飯がそこにあったのです。

「喧しいよ! そこまで言うならあんたが作りな」

 そう、お婆さんは強気なうえ、味覚音痴なメシマズだったのです。


 食事を摂り、お爺さんは逃げるように山へ行きます。解毒用の薬草を摂取するためです。

「今日も何とか生き延びたのう」

 子供たちにこんな思いはさせたくないと、お爺さんはお婆さんとの子供を諦めたのでした。



 夕方になり、乾燥させた方がいい薬草を採ると、お爺さんは山を降ります。

 何ということでしょう。家から赤ん坊の泣き声が聞こえてきたのです。

「どういうことじゃぁぁ!」

「煩いよ! 桃が流れてきたから切ったら、赤ん坊がおったんだよ」

 そして流れてきた桃は、お婆さんが一人で食べたようです。

「で、どうするのかね、この子は」

「あたしゃ、面倒みれるほど若くないんだがね」

 それはお爺さんもです。しかし、お婆さんに世話を頼めば何を食べさせるか分かったものではありません。仕方なく、毎日お爺さんが背負って山へ行くことになりました。



 そして、数年たち。桃から生まれた桃太郎はすくすくと大きくなりました。

 山で会う仲間の樵に乳を持ってきてもらい、樵たちが育てたようなものです。


 大変気立てのいい子なのですが、一つ問題がありました。


 お婆さんの作った食事で毎日ご飯を摂っていたからか、大変な味覚音痴になってしまったのです。

 そんな桃太郎は、ある日お爺さんの仲間から「黍団子」というものを貰いました。

 あまりにもの美味しさに驚いたのですが、それは樵が持って来たからなのだろうと思うことにしました。お婆さんに言わせると「一番うまいのはお婆さんの料理」なのだそうです。お爺さんに聞いても、静かに首を振るだけで何も言いません。だから、そんなものだと思っていたのです。


 気が付いたら、桃太郎は樵仲間で一番の力持ちになっていました。

 そして、山に来る樵の数が減っていました。減った中に、桃太郎に黍団子をくれた樵もいました。

「この先に海というものがあってなぁ、その向こうに鬼ヶ島というのがある。そこから毎日鬼がやってくるんだよ」

 そして、村人を殺し、娘を攫って行くのだと別の樵は言いました。


 気立てのいい桃太郎はその話を聞いて怒りました。そして、その怒りのまま、家に戻るとお婆さんにこう言いました。

「お婆さん、僕は里で悪さをするという鬼を退治してきます。ですから、黍団子を作ってください」

 驚いたのはお爺さんとお婆さんです。

 お爺さんとしては「ちょっ。おまっ。お婆さんの作った料理を持っていくんじゃない。薬草を煎じて飲ませられないのだから、あたったらどうする!? それに鬼退治なんて危険なことさせられるか!」ということなのですが、お婆さんは「黍団子とは何のことだい。さては爺さん変なものを桃太郎に食わせおって。鬼退治? どっからその話が出たんだい」というものでした。

 黍団子のことは置いておいて、里で悪さをするという鬼を懲らしめられれば、いいことづくめだと思ったお婆さんは、分かりもしない黍団子を作って、桃太郎に持たせる約束をしました。


 困ったのはお爺さんです。

 桃太郎は斧しか持ったことがないのですが、大丈夫なのかと大変気をもみました。

「下手に刀を持つよりも斧がいいです」

 そう桃太郎は言い、準備が出来ると早速鬼退治に出かけたのでした。


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