異世界のネットショッピング
「…」と「・・・」は何となくです。
特に深い意味はなく、気分で分けてみました。
・・・。
むぅ・・・。
そうきたか・・・。
まさか異世界で地球の物を取り寄せるのではなく、まさか異世界の物を取り寄せる方とは……。
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とりあえずカタログで気になった商品をweb上の買い物かごに入れて……と。
ククク・・・これで勝てる。
人生、勝ち組である。
何故なら・・・。
【鑑定スキル 2万円】
で、このDVDの返却のレンタルBOX風の上部に2万円分の1円玉を入れて、と。
この為にさっき銀行に両替をしてきた。
しばらく行かないつもりで5万円分を5つの銀行に振り分けてきた。
本当は一つの銀行でも良かったのだが、俺なりの銀行への気遣いである。
で、俺のいらぬ気遣いもなんのその、1万円分の両替をした際の窓口のお姉さんの変な目で見られたのはまあ仕方のないところだ。
それにしても両替手数料が半分(2.5万円)近くも掛かるとは……。
そりゃ2万5千円も手数料にかかったら変な目で見るわな。
手持ちのバッグに1万枚の1円硬貨。(約10キロ)
1本で50枚で計1000本の束。
本当なら自転車で行こうかと思ったが、重さを計算した結果、車にした。(量もあるので)
当然のことながら次回からは事前に連絡を下さいとまで言われてしまった。
うむ。すまんこったい。
下ろしてきた硬貨をドサドサっと投入口に入れる。
各銀行毎に分かれているので、簡単に入れ終わる。
ちなみにレンタルBOXの上部に金額メータがある。
2万円ピッタリになると。
『ガコン』と瓶入りのドリンクが落ちる音がした。
どうやら「スキル」を覚える方法とはこの瓶入りドリンクを飲まないといけないようだ。
・・・まさか飲まないといけないとはな。
白く濁ったような瓶に茶色の液体が入っている。
匂いを嗅ぐべきか否か。
少し迷ったが、匂いは嗅がないで一気に飲むことにした。
まあこれで、死んだり腹を壊すのも一興だろう。
死ぬも一定なり。
「えいやっ!」
液体の入った瓶が出てきたのグイっと飲んでみる。
するとユンピルスターを飲んだ時のようなカッとなる熱さが全身にきた。(ただし味は案の定不味い)
10秒くらいして全身の火照りが引くと、頭に何やらひらめき、鑑定の方法が分かった。
で、せっかくなので一番始めに自分を鑑定してみることにした。
「鑑定」
とりあえず声に出してみる。
気分は大事であり、また中二病を一時患った身としては必要な儀式だ。
ちなみに声を出さなくても出来るが1回目なので雰囲気を出す。
【鈴木 小太郎】
価値 7万9千8百8円
・・・くわーっ。膝から崩れ落ちた。
これは俺の思っていたのと違ーう!
というか、鑑定って謂わば「なろう小説」で有名というか常識のスキルや能力値じゃないのかよー。
そもそもというか何というか、鑑定から算出された俺の価値もショーックな一因なんですけど!
まさか10万円も価値がなかったとは。
知らなければ幸せというのを初めてじゃないけど、再確認した思いだ。
で、色々ショックを受けつつ他の気になったスキルを見ていく。
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で、そもそも何故、俺が異世界ネットショッピングをするようになったかは、かれこれ三時間前に遡る。
俺が噂の「小説家になろう」の履歴欄で好きな小説の続きを探そうとしていると、横の広告にあった『今、登録すると異世界の商品がなんと永久に50%引き』という、何とも怪しいバナーに心惹かれたからだ。
それこそ超怪しいと思いつつも、何も行動をしないと異世界になんて行けないと、書いてあった某作品にあったので、騙されたと思いつつも登録をすると、ネットカタログが俺宛のメールに添付されてきた。(この無謀さが俺の安さを証明する一因か?)
というか、メールを送信してないんですけど。
しかも辺りが光ったと思ったら、例のレンタルBOXが部屋の片隅にあったといえば聞こえはいいが、自動販売機の1/2くらいのサイズだから洒落にならない。
・・・まぁ、いっか。(ダメ人間思考)
と思い、カタログのページを開いていくと、そこには服やら薬、はたまた武器や防具、挙句のはてには魔物まで売られていた。
で、俺の本には50%引きで○○円と書かれているので計算などせずに楽チンだ。
というか、定価ってあってないような物だろ、と今更ながらに気付く。
まあ、実際定価でも欲しいものなら躊躇せずに買うし、イラナイモノなら99%引きでも買わないが。
で、イラナイモノ。
【ゴブリンの腰布】
まさか、こんな物まで売られているとは、な……。
ちなみにお値段は10円である。とてもリーズナブルな価格である。
ちょっと匂いが気になるが(変態か!)、ここはさすがに冒険はしない。
で他に、長剣やら怪しげな杖もあるが、色々とひっかかりそうなのでページを飛ばす。
ちょっと見てすごく気になったが、日本は法治国家。
長剣などを持っていると、銃刀法違反に引っかかる。
見ていると、勢いで頼んでしまいそうだから違うページにする。
ちなみに修学旅行のお土産で木刀を買ってしまいたくなるタイプである。
まあ補足として山登りに麓で杖を買ってしまったのは仕方のないことだろう。
話が横道にそれたので戻す。
てか、次のページはペット(魔物)か。
何故か一番始めにまたゴブリンが出てきており、これまたリーズナブルな価格の500円で売られている。 俺は、そう考えるとゴブリン160匹未満の男なのか・・・。
で、ちょっと(実はかなり)気にはなるが流石に注文はしない。
まあ将来的には無人島に行って、異世界のペット一緒に住んでみたいと頭にちらつくが、まだ今のところ予定にはない。
なので予定はないからゴブちゃんも飼えない。
で、後ろ髪を引かれる思いになりながら、エイヤってページを飛ばす。
ドラゴンの載っているページがチラッと見えた。
あ・・・ドラゴンだ。
やばい。超ほしぃー。
で次のページには、異世界の生活道具が売られていた。
台所用品や凝っている寝具。
そこにあった『寝るまで一分』という最近寝つきの悪い俺にピッタリの枕が2千円で売られていたので、試しに買ってみることにする。
とりあえず初めての買い物なので、それだけにする。
始めから、無謀なことには挑戦しない。
で、その時にたまたまあったというか、関東では使いにくい弐千円札があったので、例の箱に入れてみる と返却というか舞い戻ってきた。
【一円玉しか受け付けられません】
はぁっ・・・!
一般人な俺に、二千円分の一円玉など持っていようはずがない。
財布を見たら7枚しかなかった。
とりあえず投入すると【1993円足りません】ときたではないか。
仕方ないので、自宅から駅まで徒歩十五分の駅前にある銀行まで行くことになった。
とりあえず、三千円分(一円の束60本分)の両替をして帰ることにした。
家に帰り、一円玉を40本分を賽銭箱にそのまま投入をするうと、つり銭穴に7枚が戻ってきた。
当然というか面倒だから、束を崩したりはしない。
で、一円玉を入れてメーターが二千円分になると、例の箱の下部に枕が入っていた。
とりあえず、匂いを嗅いでみる。
クンクン・・・。
うむ。悪くない(ニッコリ。
とりあえず、横になってみる。
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……いかん。
何時の間にか寝ていた。
時間を見ると、三時間経過していた。
それにしても何という寝心地の良さ。
しかも起きると頭もスッキリしている。
普段、寝付きが悪いせいか覚醒するまで結構な時間がかかるのに、寝起きでシャキーン! だ。
これは素晴らしい物だ。
キ四リア様も喜ぶに違いない。
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と、それが三時間前のことである。
……で、それから銀行に二度(始めの3千円分と次の5万円分)行き、半分というか、かなり不審者になった訳である。
一円玉の兄ちゃんの出来上がりである。
で、少しというか、かなりダメージを負ってまでして買ったのがこの2万円も出して購入した『鑑定スキル』だった。
まあダブルで俺の心に深い傷跡を残しただけで終わったがな(プンプン!
とはいえ、このカタログを読むのは楽しい。
で、次に気になったのが薬品。
【ポーション】
お値段はリーズナブルな50円。
RPGのゲームをやった人ならお世話になる回復薬。
一度は飲まないといけないと誰しも思っていることだろう。たぶん。きっと。メアリー?
ただ『小説家になろう』では【不味い】の代名詞ともなっているが、ここは男らしく『弟』に飲ませてみよう。
「まっずぅ!!」
弟の第一声がこれである。
馬鹿舌な弟がこういうのだから、どうやら相当不味いらしい。
どんな味かを聞くと、ケールの青汁を更に青臭くした感じらしい。
ちなみに大麦若葉の青汁は、抹茶風味で飲みやすい。
よりにもよって、ケールよりも不味いのか・・・。
聞かなければよかったとは思うが、いつも自分は人からどのくらい不味いかを聞いて覚悟して飲むタイプだから仕方がない。
弟が軽くえずくのを傍目に覚悟を決めて、一気に飲む。
「ごぶぁ・・・」 ちーん! 俺は85のダメージを受けた。
ちなみに弟も俺も体の悪いところなどない。
まあ二人とも「顔」と「頭」と「性格」が多少悪いくらいだ。
前回の健康診断でも「A」で、特に体調に問題など全くない。
ぶっちゃけお金と不味い思いをするだけ無駄なのだ。
だけど、ポーションを飲む経験はプライスレス。
お金じゃ買えないのだ。
弟も何を飲んだかはわからないが、この世界で多分初となる貴重な経験をしたのだ。
飲み終わったので、飲ませるだけに呼んだ弟を実家に帰す。
普通なら文句を言うところだが、何故か弟は俺を尊敬しているらしく文句を言わずに残りのポーションを持って家に帰った。
ちなみに弟が俺を尊敬していると教えてくれたのは母親だ。
母親も何故、弟が俺のことを尊敬しているのかわからないと言ったが、俺も同感である。
さっぱりわからない。が、俺にとって悪いことではないので気にしないでおく。
……さて、効き目は全くわからなかったが、味だけは不味いと思ったポーション。
とりあえず痛風持ちのオヤジにでも今度プレゼントをしよう。
父の日に着払いで10本ほど送っておこう。
なんか青汁は痛風にはよくないと聞いたことがあるので、ミドリムシあたりとでも適当に言っておけばよかろう。
・・・と、そんな感じで今後もカタログで色々注文することになるだろう。
ちなみにだが、このカタログは春夏秋冬で変わるらしいから結構楽しみである。
そしてレンタルBOX風な器具は、どうやら他人には見えないらしい。
弟がこのデカイ器具を気付くのかと思いきや、スルーしたからな。
普通なら絶対に聞く大きさなんだけどな。
次回は弟を軽く押してレンタルBOXにぶつけて気付くか実験をしてみよう。
で、ここから後日談に入る。
以前手に入れた鑑定スキルを覚えているだろうか。
あれから俺は美術館の品に行って、超有名な作品を鑑定してみたところ、原価というか材料費くらいの価格しか金額になってなかったのだ。
地元の骨董品市でチートォッ!! というのは夢の話のようだ。
で少し考えてみたところ、もしかしたらこれは異世界での価値が数値になるのであって、自分の世界での価値とは違うかもしれないかな、と思ったのだ。
何故なら自転車を鑑定してみたところ、その価値が買った時の数倍の価格だったから。
え・・・俺よりも勿論高いよ。(泣き
と、そんな訳で思ったよりも厄介そうな異世界スキル。
ぶっちゃけ思ったのと結構違うのだ。
特に魔法スキルなど、全然使えなかったし。
世界によって使えるスキルとそうでないスキルがあると一番最後のページにこそっと書いてあった。
まあ買って失敗したのもあるが、枕のように成功したのもある。
ちなみに半額なのか不良品でも返品は不可と書いてあった。
まあそれがペットを買うのを躊躇する一因であり、飼ったのを想像して楽しんでいたりする。
何故なら飼おうと思えば飼える立ち位置にいるから。
飼えると思うと存外に無理にでも手に入れたくなるという衝動はなくなるものである。
まあこれが10年経ったら変わってるかもしれないが、死ぬまでには何かしら飼ってみたいものだ。
あれから俺は、お金を貯めている。
目標は山を買う事と、それを維持する金を稼ぐこと。
今まであまり目標なく生きてきたが、このカタログを手に入れてからほんの少しだけ夢を持って生きることが出来た。
他の人から見れば、漠然過ぎる夢かもしれないが、前よりはいい。
そんな訳で今日も頑張って・・・そこまで頑張らないけど給料分くらいは働くかとするかね。