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剣聖∴剣聖∵剣聖=剣聖  作者: 魚の涙


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国王

★身から出た錆。

 湿地にはその様な格言があると聞いた事がある。

 アレは正に、身から出た錆だ。

 始祖の錆に犯されて三国同盟は崩壊したと言い伝えられている。

 そこで止めて置けば良かったのだ。

 かつて魔術と呼ばれた技術体系の、終着点。

 過去の統治者達はそれを魔法と呼んだ。

 その結果始祖の魔王が生まれ、国が三つ滅び、魔術は散逸した。

 そこで諦めれば良かったのだ。

 だが、魔術は散逸したと言うのに魔法だけが残った。

 それは酷く不完全で、制御の利かない力。

「そう、だから我々は始末をつけなければならない」

 我々は咎人の末裔。

 その中でも、恐らく最も罪深い。

 魔術を絶った再興殻土封国よりも、罪深い。

 不要になった頭上の王冠を片手でつかみとり取り去り、立ち上がる。

 静かだ。我が王都の命を食らったのだから、当たり前なのだが。

 アレと視線を交わさず、アレを縛るのにはこの方法が最も有効的だとは……。

 皮肉なものだ。アレを縛る為に、アレを生み出してしまった技術を用いて、アレよりも残虐な行為に手を染める。

 だが、まだ生き残りが存在している。

 我の内に流れ込んで来る命の力がそれを教えてくれる。

 恐らく生き残っているのは勇者達であろう。

 月影王国の末裔達が生み出す無益な逸脱者達。

 それも長くは持たない。

 そうやって、この国に残るのは我とアレのみ。

 アレと共に我等が錆、タツサ王女もまた帰って来ているのだろうか?

 万全を期す為に、我はアレの動向を聞いていない。

 国民の盛り上がり様と、愚息が王城へ入ったと言う事しか確認していない。

 星詠は腐敗した。

 脅威干渉室は失敗した。

 まじない対策室は見逃した。

 数信寮は……数信寮だからな……仕事は熟しているが……数信寮だからな。

 結局は王族が務めを果たすのが筋なのだ。

 二つの錆。愚かな王女と、愚息。

 後は南が引き継いでくれるだろう。

 先に消えるのは湿原であった。

 ただそれだけの事なのだ。

 我は妙に軽い足取りで、謁見の間を出た。

 護衛も連れず歩くのは久し振りではないのだろうか?

 ……ひょっとしたら初めてかも知れない。

 この気安さは王族と言う務めから解放されたからであろう。

 有事には王都に集められた餌を道連れにアレを縛る。

 初めて聞かされた時はこの身分をどれだけ恨んだ事か。

 王族の務めとは、どれだけ重いのかと。

 嗚呼……この気安さは愚息達をその務めから解放した事に起因する安堵なのかも知れない。

 王衣の裾が床を擦る音だけが聞こえる。

 ただ人が存在しないと言うだけで、世界はこんなにも静かなのか。

 重厚な扉が、軽く触れただけで勢い良く開き、そして弾け飛ぶ。

 力が漲る。

 命の数だけ、力が。

 この力をもってしても、恐らくアレは倒せない。

 アレは力では無いからだ。

 アレは紛い物の魔王や、勇者と呼ばれる無益な逸脱者とは一線を画す存在。

 恐らく、魔法の集大成。

 魔術すら散逸した今、魔法がどの様な仕組みで成り立っているのかは誰にも分からない。

 我々協会の末裔は遂にその真理には辿り着けなかった。

 だが、我は思う。

 幾多もの命を吸い上げ、異常な存在に成り果てた今の我だからこそ、理解出来る。

 魔法は仕組みではないのだ。

 恐らくソレが存在する事自体が、魔法。

 世界を歪める、強力な法。

 アレはアレがアレである為だけに法を捻じ曲げる。

 捻じ曲がっていたとしても、法は絶対である。

 だから我々は法に従う他無い。

 法の網をすり抜ける事は出来ても、法を否定する事は出来ないのだ。

 それでも、法には弱点が存在する。

 法が及ぶ対象が全て死に絶えれば、法を語り継ぐ者すら消え果れば、法は消滅する。

 ……。

 考え事をしていたせいだ。道を忘れた。

 ……。

 決していつも誰かが案内してくれていたからうろ覚えだったとか言う訳では無い。

 ちょっと忘れただけだ。

 壁を蹴り破る。外が見えた。

 命の消えた王都が見える。

 街路樹は立ち枯れし、民衆は倒れ伏し、今生き残っていた勇者達の命が消えた事を感知した。

 鳥は墜ち、虫は啼かず、獣は動かない。

 範囲は……どれ程だろうか?

 始祖は最終的に数千キロに渡ってその領域を広げたと言われる。

 見える範囲を見る。

 頭痛は起きない。

 アレはその範囲に存在しない。

 我を見付けられない――と言う事は無いだろう。

 前回の記憶があるのか?

 だとしても無駄だ。

 この周囲には最早我しかいない。

 嗚呼……分かってはいたのだ。

 我は楽に死ねないと。

 我は懐から短剣を取り出す。

 恐らくアレの核となるモノと同等とされる、宝剣。

 秘匿された名を、長呪祈願。

 宝剣を鞘から抜くと、その歪に美しい刃が我を縛る。

 禍々しくも美しい。

 同時に、我は確信する。

 アレは王都に在る、と。

 否、宝剣に侵された今であればその名を口に出せる。

「聖剣はこの地に在る、と」

 感じる。

 宝剣と同じ存在が王都のどこかに在ると。

 我は宝剣下長呪核。

 未来永劫この罪深き土地に聖剣を縛る、宝剣に縛られし人柱である。






☆定期報告。

 現在、神威観測機の観測結果とミルヘルムに再潜入した密偵からの情報を元に考察した結果、無邦王国の王都は崩滅したと推測される。

 封国防衛条文五項三行の規定に従い全ての密偵に即時撤退指示を伝達。

 密偵の森林内拠点への仮撤退及びその処理は数日中に完了する見込み。

 並行して森林奉護の規律に則り後光放射線封鎖儀式の準備を進めている。

 本報告書執筆現在、神威計測機は無邦王国中心部に活性化後光放射性神威二柱の御顕現を明確に感知している。

 一柱は森林内に奉られておられた不活性化後光放射性神威であらせられると推測されるが、無邦王国中心部で突如御顕現された後光放射性神威の御来歴は不明。

 御来歴不明の後光放射性神威は現状不活性化の兆しが御見受けなされないが、森林内に奉られておられた後光放射性神威は不活性化の兆しが御見受けされる。

 尚、森林内に奉られておられたもう一柱の不活性化後光放射性神威は未だ御顕現されたままその御所を御定めになられておられない。

 以上。

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