1/1
いち
私は今、虹が丘にある日々屋荘という下宿屋の前に佇んでいる。
何故この門を通れないのか、それは、この下宿屋の外見にあると思う。
所々にツタなんて張ってあるし、黒いシミのようなものが壁あちこちにあるし、暗いし、もろ年期が入ってるし、玄関が昭和の小学校の様な両開きの木製の扉だし。
お母さん、何が
「ステキなところね〜!何だかレトロでいいじゃない!」
ですか?
あの、パンフレットの写真もサイトの写真も、きっと何年も前のだったんだよ。
あんな、あんな、クリーム色で可愛らしい外見なんてどこにもないよ。
ガチャ
え、扉開いたんですけど!?え!?
私はつい後ずさる。
「あ!貴女、冴木なおさんだよねー!」
扉からは、1週間ほど前に家に訪れた眼鏡を掛けた女の人が出て来た。
「せ、先日はどうも。園田さんですか?」
「そうそう!園田 裕子!そのっちって呼ばれてるから。よろしくね!
よし!じゃ、さっそく入ろっか!」
凄く明るくて元気な人だなー。
なんだろ、このお花が飛びまくってる満面の笑みは。
「え、あ、、、はい」
私がここに来ることになったのは、遡ること2週間ほど前のことになる。