「エラキンクエスト8・婚約者」
ヨシテル一行は、オリハルコンの針を持つというフジーラの家まで来ていた。
「いらっしゃいませ。ご用は私めが承ります」
フジーラ執事は丁寧に挨拶した。
「こちらのお宅に、オリハルコンの針があると伺ったのですが」
「えぇ、ございますとも」
フジーラ執事は眼鏡を手でいじりながら言った。
「魔王エラキングを倒すために必要なのです。
譲ってはいただけませんか?」
「オリハルコンの針は、フジーラ様の家に伝わる家宝でして差し上げることは出来ません。
しかし、もうお嬢様も良いお年頃。
結婚指輪を探しておりますが、その入手が難儀でして」
フジーラは外した眼鏡を拭きながら困った顔で言った。
「どのような指輪ですか?」
「祝福の指輪は、ふんだんにダイヤモンドが使用されておりまして、世界一高い代物でございます。
こちらはジュエリーショップに発注済みです。
もう一つの天使の指輪は寂れた教会にあるらしいのです。
しかし危険地帯のため誰も近づかないゆえに価値が高騰しております」
指輪の話をしている時のフジーラ執事の目は輝いていた。
「天使の指輪を見つけてきたら、オリハルコンの針をいただけませんか?」
「だんな様も、お喜びになると思います。よろしくお願いします!」
フジーラ執事は深々と頭を下げた。
「私も一緒に行くわ。自分で身につける物だもの、この目で見たいしね」
そう言うとフジーラは、さっさと支度を始めた。
危険地帯だというのに、全くアクシデントもなく教会に辿りついた。
道中はフジーラの指揮、というよりワガママに振り回されヨシテル一行は疲れていた。
教壇の上に宝箱び宝箱の中に指輪が入っていた。
「これが天使の指輪?危険地帯というわりには穏やかでしたね」
「心強かったわ。ヨシテルがいてくれて・・・」
フジーラはヨシテルの薬指に指輪をはめた。
その後ジュエリーショップに祝福の指輪を取りにいき、フジーラの屋敷へと戻った。
「よくぞ指輪を手に入れてくださいました。
お約束のオリハルコンの針を差し上げましょう!」
フジーラ執事は、オリハルコンの針をヨシテルに差し出した。
「もうオリハルコンの針は必要ありません。
私はフジーラと結婚して、ここで暮らします!」
ヨシテルは、フジーラの顔を見つめ手を握りながら言った。
「お仲間のパープルさんは、結婚相手ではないのですか?」
「パープルさんは、ただの貧乳な仲間です。
私は巨乳が好みだ。貧乳じゃ興奮しないんですよ!
それにフジーラ家は金持ちだ。
魔王の右腕エラドラゴンとの契約で、世界の半分の平和を金で買っているほどの財力があるそうですね。
魔王エラキングとの交渉は、金のやり取りで解決するつもりです。
世の中、カネ、カネなんですよ!金は世界を救うんです!」
ヨシテルは真顔で興奮しながら言った。
「そりゃごもっともだ」
フジーラ執事はスーツ、カツラ、マスクを脱ぎ捨てた。
「誰だお前は!?」
「俺の名はエラン三世。
お宝をいただくため、フジーラの家に執事として仕えていた。
お前のような、単純な奴が来てくれて仕事が楽だったぜ!」
そういうとエラン三世は、窓からロープを垂らした。
「なっ何だと!?では私の結婚相手のフジーラさんは?」
「私は指輪が欲しかっただけよ。
養子になってから長期間、この家で暮らすのは退屈だったわ。
さぁ行くわよエラン」
エラン三世とフジーラは家を出手、いずこかへと消えた。
本当の家主にエラン三世とフジーラの捜索を依頼され、オリハルコンの針を譲り受けたのだった。