孤独な男と居場所のない女
追憶の秋四編目です。
一
最愛の彼女を喪った男は一人孤独に生きる。
最愛の彼女を喪ったあの日からずっと。
ただ一人、ただ一人、孤独の夜に怯えながら。
悲しみに頬を濡らし、孤独の夜に痛みを堪えて。
日々を過ごしている。
一時は死を望んだが、彼女との約束を守るため。
死への欲求に戦いながら、生きている。
二
鳴り止まぬ雷、降りしきり止まぬ雨、吹きすさぶ突風、それらが過ぎ去った朝のことだった。
浜辺に倒れている一人の女を男は見つけた。
男は女を抱えて、家の床に寝かせる。
女と共に過ごしている時、男の心は安らいでいた。
三
男が女を見つけてから数刻が過ぎ、女は目覚めた。
男は女に問うように語りかけ、女は男に言葉を返す。
女の名と浜辺に倒れていた理由を聞くために。
理由を聞いた男は女と重なるものを感じた。
孤独の男と居場所のない女。
男はこれからのことを話し、女は喜びに涙を流す。
初めて得た自分の居場所に涙を流す。
四
男と女は互いに心の喪失を埋めるように過ごす
喪った最愛の彼女を男は再び得て。
今まで居場所のなかった女は、初めて居場所を得て。
二人は幸せに生きて、日々を過ごしている。
《終》
これで追憶の秋は最後です。




