コスモスとキジと赤とんぼと満月
追憶の秋一編目です。
花 コスモスと絵描きの青年
ある晴れた秋の日。絵描きの青年は散歩をしていると、道端に一輪のコスモスの花を見つけた。
コスモスはありふれた花。青年はコスモスを見つめると、ある風景が見えた。
一輪ではなく、多数のコスモスが一面を占め、中央には一組の男女が互いを支えるように寄り添う光景。 青年は急に見えた情景を描きたくなった。今を逃せば一生描けないと思い、散歩をやめ、駆け足気味に家に戻ると、真っ白な画用紙といくつかの絵の具と愛用の筆を持ち、先ほど見えた風景を描き始めた。
鳥 紅葉とキジと写真家の女性
ある晴れた秋の山。若い写真家の女性が紅葉狩りをしていると紅と黄色の間から一組のキジが寄り添うように木に止まっているのを見て、微笑ましく感じた。
そして、少し離れたところから、首にぶら下げているカメラを目の位置に上げ、カメラのズーム機能を使い、番のキジを数枚の写真に収めた。
風 夕焼けのススキと赤とんぼ
ある秋の日夕方、辺り一面、ススキでおおわれた草原ゆ赤とんぼの群れが遊んでいるかのように飛び回っている。まるで人間の子供たちのように、鬼ごっこをしたり、ススキの中に隠れて、かくれんぼをしたりしている。しかし、夕陽が完全に沈む頃になると、どこからか風が吹いてきた。
それを合図に赤とんぼの群れはススキの草原から離れていく。
「また明日ね」と言っているかのように、風で横に倒れたススキを背に散っていった。
月 満月と老人
雲一つ無い秋の夜、己をさえぎるものがない月は、地上を煌々と照らしている。
月明かりに照らされたススキの草原を、風がゆっくりと吹き、ススキの穂をそよがせる。
そよぐススキの穂と優しい月明かり。
庭で月を見上げていた老人は、穏やかな表情で秋の自然を感じていた。
終
花鳥風月に秋に関連したものを組み合わせました。




