夢想殺し
私は夢想を殺めた
彼らの望みを壊した
自らを救うために
苦痛から逃れるために
生け贄に捧げた
彼らは不明瞭を愛していた
分からないままにやって
分からない状態に酔っていた
ぬるま湯に浸りながら
虚構の安楽に委ねていた
生贄の美酒に腐敗しながら
そんな彼らを私は殺めた
彼らの愛していたものを砕いた
明確の暴風を送り込んで
無理矢理にも分からせた
見ないと理解できないようにして
腐敗を暴いて壊した
白蟻にかじられていた
美酒にさせられていた
安泰に据えられていた
犠牲にさせられていた
だから、私は殺めた
だから、私は壊した
だから、私は砕いた
だから、私は逃げた
彼らの未来を
彼らの望みを
彼らの願いを
彼らの繁栄を
喪失によって
逃亡によって
知恵によって
解放によって
残骸の名は夢想
その山々は残骸
産み出したのは崩壊
導き出されたのは失望
誰が悪いのか、殺めた者か
誰が正しいのか、砕かれた者か
誰が招いたのか、酔いしれた者か
誰が望んだのか、、殺めた者だ
生け贄によって潤っていたものが
潤落へと零れ落ちていく
零れ落ちたその先は
信用の枯渇しかない
支えを失った
支えを奪った
私が支えていたから
私に支えさせていたから
支えある未来を壊した
彼らから何もかもを奪い取って
私は自尊心に紡いでいく
事実に裏付けされた自尊は
紙よりもはるかに強固なもの
根性を出せと謳っても無意味
精神論で持ち上げても無意味
移ろった時代の流れに置き去りにされて
いたずらに潤落を加速させていく
真綿のように甘くない
思考の苦汁を溢れるほどに注がれる
全盛期の夢を見ても掴めない
返り咲くことはできない
ただ、散るだけの未来
それが残された代償
自分勝手に仕組んだ崩壊
彼らの未来を殺めた私は
離れ去ったところから
風のたよりを待っている
腐敗に朽ち果てた彼らの末路を
残酷な笑みを浮かべて
単なる妄想だと思いながらも――
《終》




