鍵の詩
鍵紛失事件を元にして書きました。
鍵は気づいた 己が闇の陰にいることを
鍵は気づいた 吊り下げられていることを
鍵は思い出した 自分がこの場所にいるべきでないことを
鍵は思い出した 本来の場所から離れてしまっていることを
鍵は嘆いた 自己主張することができないことを
鍵は嘆いた 見つけ出されるまでこのままであることを
鍵は諦めた 何もできないのならできないなりにやればいいと
鍵は諦めた 見つけ出される時を待てばいいと
ゴソゴソとした音が聞こえる 持ち主が鍵を探している
ゴソゴソとした音が続いている 鍵をまだ探しているのか
音が途絶えた ため息が聞こえる
音が途絶えた 見つからないことへの嘆きで
鍵は願った 声を出せれたら知らせられるのにと
鍵は願った 身動きが取れるなら音を響かせられるのにと
ここにいるよと伝えたい 持ち主の不安を取り去るために
ここにいたよと伝えたい 持ち主の苦労に報いるために
闇の陰に光が差した 電光の眩しさが鍵を包む
闇の陰に光が差した 持ち主が鍵の場所を探し当てたのだ
ため息を聞いた 持ち主の安堵のため息を
ため息を聞いた 不安からの解放のため息を
鍵は離れた 闇の陰から光の場所へ
鍵は離れた 仮初めから本来の場所へ
今の鍵はどこにいる 本来の場所で役割を果たしている
今の鍵はどこにいる 新しい持ち主の元で使われている――。
《終》
色々と端折っている部分はありますがだいたいの流れは事実です。