アリアンロッドと竜
夏頃に書いて放置していた作品です。
銀の円盤が回っている
グルリグルリと回っている
どこにあるかもわからない場所で
人里から遠く離れた場所で
誰に気づかれることなく
静かにグルリと回っている
闇を抱きながら
黒を抱きながら
歪を抱きながら
死を抱きながら
同じ運命を繰り返しながら
ただひたすらに回っている
深い深い穴の中で
深い深い洞の中で
誰に知られることなく
グルリグルリと回っている
一匹の竜がいた
花畑の中で横たわりながら
夢を見ていた
空を翔る夢を
もう二度と飛び立てることが
できないと知りながらも
夢のなかでしか空を翔ぬとも
竜は眠りに微睡みながら
花畑を守り続けている
彼の竜が見ている夢は
澄み渡る空を
その大翼で翔る夢
月夜に堕とされたことは
霞みに渡したが
時折、ただ鮮明に蘇るも
気にすることなく空を翔ていく
折れた大翼で
折れていると知りながらも
夢のなかで翔ている
花びらが舞う
大翼に吹かれて散り舞っている
花の精の祝福を受けるかのように
竜は笑いながら
夢をなかで翔ている
彼の竜も知らない場所へと
果てしない大空のその先は
大空に浮かぶ開かれた微睡みの墓場
そして彼の竜は気づく
墓場に向かう夢は
己が死期を近づいていたということを
懐かしき大翼で大空を翔る夢
懐かしき大翼で向かった夢の先
今生の終わりに向かうべき墓場
されど、花畑に囚われた竜は
夢のなかで向かったのだ
墓場のなかで銀の円盤が回っている
グルリグルリと回っている
花畑の竜のための
鎮魂の舞いとして
静かにグルリと回っている
銀の円盤に込められた幻想物語は
花畑の竜の夢のなかに
ひっそりと刻み込まれている――
《終》
元ネタは、ヴァルキリープロファイルのアリアンロッドの迷宮と花守の竜の叙情詩です。




