ハロウィンパレード
少し遅れましたが、今年のハロウィンものです。
赤毛の少女が歌っている
巨大な彫り物カボチャを被ったお化け巨人――タイタン・ジャックオランタンの肩に乗って
フルートの旋律が響き渡る
タイタン・ジャックオランタンの彫られたカボチャの空洞の中から
不気味で滑稽な、精緻でデタラメな旋律が
不毛の荒野に響き渡る
赤毛の少女の歌声は魔性の音色
死者たちを招き離さない
生者との告別を果たされた死者に
帰る場所など喪われているのだから
涙を流しながら歓喜をあげているニコラウスは袋をめちゃくちゃに叩いている
ドラムを叩いているかのように
ハーメルンの演劇者たちは楽弓を手に躍りかかっている
ブルーメンの声楽隊を弦楽器にするために
異質な花火があちこちで燃え広がっている
魔法に狂った演出気取りの豚が絵を描くように
軍服を着た盲目者が大振りのナイフでジャベリンをしている
道化師の役割を果たしているかのように
豪奢な娘たちがダンスを披露している
狂気に骨折して錯乱した踊り子のように
両目を潰されたヤクザが両手を鰐に咬まれながら踊っている
罰ゲームをやらされている団員のように
それは死者たちのパレード
葬列にして冥界に下るために
タイタン・ジャックオランタンの奏でるフルートの音色に引き寄せられて
赤毛の少女の歌声に引き寄せられて
葬列のパレードは進んでいく
緋色と黄色の花群が織り成す花道
その先にあるのは冥界への石扉
葬列のパレードは進んでいく
彼岸花と菊の花に見送られて
石扉を通った先には
氷河のように底冷えする不気味な並木道
そこは生命の息吹無く絶望が満ちる冥界
死者たちのパレードは進んでいく
冥界の宮殿であり司法地である
裁きの館を目指して
裁きを受けたパレードの一団は
二つに分けられた
パレードから離れ冥界で罰を受けて過ごす者たちと
パレードに付き従い、転生の卵に向かう一団に
タイタン・ジャックオランタンに誘われ
赤毛の少女の歌声に引き寄せられ
転生の卵のもとへと死者たちは連れていかれた
死者たちのパレードが転生の卵のもとに来ると
卵に吸われるようにして
死者たちのパレードは消えていった
新たなる生を受けるために
自身の役目を果たした二人
赤毛の少女とタイタン・ジャックオランタンは
新たなる死者たちを集めて、冥界に導くために
現世へと舞い戻っていった
彼らに休息は無い
死者たちが現れるたびに繰り返される世界のシステムに
抗うことなく淡々とこなしていく
時季に合わせた衣装を遊ぶように纏いながら――。
《終》
寝落ちなどで遅れましたが、なんとか書き上げられました。