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第二話 【馬鹿】と鏡と掃除の子

 と、まぁそんなわけで。

 食っちゃ寝食ちゃ寝してからの――――あんよだぜ!!


 しかも!

 歩きなれたから、侍女の目を盗んで脱走してやったぁ!



 ふわぁっはっはっは!


 はーっはっはっはっ!!


 という訳で。

 現在地は廊下だ。

 天井が高いな……。

 前はそんなこと感じたことすらなかったというのに……。

 この体になってからはいろいろな発見をするようになったな。

 例えば母上の鎖骨の下に小さなホクロとか。

 父上の瞳は前のように濃いターコイズではなく、叔父上のようなコバルトブルー。

 でもって少し薄いような……そんな感じ。


 ……お? 

 でっけー姿見じゃねぇか。

 塗装が剥げかけてっとこあんのな……。

 一見古びてっけど、出来たころはスッゲー綺麗な鏡で…………どっかで見たような……。

 

 でもって確かこれ、壁にどかんって置いて――――あ!

 

 これ俺様愛用の姿見じゃねぇかっ!!

 

 ほらここ!!

 この右下の細工!

 前は青い石がはめ込まれてたんだ。

 けど、俺が気に入らなくて剥いでその辺に転がしてたら、踏んづけで砕いちまったんだよなぁ……。

 でもって。

 宝石じゃなかったってことが分かって、爺やが激怒して、作った奴に付き返すってなって。

 俺は気に入ってたから全力で阻止したんだけどさ。

 

 まさか、まだ残っているとはなぁ……。

  

 しかもしっかり手入れされてるみてぇで曇りひとつねぇし。

 

 ……はっ!!


 なんだ、この愛らしく美しい、美しすぎる美少女はっ!!


 俺様だ!!


 うっはっはっはっはっは!! 

 

 見よ!

 この美しいとしか言いようのない透き通った白い肌!

 美しくかつ愛らしい顔っ!!

 さらっさらの闇夜のように美しい髪!

 そして極めつけはぁ――この美しい瞳!!


 何より鼻の所にそばかすが無いのが最っっっ高だ!!

 あ。

 やべぇ。

 俺様マジ可愛いんですけどっ!!

 ゼッテェ将来美女だ!!


 もうそう確実に決まった!!

 

 * * *


 私は通りすがりの、ただの掃除のモノです。


 今、私は持ち場の清掃を行うため、やってきました。

 

 が。


 それがどうでしょう……。

 こんな人気のない。

 華やかな場所に似つかわしくない影のような場所。

 そんな場所にひっそりと置かれた大きな姿見。

 これ前で、幼女が華麗なダンスを踊っているのです。


 …………しかも、何故か男性パートを……。


 ……いえ。

 私、ただの掃除をするだけのモノなので、ダンスは詳しくないのですが、一度だけこっそりと見たモノと同じように思えただけです。


 でも。

 こんなに幼い子がダンスなど、踊れるのでしょうか?

 

 謎です……。


 私は目の前の現実が不可思議すぎて、呆然と突っ立っていました。

 

 それがいけませんでした……。



「そこのおまえ」

「?! は、はい!」

 


 よ、幼女に話しかけられました?!

 え?

 よ、幼女?

 

「このことはないしょ、よ……?」


 こてんと小首をかしげた幼女ですが、表情が幼女が浮かべる笑みではありませんでした……。

 私は怖くて、黙って勢いよく頷くと。

 幼女はくすりと笑いました。


「これをきれいにしてくれているのはおまえ?」

「……(『これ』?)」


 幼女が顎をしゃくって示した先は、私がいつも綺麗にしている大鏡。

 だから私は頷くことにしました。


「そう……。ありがとう」

「え……?」


 なぜ、感謝された……?

 訳が、分かりません。

 私が目を白黒させていると、幼女はフッと。

 幼女らしくない、妖艶な笑みを浮かべ。


「この城はお前たちのおかげで保たれているのだ。誇って良いぞ」


 幼女はそう言って踵を返し、颯爽と廊下を進み。

 角を曲がったため、見えなくなりました。

 

「え……? 今の、なに……?」


 私はえも知れぬ恐怖に足がすくみ、腰が抜け。

 その場に崩れ落ちました。


 手が、ありえないほどに震えていて……しばらく掃除は出来そうにありません。


 はぁ……どうしましょう。


 休憩時間、抜かなきゃなぁ……。


 はぁ……。


 * * *

――一方、あちらでは――

 ルファネスが鏡の前で思っていたことが丸ごと聞こえたニコラは、死んだ魚のような目をして、そっと泉から立ち去っていった……。


―――――――

―――――――

 

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