終話 【馬鹿】の苦悩は始まったばかり。
さて。
どうやってごまかそうかな~……。
う~ん……よし。
決めた!
「ごめんなさい。リーナス。今日はね、ルゥが――」
「チッ……」
ん?
舌打ち……?
ついでになんか低い声?
「はぁ……。貴方は、蘇ってなお。私を怒らせたいのですか」
…………。
…………………。
………………………。
「な、何言ってるの? リーナス……? 顔が怖いよ?」
そうそう。
だってリーナスから寒気を感じるんだよ。
これおかしいことだぞ。
大体。
ちょろっちょろのちょろいんな侍女が、あの鬼畜側近兼護衛なアイツみたいな感じんなってんだ。
「いつまでそう、幼児ぶって居る気ですか。第十七代エドレイ王。ルファネス・グレイオ・エドレイ陛下……?」
…………あははっ!
誰か……。
誰でもいいから、これを何かの悪い夢だと言ってくれ……。
「貴方という方は……」
ため息交じりな声。
ありありと浮かぶ呆れの感情。
俺を射殺すように鋭く、蔑みをありありと浮かべた琥珀の瞳。
「相変わらずの馬鹿なのですね。私はこの国の将来が不憫でしょうがありません。いっそ、民に謝罪の気持ちをもって死にますか」
そういった奴は腰に手を当て、何やらキラリと鋭く光る長い、とても見慣れた何かを取り出した――。
って!
おいっ?!
なんでそんなもん持っちゃってんの?!
「そうですよね。一人では寂しいですよね。大丈夫です。私もすぐにそちらへ向かいますので」
フォンという嫌な音とともに振り下ろされた、片刃の剣。
それはかつて彼が愛用していたモノに良く似ていた
つか、どこで仕入れやがったっ!!
この野郎!!!!
「いやいやいやいやいや違うだろっ?! 落ち着け、セイド・スイダスっ!!」
恥だろうが何だろうがかなぐり捨てて地面を転がって回避しつつ、怒鳴り。
素早く体制を立て直す。
じゃぇねぇと、殺られる……。
もちろん。
一瞬だ。
だってこいつとまともに渡り合える奴なんて、この国の東にあったロンダーナの騎士隊長ぐらいだったし!!
あと二コちゃん!!
あの子ぐらいだからね?!
「いやですね。私は落ち着いておりますよ。陛下が落ち着きになられてはいかがでしょう」
「お前が言うな!! さっさとその物騒なモン仕舞えッ!!」
横薙ぎに襲い来る奴の剣を後ろに下がって回避しつつ、抗議するが、奴は眉間にしわを寄せ。
剣を持つ左手を返してみたり、伸ばしてみたり。
どこか不満げだ。
俺は奴の間合いから少しでも抜けるため、後退。
人で賑わっていた城下というか、市場は静寂に包まれている。
そして。
遠巻きに俺たちを見ているという、やじ馬が……。
「ふぅ……。私も腕が落ちましたね」
「何言ってんの?! お前の腕ちっとも落ちてねぇよ! なんでだよ! 笑えねぇんだよ! たち悪ぃんだよっ!!」
―――――――――
――――――
「こうして。お姫様になったおバカな王様は、お友達と再開して、お城の中で楽しく幼少期を過ごしましたとさ。めでたしめでたし! さぁて、今日はウェルで遊んでこなくっちゃっ!」
「ふざんな! 何が楽しくて殺され駆けなきゃいけねぇんだ! 戻ってきやがれ馬鹿魔導錬金術師ぃぃぃい!!」
楽し気にこぼして姿を消したクラジーズに対し。
ルファネスがあげた罵声はエドレイの王宮中に響き。
その直後。
ルファネスの悲鳴交じりの絶叫が響いたのであった……。
「ぎゃぁぁぁぁああ! おまっ、丸腰の人間になんてもん振り下ろしやがる?!」
「剣ですが。何か問題でも?」
「問題大ありだろうがっ! 何しれっとした顔で言ってんだ!!」
【END】
お付き合いくださり、ありがとうございます。
次の話から主人公が変わるので、いったん切ります。
次回は、こんな感じで二コラのターンです。
『変人公爵一家の義妹』を最後まで読め、よし待ってやってたぜ! バッチ来い!な、ツワモノな方だけお待ちください……。
絶対に彼女が暴走して手に負えなくなる自信があるので、先に言わせてもらいました。
うん。
あれは書いたの自分だけど、途中が読み返せないくらい、きつい……。
まぁ、設定が五歳か七歳か九歳かのどれかだったはずなんで、そんな感じで理解してもらえてるといいなぁ……( ̄∇ ̄;)ハッハッハ。