軍師さんとドキドキ
へ?
イングリッドさんは、まんじりと俺を見つめている。
夢を調べるって、どういうこと?
「夢というのは、その人の潜在能力の一端を示します。だけど、その人のほんとうの夢は、自分自信でも気が付いていないことが多いのです」
ほんとうの、夢?
「それを、天職と呼びます。例えどんな辛いことであっても、それさえしていれば、幸せと感じられるようなこと。たとえ夢だと思っていても、実現したとたん、こころが冷めてしまうようなことだって、よくあるのです」
何となく、分かるような気がする。それに、天職という言葉には、何か合点がいく。
「例えば、好きだと思って作家になっても、悪いこととは分かっていても締め切りを守らなかったり。そういうことって、なにか身に覚えがありませんか?」
ええと、好きだと思って勇気を振り絞って告白しても、あっさりと振られたり?
「それは本人の魅力の問題です」
ううっΣ イングリッドさんはたまにひどいことを言う。
「とにかく、軍師としてまずそれを調べるのが、ボクの役目なのです」
軍師……?
「それでは、早速その「夢追」を始めます」
え、今すぐ!?
……俺たち二人は、両親のいない昼下がりの居間でちゃぶ台を前にして座っている。
相変わらずセミはミンミンうるさい。
だけどなんだか遠くに聞こえるような気がしてきた。
目の前の美少女にまた見据えられて、なんだかドキドキしてしまう。