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クレージースクール!

作者: 上条 海輝

『クレイジースクール!』

 

「暑い」

 八月中旬、三十度を越える暑さだというのに俺、武藤真矢(しんや)は外を歩いていた。

 何でこんなクソ暑い日に外に出ているかというと、今日は俺が通う高校の登校日だからだ。

 高校に入学してから二回目の夏休みという事もあり、昼夜逆転などだらけきった生活を送っていた俺にとっては、登校日は苦行以外の何物でもない。

 憂鬱な気持ちになりながら、学校に着き教室の扉を開けると男子全員が殺気だって待っていた。

「何だお前ら殺気だって、何かあったのか?」

 俺が質問すると、中学からの知り合いである(ゆう)(すけ)が、

「俺の心は今とても曇っている、なぜだか分かるか?」

「わかんねーよ、お前がバカという事以外わかんねーよ」

 この暑さでついにいかれたか?

「この前の祭りでお前が女と一緒に歩いてるのを見たんだが」

 ああ、なるほどそれでみんな殺気だってたって訳か。

「いや、あれは」と俺が言いかけると勇助が、

「彼女か彼女なのか、まさか許婚とか言い出すんじゃないだろうな!」

「何で許婚が出て来るんだよ! いねーよ彼女も許婚も……まあ、二次元には沢山いますけど」

 自分で言ってて悲しくなってくるな。

「じゃあ、誰なんだよあの子は!」

 今にも殴りかかってきそうな勇助、他のみんなも同じだ。

 そこで俺は「妹」と、一言だけ告げる。

「嘘つけ、お前の妹があんなに可愛いわけがない! 百歩譲って義妹だろ!」

 また、勇助がバカな事を言ってきた。

「お前のそのエロゲ脳どうにかしろ! 似てなくて悪かったな、実の妹だ!」

「マジ?」

「マジだ!」

 教室が静まりかえる。

 さっきまでの全員の殺気が哀れみに変わる。

 やだな、この空気。

 その静寂を打ち破る様に勇助が、

「全員解散!」

 そう言われるとみんな席に戻って行った。

「悪かったな、真矢」と、勇助が右手を差し出し仲直りの握手を求めてきた。

「いや、いいよ」と、俺も右手を出し握手に応じる。

 立場が逆だったら俺もお前を殺してると思うし。

 何かいいな、青春ぽくて。

 そんな空気に水をさす様に、勇助は握手している右手に力を込めながら、

「ただな、お前がその後、数人の女子と一緒に回ってる所も見たんだが」

 友情の握手が鎖に変わる。

 いつの間にか、みんなの殺気も戻っている。

「い、いや、妹の友達と一緒に回っただけだ、深い意味はない」

 焦る俺、今にも殺されそうだ。

「ま、待て、お前ら落ち着け、ほら見ろ先生が来るぞ」

 助けを求める様に教室に入って来た先生を見る。

「静かにしろお前ら、そうゆう事はもっと静かにやれ」

「何て事言うんですか先生、見て下さいよこの状況を、軽く学級崩壊の危機ですよ!」

「今日はこの後、朝礼があるので遅れない様に、それまで全員好きな事してていいぞ、何か質問あるやついるか?」

 無視したあげく、俺の事を見捨てやがった。

「質問です、何で先生になれたんですか?」

「質問がない様なのでホームルームを終了する。俺は立場上手伝えないが、俺の分まで武藤をシバイといてくれ、じゃあよろしく」

 またも俺を無視し、最悪な言葉を残して先生は教室を出て行った。

 何だあいつ、本当に教師か? さてはまた見合いに失敗したな、三十路手前で焦りやがって。

 先生が出て行ったのを確認して勇助が、

「先生には先に事情を説明しといたのさ、さあ、決着をつけようじゃないか」と、主人公面して言ってきた。

 こんな事を担任に説明する生徒も生徒だが、こんなくだらない事を聞かされて、承諾する教師も教師だ。

 仕方がないと、覚悟を決めた俺は、

「こないだ返り討ちにしてやったの忘れたか?」と、挑発的な事を言う。

 負けじと勇助が、

「お前にやられたのなんて、電車に轢かれた様なもんだ!」

「いやそれ、結構な大事故だぞ」

「俺に勝とうと何て百万光年早いわ!」

 負けている分際でドヤ顔で言ってくる勇助。

 ふむ、ここは一つあのドヤ顔をへし折ってやるか。

「なあ、勇助ここで一つ雑学だが、何光年っていうのは時間の単位じゃなくて距離の単位だぞ」

「へ、そうなの?」

 ドヤ顔が羞恥心で染まる。

 やっぱバカだこいつ。

 勝負を察してか、教室が静かになる。

「いくぜ!」

「こい!」

「「最初はグー」」

「「「ジャンケンかよ?」」」

みんながツコッミをいれてくる。

「何だお前ら、男と男の真剣勝負を邪魔するんじゃないよ。何、まさかお前ら俺らが殴り合いとかすると思ってた訳? そんな事したら停学になっちゃうだろうが」

と、呆れて言う俺。

「まったく、最近の若者はすぐ暴力に訴えようとする、それだからキレる十代とか言われちゃうんだよ」

 十代ド真ん中のお前に言われたくないだろうがな。

 全員の冷たい目が痛い。

「じ、じゃあ気を取り戻していくぜ、言っとくが俺はチョキを出すぜ!」

「き、きたねーぞ、心理戦に持ち込むなんて」と、焦る勇助。

「ジャンケン――」と、問答無用に始める俺。

「「ポン」」

 俺がチョキで、勇助がパーである。

「まあ、お前がパー出すのは分かってたんだがな」

 まあ、ある単純な理由で。

「クソ、何で分かったんだ?」

「お前の頭がパーだからだよ」

「なるほどうまいな――じゃねーよ! ひどいなお前!」

 そんなバカな事をやっている内に俺の祭りの件はうやむやになった。

 勇助がバカで助かった。

 これだけ疲れてまだホームルームが終わっただけか。

「はぁー、帰りてぇー」


                   ◆


  ホームルームを無事に終え、朝礼までの時間少し休もうとしている所に、

「朝からバカ騒ぎって、バカなのあんた」

 黒い髪、気の強そうなつり目、黒い瞳、通った鼻筋の整った顔立ちの、愛梨(あいり)が話しかけてきた。

 勇助同様、愛梨も中学からつるんでいる友達で、高校でも俺達三人はよくつるんでいる。

 愛梨は夏休み前はロングへヤーだった髪をショートにしており、雰囲気が変わっていた。

「何だ、失恋でもしたのか?」

 そう茶化す様に俺が聞くと、怒った様に、

「違うわよ! 暑いから切ったのよ!」

 確かにこの時期に長い髪だと暑くて仕方ないだろう。

「ああ、俗に言う夏休みデビューってやつか、大抵は失敗に終わると言うあの」

「何よ! 似合ってないって言うの?」

 いや、似合っているのだがそこは男子高校生、素直に言うのは照れるので、

「六十点!」

「辛口評価?」

 怒る愛利を無視して俺は評価を続ける、

「インパクトが足んないな、やっぱこうキャラを変えたいと思ったら、リーゼントにしたりスキンヘットにしたりしないと」

「あんたは編集者か!」

 しかし、こいつ朝から元気がいいな、何か良い事でもあったのか?

「元気がいいなお前、こっちは夏休み昼夜逆転生活送ってて今しんどいって言うのに」

「何言ってるの、私が本気出したらあと二回変身するわよ」

 フ○ーザ様かよお前は。

「まあ、機嫌がいいのは確かね、ダイエットに成功したから」

 自身満々に言う愛梨だが、それダイエットじゃなくて夏バテのおかげだろ。

「本当か? アイスの食いすぎとかでちゃっかり防御力がアップしてんじゃ――」

 言い終わる前に、愛梨の拳が俺の顔面にヒットした。

「グェ!」

「次、余計な事いったら顔面の原型が変わるぐらい殴るわよ」

 何だ図星じゃねーか! ここ最近アイス食いまくってただろお前――と言いたかったが、愛梨の目がマジだったので言えなかった。

「す、すいません」

「分かればいいわ」

そんなやり取りをしていると後ろから勇助が話しかけてきた。

「おお、なんかあったのか? お、愛梨、髪切った?」

いつも会話がワンテンポ遅れるやつだな。

「そのネタは俺がしたよ。お前も愛梨を見習って髪型変えてみたらどうだ? 今の髪型だとインパクトが足んないぞ」

少しは空気呼んでイメチェンして来いよ……まあ、俺もしてないけど。

「いいだろ別に、今の髪型気に入ってんだから、ってかお前も髪型変わってねーじゃねーかよ!」

「俺はいいんだよ!」

「暴君か?」

 うるさいやつだな、静かにしないと俺のはさみで世界一愉快な髪型にかえてやろうか。

「はぁー、髪型はともかく何で俺モテないいんだろう? こんなイケメンなのに」

 勇助がまた訳のわからん事を言ってきた。

 お前がイケメン? そんな訳ねーだろ、と罵倒してやろうとすると、俺より先に愛梨が、

「鏡って知ってる? 大昔からあって神器とか言われてるんだけど、あんたも鏡見て自分を見つめ直した方がいいわよ」

 愛梨さんパネー。

 流石の俺もそこまで言うつもりはなっかたわ、ほら見てみろ、勇助が涙目になってる。

「チクショウ見てろ、ナンパとかしてすぐに彼女を作ってやるよ!」

「宝くじ買えよ、まだ一等が当たる方が可能性が高い」

 つまり絶対にありえないって事だ。

「そもそもお前には、もう彼女がいるじゃないか――二次元に」

「いや、二次元じゃなくて三次元に彼女が欲しいんだよ!」

「なるほど3Dか、最近のゲームはすごいからな」

 俺がそう言うと、助けを求める様に勇助が、

「うぇ〜ん、助けてしんやモン、どうしたらモテルようになるの?」

「ドラ○もんか俺は! ってか俺が知りたいわ!」

 知ってたら今頃、彼女と夏休みをエンジョイしとるわ。

 仕方がない女性の意見を聞いて見よう。

「なあ愛梨、男と付き合うのにどこを見?」

「顔とお金」

 ずいぶんと現実的な答えが返って来たな。

 それをふまえて改めて勇助を見る。

 顔ダメ、金無し。

「何もないなお前」

「そこを何とか頼むよ、しんやモン」

 馬鹿にしたままじゃ可哀想だからな、少しまじめに考えてやるか。

「そうだな、整形外科に行って顔を変えてもらったり」

「そうゆう事じゃねーよ! もっと実現可能な方法で頼む!」

 注文が多いやつだな。

「じゃあ、お金を払って恋人になってもらえば?」

「そんな偽りの愛はいらねー!」

 何だよ、愛なんて金で買えるだろ。

「じゃあもう、ド○ゴンボールでも集めるしかないんじゃないか?」

「ド○ゴンボールを集めなきゃ俺に彼女はできないのかよ?」

 何かもうめんどくさくなってきた。

「集めても無理だな、神龍も自分の力を超える願いは叶えられないからな」

「俺が彼女を作るのとサ○ヤ人襲来が同じレベルかよ? もういいモテないお前に聞いた俺がバカだった!」

 ほっとけ!

 そんな悲しい会話をしていると愛梨が、

「あんた達、そんな事言ってるからモテないのよ。顔やお金より大事な物があるでしょう?」

 最初に顔や金を言ったのはお前だがな。

「へぇー、何それ?」と、俺が聞くと照れた様に愛梨が、

「え? えーと、あ、愛とか?」

 何で疑問文を疑問文で返すんだ? さては考えてなかっただろ。

「ああ、はいはい、なるほど愛ね、愛。近頃はそんなもん百均で売ってるだろ」

「安? どんだけ大安売りしてるのよ愛!」

 こんなバカな会話をしていると、朝礼の時間になった。

結局全然休めなかった。

 それどころか、疲れた様に感じる。

 俺は疲れた体を引きずりながら、朝礼が行われる校庭に向かった。


                    ◆


 朝礼が終わって教室に戻ると俺は、糸が切れた人形の様に椅子に座りこんだ。

「たっく、何でこの炎天下の中外で朝礼をやるんだよ、しかも三十分も!」

 ゆとり世代舐めんなよ!

 しかも、こんな日に限って雲一つない快晴。太陽も空気呼んで休めよ! 逆に雲は根性だせや!

 俺が愚痴を垂れていると、愛梨と勇助も溜まった鬱憤を晴らす様に話だした。

「本当よね、私達を殺す気なのかと思ったわ」

「校長の話も長えーしよ。それから何で高校生にもなって校歌を歌わなきゃなんねーんだ? 歌詞覚えてねーよ」

 ああ、あったね校長の話、ほとんどが孫の自慢話だったけど。自分の幸せが俺達の幸せだと思うなよ。

 それから校歌斉唱、校歌なんか歌ってみんなが燃えると思ってんのか? 燃えるよ、太陽に熱しられた髪が!

「校歌をアニソンにしよう、そしたらみんな覚えられるし燃えるだろ。初音○クに歌ってもらおうぜ!」

 校歌に対して不満がある勇助がまたバカな事を言い出した、

「そしたらお前は、燃えるんじゃなくて萌えるだろ」

 ああ、そうだ朝礼中気になる事があったんだった。

「なあ、朝礼の最後あたりに喋ってた、爽やか系のイケメンは誰だ?」

 勇助が呆れた様に、

「知らないのか? 三年の小松先輩だよ今年陸上で全国四位だった、有名人だぞ」

「けっ、顔が良くてスポーツ万能かよ、じゃあ、勉強はそれほどでもないんだろうな」

 これで勉強が出来たら神を呪ってやるよ。

「そうでもないわよ、確か学年で七位ぐらいよ、女子の間で噂になったもの」

 と、愛梨が言ってきた。

 神は死んだな。

「顔が良くて、スポーツが出来て、勉強も出来る、なおかつ女の子にモテルって何だそのリア充」

 死ねばいいのに。

「男の嫉妬ほど見っとも無いものはないわね」と、愛梨に言われてしまった。

 そうだな、納得いかんが存在ぐらいは認めてやってもいいかもしれん。

 そう思った時に勇助が余計な情報を持ってきた。

「何でもファンクラブまであるらしいぜ、ほら先輩が出て来た時キャーキャー言ってたやつらがそれだ」

「死ねばいいのに、ぺっ」

 悪口と唾を吐くふりをする俺。

 すまん、一分も我慢出来なかった。

 我慢の限界早いな、俺。

 自分の忍耐力のなさを嘆いていると、

『二年二組 武藤君――二年二組 武藤君 至急校長室まで』と言うアナウンスが入った。

「おいおい、職員室よりワンランク上の校長室に呼び出しなんて、何やらかしたんだ?」と、心配そうに聞いてきた勇助。

「お前と一緒にするなバカ、きっと優等生な俺に賞状でもくれんだろ」

「「それはない」」と愛梨と勇助が即答する。

 うん、確かにないな。

 だとすると悪い事だ、仕方がない寝てて聞いてませんでした大作戦で行こう。

 すると教室の扉が開き先生がやって来て、

「お前の事だ、寝てて聞いてませんとか言うと思って、迎えに来たぞ」

 チッ、読まれてやがる。

「やだな先生、そんな事する訳ないじゃないですか。それより、何で俺が校長室に呼び出されたんですか? 校長室に行くフラグ立てた覚えがないんですけど?」

 不思議だったので聞いてみると、以外な返答が返ってきた。

「それがな、お前が校長の孫娘と遊んでいる所を目撃されたらしい」

 なるほど、こないだ祭りで遊んだ妹の友達の中に校長の孫がいたのか、まさかそこが複線になってようとは、世間は狭いな。

「校長は孫にぞっこんでな、毎朝の提示連絡で必ず自慢してくるほどだ」

 このバカ担任が言うんだ相当なんだろう、ってかこんな事で生徒を校長室に呼び出していいのか? 文部省に駆け込むぞ。

「それで、俺はどうなるんですか? まさか処罰されたりしないでしょうね?」

「それはないな」と、先生が言ってくれた。

 よかった、文部省に駆け込まなくてすむ。

「良くて社会的に抹殺されるか、悪くて実際に殺されるかのどっちかだな」

 文部省どころか、警察に駆け込まなきゃいけなくなった。

「先生ちょっと待ってて下さい。今すぐポリスに電話するんで」

 そんな俺の言葉を無視して、先生は俺を校長室に連れて行った。

 どうやらこの学校には、教師を含めてバカしかいないらしい。


                  ◆


 校長に「次に、孫と一緒にいる所を見たらマジ殺すから」と、脅されながら何とか無事に校長室を後にした。

 何で俺、こんな目に遭ってんだ?

 教室に帰ってからも、「校長室はどうだった?」などの質問攻めにあいながら、何とか帰りのホームルームになった。

 学校が昼までで良かったぜ、こんなのが一日続いてたら身がもたん。

 ホームルームが終わった後に、先生が「真矢、勇助、愛梨、は残る様に」と言ってきた。

 何だ、これ以上俺をどう苦しめようってんだ?

 教室に俺達しかいなくなったのを見計らって先生が、

「実はな、今日から三日後に勇助と愛梨の二人には、補習のテストを受けてもらう」

「「「はぁ」」」

俺達三人は同時に呟いた。

 三日後ってずいぶん急だな、今から準備間に合うのか?

「本当は、夏休みに入る前に伝えなきゃならんかったんだが、忘れてしまった。テヘッ」

 何がテヘッだ、拳骨くれたろか。

 当事者の勇助と愛梨なんか、暴動を起こしそうだ。

「だがな、俺を責めるな、もし責めたら俺たぶん泣くぜ。お前ら三十手前の男が泣くとこなんて、嫌がらせ以外の何物でもないぞ」

 自分で言うなよ先生。

「そうゆう訳でこれから三日間、補習テスト対策を行う。言っとくがもしテストの点数が悪かった場合は、残りの夏休みのほとんどが補習になるぞ」

 なるほどそれで俺達を残らせたのか――あれ、ちょっと待てよ。

「俺、関係ないじゃん!」

 別にそんなに成績悪くないし。

「いい質問だ、真矢」と、先生が言った。

「おめでとう、お前は選ばれたんだ」

「やったー!」

 なんだか知らんが選ばれたので喜んでみる。

「で、何に選ばれたんですか俺?」

「二人の教育係りに」

「それただの罰ゲームじゃねーか!」

 絶対やだ。これ以上俺の大切な時間を削られてたまるか!

「先生、そもそも俺がこの時間活動している事が奇跡なんですよ。それなのに勉強教えるとかマジ無理ですよ。俺を殺す気ですか?」

「いや、もう昼なんだが」

 先生が呆れた様に言ってくる。

「ふん、舐めないで下さいよ。俺は夏休みの間、朝五時に寝て昼三時に起きるという、不規則な生活を送ってました!」

「そんな事を威張るな!」

 まあ確かに、威張る事じゃないな。

「言っとくが、もし二人が補習になったらお前も補習だからな」

「何で!」

「一人だけ楽しい夏休みなんて過ごさせてたまるか!」

「ホント最低だなあんた!」

 結局、テスト対策を手伝わされる事になった。

 何で俺ばっかりこんな目に。

 ここで愛梨が異議を唱えてきた、

「先生、何で私まで補習なんですか? 私それほど悪い点数は取ってませんよ」

「ほう、どの口ががそんな事言うんだ愛梨。真矢ちょっとこっち来て愛利の答案見てみろ」

 先生に呼ばれたので、行って愛梨の答案を見て見る。

 確かに丸が多いな、何でこいつが補習なんだ? と、疑問に思っていると横から先生が「そこの問題を見て見ろ」と言ってきたので見て見ると。

 問・江戸幕府の十代目の将軍の名前を答えろ。

 答えは、徳川家治だが愛梨の回答は、

『ググって下さい』

「………」

 思考が一瞬停止した。

 言い訳をする様に愛梨が、

「だ、だって空欄は埋めた方がいいかなって思って」

 まあ、確かに埋めた方がいいがこれは違うだろ、これならまだ空欄の方がましだ。

 他の分からない問題も今と同じ様な回答がしてある。

「お前は何? テストで点数を取りたいのか、先生にケンカ売りたいのかどっちなの?」

 これじゃあ、補習になっても仕方ないな。自業自得だ。

 一応確認を取っておこうと勇助の回答も見て見たが、見事にバツばかりだった。

「こんな点数でも俺はめげないぜ!」

「いや、めげろよ!」

「男は見栄を張ってなんぼだぜ!」と、かっこいい事を言う勇助。

 いや、赤点取ってるやつが言えた台詞じゃないけどな。

「お前の見栄の張り方は、クレイジーだな」と、呆れて言う俺。

「だいたい、勉強だけで人間決まる訳じゃないしな、勉強できなくて何が悪い」

 おいおい、ついには開き直ってきたか。

「まったくだ、お前が日本語を喋れるだけで奇跡なのに、それ以上望むなんておこがましいにも程がある、頭きた先生に文句言ってやる」と、俺が勇助をバカにすると。

「おお、ありがとう。――あれ、もしかしてバカにされてないか俺?」

 バカにされてる事すら気づいてなかったのかこいつ。

 やばい、こんな事してる暇なんてなかったんだ。なんでだか知らんが俺の夏休みまでかかってるんだ。

 勉強を始め様としていると、愛梨が偉そうに、

「仕方がないから、勉強を教わってあげてもいいわよ」

「さらばツンデレ」

「え? ちょっと待ってよ! マジでやばいのよ、助けなさいよ!」と涙目で言ってくるので助ける事にした。

「その代わり帰りに何か奢れよ、何かを得る為には同等の代価が必要だって、有名な錬金術師だって言ってるんだからな」

「わかったわ、帰りにうまい棒おごってあげるわ」

「安く見られてる俺?」

 十円って安過ぎるだろ!

「バカやってないでそろそろ始めるぞ」と、先生が言ってきたので始める事にした。

「いいかお前ら、補習が嫌ならテストまでの三日間寝ずに勉強するんだ」と、まじめに言う先生。

「そんな事したら死んじゃうじゃない!」

「いいか愛梨、人間長く生きればいいって訳じゃないぞ大切なのはどう生きたかだ。だから先生の夏休みの為に花火の様に美しく咲いて散ってくれ」

 サイテーだなこの教師。完全に私利私欲じゃないか。

「俺はな、去年同様、彼女と言う名のワ○ピースを探しに行かなきゃならないんだよ、お前らみたいなガキにかまってやる時間はないんだよ!」

「で、先生、去年は見つかったんですか?」

「かすりもしなかった」

 流石はひとつなぎの大秘宝、そう簡単には見つからないらしい。

 さて、そろそろ本格的始めるか。時間もないし。

「先生、役割分担しましょう、担当している日本史以外で何か得意科目ありますか?」

「何言ってんだお前、俺が日本史以外教えられる訳ないだろう」

「大丈夫ですよ。どれも中学レベルなんで、英語なんてどうです?」

「俺は中一から鎖国している」

 始まってすぐ駄目になったのかよ!

「じゃあ数学!」

「大人はな、+、−、×、÷、しか使わないんだよ」

算数じゃねーか!

「古典!」

「あれ覚えて何か意味あるのか? いつまでも過去の文字使ってんじゃねーよ」

 古典全否定かよ! 日本史の教師が言っていい言葉じゃないな。

「科学!」

「専門家に任せとけ」

 他人理祈願?

「現代文!」

「漫画とラノベしか読まん」

子供か!

「あんた居る意味ねーじゃねーか!」

「失礼だな、お前らを生暖かい目で見守るぐらいは出来るぞ!」

 せめて暖かい目で見守ってほしい。

「それと、教師みたいに励ましたり出来るぞ!」

「みたいじゃダメなんですよ、教師なんだから、てっかよく教師になれたな」

「親のコネ!」

「職権乱用?」

 だめだろそんな事しちゃ。

「まあ見てろ、コホン、いいか人っていう字はな――」

 ああ、あのお約束の話な。

「一画目の上の方が、絶対楽してるよな。だって後ろに寄りかかってるし」

 あの話はそうゆう話じゃないんだよ! 金○先生に謝ってこい!

「そして俺は一画目みたいに、人に寄りかかって生きていきたい」

 知るかよお前の願望なんか!

 ここで、愛梨が疑問に思っていたらし事を俺に質問してきた。

「勉強教えてくれるって言うけど、真夜って勉強できるの?」

「テストで先生にケンカ売るお前に言われたかねーよ!」

 勇介も、

「ホントだよ、お前って人に勉強教えられる程、頭良かったっけ?」

「赤点まみれのお前がよく言えたな!」

 ここで、先生がフォローを入れてくれた。

「真夜は学年八位だぞ」

 愛梨が驚いて、

「え、ウソ、人を三人は殺してそうな顔してるのに」

「ほっとけ!」

「言いすぎだぞ愛梨、本当でも言っちゃいけない事もあるんだ、せめてヤクザって言ってやれ」

「フォローになってねーよ勇介!」

勉強教えてもらう気あるのかこいつら?

「どうやって勉強してるんだ?」

 勇介が目を輝かせて聞いてきた。

「モチ、一夜ズケですが何か? 勉強何て効率良くやれば、一日で足りるんだよ」

そう言うと、二人揃って、

「「弟子にして下さい!」」

「やでし!」

ふざけてないで、そろそろ勉強しないとまずい。

日本史は「サルでも分かる問題作るから無視しろ」と、先生に言われたので無視する。

大丈夫かな、今どきのサルは頭いいからな、こいつらより頭がいいかもしれん。

などと思いながら、勉強を始めて三分、また勇介がバカな事をいい出した。

「そうだ、テストの時俺以外が不幸な事故にあえば俺が一番だ!」

「お前はクラス全員に何するつもりだ! まだ三分しか経ってないんだから集中しろ!」

十分後、今度は愛梨が、

「そうよ、みんなが私と同じ点数を取ってくれればいいのよ!」

「何だそのエセ人類補完計画は! イ○リ指令が認めても俺は認めねーぞ!」

そんな感じでふざけながら、あっという間に三日が経った。

途中で勇介が勉強のし過ぎで、金魚の様に口をパクパクさせながら気を失ったりするトラブルがあったが何とかのりきった。

 追試の結果が気になる人は続きはWEBで―――ってないんだが。

とにかく、これで残りの夏休は楽しく過ごせそうだ。

                              上条 海輝


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