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逢魔ヶ時 SENSATIONAL  作者: 巡理 圍
帰省。
6/9

初登校。

何故 桜鬼が俺と契約をしたのか...

最近は、そんなことばかり考えている。


俺が祠を壊した罰だと言っていたが、はたして本当にそれだけなのか...裏があるんじゃないか?


疑問が一つ増えれば、その度に悩む時間は増えていく。けれど、俺にはそれが心地良い。


人間や人外の汚い部分を見てきた俺は、無償の何かを求めたりはしない。お互いが利用出来る関係が一番安心できるからだ。


彩花さんは、俺の心の隙間を埋めてくれる。


桜鬼は、力を貸してくれると言った。


それで良い。

裏切られたなら、その時考えれば良い。


ーーーーー

ーーー


この間は本当に散々な目にあった。

今、思えば彩花さんともあれっきり会っていない。

稜線を撫でる様な風が吹く。太陽は燦々と輝き、見下ろした川は光って見えた。


初めての通学路は少し憂鬱で、足取りも遅くなる。


「なぁ、縷々」


「どうした?」


川沿いに舗装された道を歩いていると、桜鬼が話しかけてくる。この時代 和服を着る人は少ない。

故に、言い表せない違和感が心に波打つ。


ーーーそれに、出会ったばかりだしな。


今朝起きたら家に居たので雑談を交えつつ一緒に登校していた。俺以外には見えていない様で、まぁ当たり前なのだが、端から見れば俺は完全に不審者...お巡りさん、俺、怪しい者じゃありません。


「そこの川 河童が居るぞ」


「嘘だろ!?何処だ?」


人外を見る...もとい、常世を覗ける俺でも河童や天狗の類いは見たことがない。

浮遊霊の様な奴や悪霊はよく見ていたが、だから、俺は好奇心に任せてガードレールに手を乗せて、川を舐め回す様に見る。


「あぁ、でも何十年...いや、何百年か前の話しだけどな」


「ふざけんなよ...少し期待したんだぞ」


友達が居ない...もとい、転校して来て間もない俺は一緒に登校する友人など居るはずもなく、こんな無意味な会話をしているだけだが、桜鬼が隣に居てくれて良かったと思う。


それに幾分か気持ちも晴れた。


「此処か?」


校舎を見上げると、げんなりした声で呟く。


「此処だ。私立 神楽坂高校学校な」


「人間の溜まり場なんて何処も変わらないだろ...

俺は行くぞ?」


「あぁ、またな」


校門で桜鬼と別れて、俺は学校へと一歩進める。

無駄に綺麗な校舎は生徒の声で溢れていて、皆 思い思いの誰かと並んで登校している。

そこへ単独で足を踏み入れるのを躊躇ってしまうが、此処まで来たら行くしかない。


ーーー学校休み続ければ奈緒さんが泣きかねないし...


Ⅹ Ⅹ Ⅹ


「ほぅ、それが地毛だと言うのか?」


職員室へ行った俺は、何故か生徒指導室に招かれた。俺の目の前の女性は...荒鷲(あらわし) 詠子(えいこ)先生、俺の担任らしい。


荒鷲先生は、職員室に来た俺の頭髪が気になる様で(転校初日から無断欠席もしたし)生徒指導室で話がある。とかなんとか連れてこられた。


「本気で地毛です。ちなみに、本気と書いて マジと読みます」


「私を舐めてるのか?」


無い胸を張り、頬をピクつかせる荒鷲先生。


俺の髪色は銀だか白だかわからん様な色。

強いて言うなら脱色し過ぎた様になっている、髪は痛んでないが...


なので、髪を脱色していると誤解されることが多い。


「いや...本当に地毛なんですよ」


黒染めすれば終わりの話しなのだが、この髪色とも一五年も付き合ってきた。

少しの愛着は沸く......本音言うと、染めてから毛が生えてくると、鳥肌が立つ程キモい。


見慣れてないのもあると思うが、似合わないのだ。黒髪は...


「いやぁ...まさか、源本以外にも問題児が私のクラスの一員になるとは...

なぁ、憂月。私は腐ったミカンを見捨てたりはしない。だから、話してくれないか?

お前がそうなった理由を」


聖母の様な目で俺を見据え、諭す様に言う。

が、検討違いも甚だしく、先生一人で空回っている様な現状...


ーーー誰か助けてあげて...


トントンと木製のドアをノックする音が不意に響いた。荒鷲は俺に一瞬 目を移すと、入って良い。とドアの向こうに居る人物に言う。


ノックの音で気が付いたが、もうホームルームが始まっている時間だ。おおかた、委員長とかが先生を呼びに来たんだろう。


「失礼します...あの荒鷲先生。

ホームルームが始まっているん...です、が?」


後半の言葉が詰まったのが気になって、首だけを入り口へ向ける。


「あぁ...そうか。此処の生徒だったのか」


俺の目線の先には、黒髪のロングヘアを艶やかに揺らす美少女...もとい、知った顔があった。


「憂月 縷々...か?」


「あぁ」


「趣味は?」


「迷子になってから家に着くまでのタイムを測ること...」


「本物か...」


こんな趣味で本物か確認出来るのか?

そんなことを聞ける様な雰囲気ではないので黙っている。ちなみに荒鷲も黙っている...

役立たずだな、この人。


「この薄情者!!

今さら帰ってきて何のつもり?急に消えた癖に...」

「れ、れい?」


荒鷲が驚いた様に聞く。

彼女の名前は、神凪(かんなぎ) (れい)

そう、奈緒さんの娘で、彩花さんの妹...

家族に似て美形だから、怒った顔が本当に怖い。


「先生、失礼しました。

後、ソイツの髪色でしたら地毛なので。

それでは」


それだけ言って生徒指導室から出ていく。


「お前、玲...神凪と知り合いなのか?」


「今はどうか知りませんけど...昔は友達でした」


俺の声は生徒指導室の中で消える。

一気に空気が変わった室内で、荒鷲が呟いた。


「それより本当に地毛だったんだな」


「気にする所そこっ!?」


俺は学校生活が本気で不安になった。

憂鬱になり、目を窓の外に向けると綺麗な桜が咲いていた。

眠れない日々が続いております、巡理 圍です。


感想、Twitterのフォローお待ちしております。


@ittoot123

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