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第壱話 

シリアスで暗めな話が好きな作者が初めて挑戦するコメディモノです。どうぞ生暖かく見守ってください。

私立の学校には大抵一人はとんでもなくお嬢様だったりお坊っちゃまだったりする。この話はそんなとんでもなくお嬢様なヒロインと特待生で入学した平凡な少年のラブコメに発展するかも知れない物語である。


第壱話

「姫と呼ぶなら考えましょう。」


少年、波多野徹ハタノトオルは目の前にそびえ立つ正門に少し戸惑っていた。真新しい制服に身を包み、彼が立っているのは彼がこの春から通う高校の正門前である。

「これ学校なのか?」

徹は上方を見たままぼんやり突っ立っている。彼が通う事になった高校は私立の中高大エスカレーター式の清蘭学園、お金持ちの子息令嬢が通う学校である。まるで学校とは思えない豪華な外装に徹は少し気後れしていた。徹はこの春、特待生としてこの学園に入学した。エスカレーター式の学校への高校からの入学、そして恐らく自分の暮らしてきたのとは次元の違う世界。徹はため息をついた。徹は早速不安になっていた。

入学式までの時間は徹にとって非常に居心地が悪かった。今年の高校からの入学はクラスには徹だけだったようで皆中等部からの友達とグループになり和気藹々と話していた。徹は周りを見渡す。するとどのグループにも属さず一人で席に着いている少女がいた。同性ではないがこの際あまり贅沢は言えない。徹は話し相手のいないこの状況から脱したかった。

「あ、あのさ。俺誰も知り合いいなくて。良かったら話し相手になってくれないかな?」

徹はその少女の元へいくと恐る恐るそう声をかけた。すると周りの空気が一変した。

「あの人に声かけたぞ。」

「よりによってあの人に?度胸がおありなのね。」

そんな囁きが徹の耳に届く。何かまずい事をしたのではないか。そんな考えが徹の頭を過る。『確か学校にはスクールカーストってのがあるって聞いた事があるぞ。クラスメイトの中で一軍二軍…と分かれていて一軍の機嫌を損なうと大変な目に合うらしい。』『まさか俺やっちゃった?俺の高校生活終わっちゃった?始まったばっかりなのに?』徹の脳内で小さな徹が会議を開いているようなそんな感じがした。立ち尽くす徹の前で少女は椅子に座ったまま体の向きを変え、足を組み直した。そしてクスリと笑う。

「貴方名前は?」

声をかけられ徹はふと我に返る。

「波多野徹です。」

徹は緊張のあまり何故か敬語になってしまった。すると少女はまた笑った。

「貴方面白いわ、私は九條院藍クジョウインラン、そうね…私の事を姫と呼ぶなら考えましょう。」

周囲に再びどよめきが始まる。徹は少し嫌な予感がしていた。いろんな推測予測が脳内を駆けずり回りとある一つの答えに辿り着く。

「もしかして貴女はこの学校の中でもとんでもないお金持ちのご令嬢で誰もが声をおかけするのもおそれ多いと思う程で姫と呼ばせるという事は一般人の俺の事は恐らく下僕扱いに当たるんでしょうかね?」

徹は恐る恐る頭の中で出した結論を口に出す。周囲がしんと静まり返る。徹はまずい事をしたと思い、血の気が引いていく。

「貴方すごいわね。その通りよ。」

藍の方もつられて少ししどろもどろになっている。徹は自分の予想が当たってしまった事と当ててしまった事にショックを受け、迂闊な自分に対し激しく自己嫌悪していた。そこでチャイムがなり皆ぞろぞろと席に着く。担任が教室に入り入学式の段取りを説明している間徹はこの先のあまり雲行きがよろしくない高校生活の事を考えていた。


入学式も終わりホームルームの時間は徹を更に憂鬱にさせた。学級委員を決める際特待生は必ず学級委員長をしなくてはならないと担任に告げられ残りのクラス内の係を決める為担任の代わりに教壇に立たされているのだ。朝の一件から少しクラスには不穏な空気が漂っているように徹は感じていた。恐らく藍に話しかけた事を身の程知らずと思っている者もいるのだろう。クラス全体として徹自身にいい印象がないらしく非協力的でなかなか係が決まらない。担任も少し困っているようだ。

「誰か…いませんか。」

不思議と語尾が小さくなっていく。教室は静まり返り誰も言葉を発しない。そんな時だった。藍がすっと立ち上がり言った。

「私が副委員長になってあげてもいいわ。」

静まり返っていた教室が一気にざわつく。藍は教壇に立つと徹に耳打ちした。

「貴方の為じゃないんだから、このままじゃ会議が進まないから仕方なくなのよ。」

事実藍が仕切るようになり会議は恐ろしい程早く終わった。藍に逆らおうとする者が一人もいないという事もあるが藍は実に上手くクラスメイトをまとめていた。徹はぼんやりとこれが人徳というモノかと考えていた。


「今日は助かりました。」

放課後徹は藍に深々と頭を下げた。藍は一瞬少し照れた表情をしたがすぐに顔を背けた。

「別に、貴方を助けた訳じゃないわ。私が早く帰りたかっただけだし。それに同い年なんだから敬語やめなさいよね。」

藍は今までムッツリしていたのが嘘のように一気に喋った。徹は驚いたのか目をぱちくりさせている。

「明日から貴方は私の下僕なんだからちゃんという事ききなさいよね!」

藍は捨て台詞のようにそう言うと駆け足で黒塗りの送迎車に乗り込み去っていった。徹はため息をつくとのんびりと歩いて正門を出た。


という感じで小まめに連載していこうと思います。どうぞよろしくお願いします。

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