8 再びの旅立ち
村人がざわめく中でハンスが言った。
「おい、物は早ぇって言うぞ、お前のスキルをみんなに見せてやれ」
「と言っても・・・ああ、そうだ、川沿いの大岩に行きましょう、そこで見せます」
メルトはそう言って歩き出し、一人また一人と村人がその背を追った。
川沿いにある大岩まで来るとメルトはベルトからハンマーを取りだしそれを巨大化させた。
それを見た村人は仰天して、また騒ぎが起きたが、メルトが岩に向かって歩き出すと、辺りは静まり返った。
メルトはハンマーをふり上げるとそれを勢いよく大岩に叩きつける。
次の瞬間大岩ははじけ飛びその欠片が方々に散らばった。
村人は全員凍り付いたようになっていたが、ハンスだけは腕組みをしてしきりにうなづいていた。
「これで納得してもらえたかな」
メルトはそう言うとハンマーを元に戻して歩き出し、ベルトに差し込んだ。
村人の塊はメルトが歩いて来るのを見て左右に割れて、メルトはそこをゆっくりと歩みながら言葉を発する。
「俺はこのまま村を出て、一番近い大都市メルボクに向かいます今までお世話になりました」
メルトはそのまま村はずれに向かい、街道までの踏み跡に入って行った。
(村の人たちには悪いけど、時間はすぐに過ぎ去ってしまう、少しでも早く4つの塔を攻略しなくてはならない、まずはパーティーを組んで旅立たなくては・・・)
メルボクは村から駅馬車で5日の所にある工業中心の都市で、冒険者ギルドもある街だ、集まる冒険者のレベルは下の上と言ったところで、冒険に旅立つには最適と言える。
駅馬車を乗り継いでいくと、メルボクに近くなるにつれて人が増え、中には身なりの良い乗客も混じっている。
旅程の中でメルトはずっと考えていた、自分の力を示せばそのアドバンテージを買い、パーティーにいれてもらえるかもしれない、だが、それは自分を利用することを考える輩であって信用出来た物ではない、どうすれば信頼できる仲間を得ることが出来るのか・・・
4つの塔を本気で攻略する気のある者はいるのか、それが重要になってくるのだと考えを進めていた。
あっという間に日時は経過し、大都市メルボクにたどり着いた。
城門が開かれた都市で、門の外にも物売りや武器商人などがあふれ出している。
これは城外であると出店料が破格であることと、街に入る者が一番先に目にするエリアだからである、メルトは中規模な村と、10年間も師匠と2人だけで生活していたことから、この町は大きな驚きがあるとともに、人が多すぎることから信用できないと言った印象が残った。
まずは冒険者ギルドの場所を露天商に聞き、その場所を目指してみたが、路地が多く、似たような出店もあり、何度も道に迷いながら冒険者ギルドにたどり着いた。
ギルドの入り口には月と星が交わった意匠が施されており、頑強な見た目の建物だった。
建物に入ると、ゴロツキと言った方が良いような連中や、若くまだ場離れしてないと言うような空気のパーティーも見て取れた。
「冒険者登録がしたいんだけど」
メルトはカウンターにいる受付嬢に話しかけた。
「はいはい、ジョブは何ですか?」
受付嬢がにこやかに話しかけてくる。
「鍛冶屋、だ」
それを聞くと受付嬢は曇った顔をした。
「生産職の方は冒険者にいちじるしく不向きです、考え直された方が、それに・・・」
「それに誰もパーティーを組んでくれねーからよ!オメェどんな事情で冒険者になろうとしてんだ?」
先ほど見かけたゴロツキ連中が声をかけて来た。
「勇者パーティーだった両親の敵を取るために白亜の塔に」
「・・・気の毒したな、だがよ、誰もうまく行く事ばっかじゃねぇんだよ、それに白亜の塔に行こうと言う奴なんて誰もいねぇぜ、あきらめて本来の鍛冶屋をしな」
ゴロツキ連中は意外と話の分かる連中のようだったが、彼の言うように白亜の塔に挑む鍛冶屋をパーティーにいれる連中はいないだろうと言うことが分かった。




