6 フォレストウルフ
メルトが駅馬車で故郷に帰ろうとしていた矢先、フォレストウルフの群れが行く手を遮った。
彼は腰のマジックハンマーを手に取り手の中で回転させながら、魔物の群れに向かって歩いて行く。
「アイツ・・・あんな小さなハンマーだけで何をする気だ・・・」
御者の男は訳が分からず冷や汗をかいている。
メルトがハンマーを回転させるのを止めたと同時にそれは巨大なハンマーへと変化した。
「ハンマーがデカくなった!?・・・ハンマーもそうだがどうしてあんな大きなものを片手で持てるんだアイツ・・・」
フォレストウルフの方も異変を感じ取り距離を詰めるのをやめて、低い姿勢でメルトの様子を見ている。
彼がハンマーを高く掲げるとフォレストウルフはびくりと身体をこわばらせた。
「クエイク!!」
メルトがそう叫び、ハンマーが地面に叩きつけられると矢のような勢いで地割れが走りフォレストウルフの群れは土砂とともにそれに飲み込まれたかと思うと、地面はまた同じようにビシビシと音を立てて閉じていった。
「ふぅ、実戦でも使えるな、群れになっているなんて全員飲み込んでくれと言っているようなものだ」
メルトはハンマーを元の大きさに戻して、ベルトに差し込んだ。
「おいおいおい!!お前さん魔物を一瞬で全滅させたのか!?何だありゃ」
メルトが馬車に戻ると御者の男がまくし立てるように話しかけて来た。
田舎道を進む駅馬車の中で御者の男はメルトの話を聞いていた。
「ふーーーん・・・にわかには信じられないが実際目にしたもんなぁ、レベル99の鍛冶屋・・・ははっ!!面白れぇなぁ!!」
「自分でも信じられなかったよ、鍛冶屋のスキルに戦闘向けのモノがあったなんてね」
メルトは遠い目をして語っている。
しばらく進むと、駅馬車を乗り換えることになったので、御者の男と別れることになった。
「気ぃ付けてな、と、お前さんに言うこっちゃねぇな」
「いや、家に帰るまでは気を抜けないよ」
「しかし本当に礼金はいらないのかい?フォレストウルフの群れから命を救ってもらったのによ」
「俺が小さい時に助けてもらっただろう?借りを返したまでだよ」
「ヘッ、義理堅いねぇ・・・じゃあな!あばよ!」
駅馬車は別の方向へ向かって行った。
メルトはそこから歩いて進み、駅馬車が通りかかればそれに乗ると言う旅路を繰り返し、ようやくポルガ村にたどり着いた。
「ポルガ村・・・こんなに狭かったか?ああそうか、俺が大きくなっているけれど、村の記憶は大きいままなんだ」
メルトはぶつぶつと何かこぼしながら村に入って行った」
しばらくすると井戸で水くみをしている女性の姿が目に入った。
「サ、サラ姉ちゃん!!」
サラと呼ばれた女性はビクリとしてメルトの方を見やった。
「ど、どなたですか?私は確かにサラですが、ごめんなさいあなたのことは記憶にないわ」
「俺だよ!メルトだよ!鍛冶屋の修行から戻ったんだよ!!」
「メルト!?確かに面影があるわ、アンタ死んだんじゃないかって言われているんだよ!!便りの1つも寄越さないで!!」
サラはメルトのそばまで近寄って来ると涙ぐむような表情を見せた。
「サラ姉ちゃん、バァちゃんは元気なのかい?」
メルトは自分を育ててくれた祖母のことを口に出した。
それを聞いたサラはハッとした顔になり、下を向いた後で言った。
「あんたのばぁちゃんはね、2年前に亡くなったよ、アンタの両親の隣に埋葬されている、まず墓地に行って全員に挨拶をしといでよ」
「バァちゃんが・・・そうか・・・」
メルトはそうつぶやくとガクリと肩を落とした。




