3 名工ブンドル
メルトはブンドルの家だと言われた家屋に向かって歩いていた。
次第に鉄を打つ高い音が聞こえてきて、近づくにつれてそれは大きな音となってメルトの耳に突き刺さって来た。
家に到着すると、そこは遠くから見ていたよりも古びたもので、家主が生活に頓着が無い者だとメルトにも理解できた。
音がする方向へ向かうと、一層大きな鉄を打つ音が響き、物置小屋のような場所に入ると、筋骨隆々で白髪交じりの男の後ろ姿が見えた。
音のせいなのか男はメルトに気付かず作業を続けている。
しばらく待っていると男は真っ赤に色付いた金属を水桶に浸す、そうすると水蒸気が上がるとともに、水がはじける音が辺りにひびいた。
「何の用だ?納品はまだ先のはずだぞ?」
彼は振り向きもせず剣の形をした黒い金属を持ち上げてまじまじと眺めていた。
「ブンドルさんに、で、弟子入りをお願いしに来ました!!」
メルトの声を聞くとようやく男は振り向き言葉を発した。
「なんだ、ガキじゃねぇか、こんなところまで来たのか、悪いがもう弟子は取っておらんよ」
「しょ、紹介状があるんです、ポルガ村のハンスさんからの!!」
メルトはポケットからくしゃくしゃになった封筒を取りだした。
「ポルガ・・・ハンス・・・思い出した、出来の悪い弟子でな、まぁそれでもワシの元におったからそれなりにはなっていたな」
ブンドルは封筒を乱暴に扱い、便箋を広げると内容に目を通しているようだった。
「・・・まさか、ギフト持ちだと、このガキがか?」
ブンドルは目を細めてメルトの顔を見つめた。
「確かに額にひし形の意匠が付いておる、まさかワシの所にギフト持ちが来るとはな・・・よし、弟子入りさせてやる、だが、ワシの言うことに従ってもらうぞ」
「はい!でも、そのひし形のとかギフトだとか言うのは何ですか?」
「それも知らされておらんのか・・・ハンスの奴適当なことをしおって、いいか?ギフトは何万人かそれ以上の中から一人だけ出現する、ジョブに選ばれ常人離れした適性を持つ人間のことじゃ、同じジョブの人間にはその者の額にひし形の意匠が浮かんで見えると言う・・・なかば伝説のようなものじゃ」
メルトは良くわからないと言う表情でブンドルを見つめている。
「まずは基本だ、絶対にどんなことがあっても覚えたスキルを使うな、修行はスキル無しで行うぞ」
「スキル・・・良くわかりません」
「ふん、そうか、その方がむしろやりやすいってモンだな、ワシはさっき剣を打っていたが-刀剣特化-のスキルを身に着けているので工程が早い、次に-超硬化-を使っていた、これで剣の耐久力を上げている」
「ただ鉄を打っていたのではないんですね?」
「そうだ、さらにスキルを取得すると別のスキルが使えるようになる、その時どんなスキルを選ぶかで、その先取得できるスキルと、全く取得できなくなるスキルに分かれている」
「わかりました、修行をよろしくお願いします」
「うむ、ギフト持ちのことは手探りだが、大体見当はついた、明日から修業じゃ、まぁまず夕飯じゃ、飯じゃ飯じゃ」
ブンドルはそう言ってメルトの肩を叩きながら母屋に向かって歩き出した。




