33 高い塔
村を出て始まりの町ベカンへと馬車は進んで行く。
半日過ぎると始まりの塔らしきものが見えてきた。
「高いな・・・あんな高い建造物は見たことが無い」
メルトがそう言うとリリーンがそれに答えた。
「奇妙な塔だと言う噂を聞くわ、中にはただ頂点に続くだけの階段があり、一番上の階には広いフロアや見たことも無いようなものが広がっているそうよ」
「魔物も出ないんだっけか?」
「そう、本当に何もないそうよ」
夕暮れ時にベカンの町に着いたが比較的大きな町で活気もあった。
「ようこそ始まりの町ベカンへ・・・塔が観光資源になっているんですね、なんだか妙な感じがします」
セルフィンが塔を見上げてつぶやいた。
「冒険者なら始まりの塔へ行け、何て標語めいた言葉があるけど、客寄せのためにベカンの町が売り出した言葉で、それが当たって賑わっていると言う話だよ、商売上手だねぇ」
ミーシャは頭の後ろで腕を組みながら塔を見上げている。
「さて塔に登るのは明日にして今日は宿を取るわよ」
リリーンの言葉で、皆町中に歩いて行った。
宿は酒場を兼用しており、明日への英気を養うためと言いつつ、メルト達はエールをあおっている。
「塔はどのくらい登れば頂点に着くんだ?」
「おおよそ20分くらいと聞いてるわ」
メルトはリリーンに話しかける。
「げぇ・・・後衛職にはキツイよぉ、遠くから見ていた時からあれを登るのかーええーって思っていたもん」
「そうですね、まぁ休み休み行くとしましょう」
ミーシャとセルフィンは渋い顔でパンをかじっている。
翌日、メルト達は始まりの塔の前に立っていた。
「これが始まりの塔・・・」
「想像していたよりも大きいですね」
「これは登るのが大変だよー」
他の三人は塔を見上げていたがメルトだけは塔の壁面を眺めて何事かつぶやいていた。
「石やモルタルじゃない・・・金属でできている、そんな建物は観たことが無い・・・ふん・・・成分分析!!」
メルトは金属の成分を鑑定するスキルを使用した。
「超超超複合チタニウム・・・やはり聞いたことも無い素材だ」
メルト壁面を触っていると、他の者が声をかけてきた。
「メルト、何をやっているの?」
「ん?うん、塔の構造材を調べてみたんだがまるで聞いたことも無いような素材だったよ、見てみろ、変色も錆びも一切浮いていないしへこみや亀裂も見られない」
「そう言われればそうね、始まりの塔だから何か特別なのかしら」
リリーンは塔の壁面を見つめながらつぶやいた。
しばらくして一行は塔の中に入りつづら折りの階段を登って行った。
「はーはー・・・疲れた・・・」
階段を登るのにミーシャが根を上げだした。
「何言ってるのよ、少しも登ってないじゃない」
「だけど、普段運動してないから前衛職のリリーンとは違うよ。
リリーンの声にミーシャは重い脚を上げて階段を登っている。
「もうしばらくしたら休憩しよう、休み休み行かないと塔の天頂に何があるかわからないから体力を温存しておいた方が良い」
「私もそう思います・・・ハァハァ」
メルトの提案にセルフィンが賛同しそのようにして小刻みに天頂を目指すことになった。
「それにしても階段だけで部屋も何もありませんね・・・」
「噂通りだけどなんだか不気味だねー」
セルフィンとミーシャは階段の踊り場で休みながら言い、しばらくしてまた登りだした。
「うん?階段が途切れている、天頂にたどり着いたと言うことかな」
メルトがそう言うと、広いフロアにたどり着いた。
薄暗い中に椅子とパネルのようなものがそこかしこに広がっており、そこが何のための場所なのかまるで分らなかった。
フロアに入って行くと天井から声が響いた。
「レベル99に到達した者を確認、コード2、3」
その声をきっかけにフロア内が明るく照らし出された。
超超超複合チタニウムですが。
第二次大戦中に軍の要請で日本において開発された超々ジュラルミンが元ネタです。
零戦に使用され、現在でも主に航空機分野で多く使用される優秀な素材です。




