31 鍛冶のスキル
メルト達一行はベカンの町へ向けて駅馬車を乗り継いでいた。
途中にある村や小規模な町に宿を取り順調に旅を進める。
「私はこんなに遠出したのは初めてです、馬車に乗りすぎでお尻が痛くなってきました」
「それよねー、だから今日はもう早めに宿を取りましょう」
セルフィンとミーシャは顔をしかめている。
「ねぇ、メルトはどのくらい旅をしたことがあるの?」
「俺は・・・1週間と言うところだ、師匠が山奥に住んでいたからな」
「へぇ、それは大変ね」
リリーンがメルトに話しかけている。
「それで平気そうな顔をしているんですね」
「いや、普通に尻は痛いが我慢しているだけだよ」
セルフィンがメルトに話しかけると、彼は渋い顔をした。
「あはははははは」
ミーシャのツボに入ったようで彼女は声をあげて笑っている。
「もう、ミーシャ、メルトに悪いじゃない、ともかく次の村で下車して宿を取りましょう」
しばらくすると中規模な村が見えてきたので4人は馬車から降りて村の中に入った。
「いい村だな・・・麦が元気よく育っているし、老人も元気よく作業している」
メルトはどこか懐かしむような表情をしている。
食事つきの宿を取ると、村を散策してまわる、よそから人が来るのは良くあることのようで、メルト達が珍しがられるようなことは無かった。
「おれはちょっと別行動をする、日暮れごろに宿に戻ればいいだろう?」
メルトがそう言うと全員が不思議そうな顔をしたが、かまわない旨をメルトに伝えた。
メルトは何とはなしに村を歩いているがどこか遠い目をしている。
(村を無理やり出てきてしまった形になったけど、皆元気に過ごしているだろうか、あそこにいる老人は死んだバァちゃんにどことなく似ている・・・ここは俺の故郷に似ているな)
メルトはそのようなことを考えながら老婆を見つめていたが、彼女は運んでいた鍋を物置小屋に運び入れている様子だった。
その様子を見ていたメルトは老婆に近寄り話しかけた。
「バァちゃん、さっきの鍋はどうするんだ」
「あら、旅の人かね、なぁも穴さ開いてん使えんようになったから置いてきたんよ」
「鍛冶屋はいないのか?」
「ああ、ずいぶん前に死んでもうて、たまに町から来る鍛冶屋に直してもらうように小屋にためているのさ」
メルトが小屋を見ると色々な金物がそこらに打ち捨てられ、錆が浮いてむくろめいた様子に見て取れた。
「俺が全部直してやる、鍋でも包丁でも修理したい金物は何でも持って来てくれ」
「あれま、あんたさんは鍛冶のスキル持ちなんかえ」
「そうだ、だけどタダで仕事はしないよ町から来ている鍛冶屋はいくらで仕事しているんだい」
「3000だよ」
老婆はそう言って指を三本に伸ばしてメルトに見せつけた。
「3000!?そりゃ暴利だ!!出張費を込めても1500がせいぜいだよ!!」
メルトはそう言って腰からハンマーを取りだして老婆に言った」
「何もない村ねぇ」
「農村はどこもこの程度かと思いますが・・・ですがあの小屋辺りは人が集まってザワついていますね」
「行ってみよーよ!」
リリーンの言葉にセルフィンが答えて、ミーシャは人だかりを見に行こうと提案した。




