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1 ジョブ鑑定の日

両親を失ってから2年、メルトは祖母と2人でつつましく暮らしていた。


彼はずっと待ち続けた日があった、それは「ジョブ鑑定の日」である。




この世界では児童が7歳を迎えた春に、自身のジョブ(職業)の鑑定を受け、その結果に沿う道に進むのだった。


メルトの父は「勇者」の鑑定を受けて修行に励み、魔物を生み出し人間の生活を脅かす6つある塔の1つ、白亜の塔に挑んで死亡したのだった。




町の易者が広場に机と椅子を設えて、児童のジョブ鑑定をする準備を整えていた。


「易者」もジョブの1つであり、ジョブ鑑定だけではなく、占いや気候の変動を予知するスキルを持っている。




易者が次々とジョブ鑑定を進める中で、メルトは心の内にある大きな目的を何度も反芻していた。


(お父さんが優者ならぼくもそうなるはずだ・・・勇者になって、修行して、絶対に両親の敵を討つ!!)




やがてメルトのジョブ鑑定の時が来た。


(絶対に勇者だ!!お父さんを継ぐんだ!!)




だが、メルトのその思いはむなしく消えることとなる。




「メルト!鍛冶屋!!」




メルトは何のことかわからなかった。


(鍛冶屋?あの鉄を叩く鍛冶屋なのか?え?勇者じゃないのか)




「易者のばぁちゃん!もう一度占ってよ!!お父さんは勇者のジョブだった!!俺も勇者なんじゃないのか!?」


「残念じゃが親のジョブを引き継がないと言うことは良くあることなんじゃ、そこの子はパン屋のせがれじゃが剣士のジョブを得ておる残念だが現実を受け入れるのじゃ」




そう言われてメルトはふらふらと脇にどいてぼんやりと地面を見つめている。




「勇者の子が鍛冶屋とは」


「あのこ普段から勇者になるって言ってたから・・・気の毒ね」


「何言うんだ、鍛冶屋は立派な仕事だぞ」




周囲の村人は皆手前勝手なことを言い、メルトを気の毒そうな目で見ており、子供たちまでもヒソヒソと何か話している様子だった。




メルトはそのまま祖母の待つ家に帰り、キッチンのそばにある椅子に座り込んだ。




「おお、メルトや、ジョブ鑑定はどうだったんだい」


祖母が何気ない様子でたずねてくる。




「鍛冶屋・・・鍛冶屋だったよ・・・」


メルトは泣きながら祖母に告げた。




「メルトや、ばぁちゃんはあんたのジョブが勇者じゃなくて良かったと思っている、お父さんもお母さんも魔物に挑んで若くして死んだ、ばぁちゃんはあんたにそうなって欲しくなかった」




「でも・・・でも・・・敵を取りたかった、戦いたかった」


「鍛冶屋、立派な仕事だよ、ハンスさんはずっと鍛冶屋の仕事をやっている、あの人がいないと皆困っちまうだろう」


「う・・・うん・・・」


「明日にでもハンスさんの所に相談に行こうかね」




メルトは目頭をこすりながら床を見つめていた。




翌日、祖母と一緒に鍛冶屋のハンスの作業場を訪ねた。




金物を叩く音が鳴り響く中では、ハンスに声をかけるのに勇気がいった。




「ハンスさん!!ハンスさん!!」


鳴り響く音に負けないような大きな声を出したメルトにようやくハンスが視線を向けた。




「よぉメルト、ジョブは鍛冶屋だったってな、それでオレの所に弟子入りに来たんだろう?」


「・・・はい、そうです」


メルトの声は消え入りそうだ。




「鍛冶屋はいいぞ!!、鉄の塊を道具に出来る!勇者の剣だって作れるようになる!!そうだろう?」




ハンスはメルトが勇者のジョブにならなかったことに気を使っているようだ。




「ほ、俺に弟子が出来るとはね、さて一応確認しとくか」


ハンスは目を細めてメルトの顔を見た。




「これは・・・弟子入りの件はやめだ、お前は俺の師匠に弟子入りさせる、すぐ紹介状を書いてやる」




そう言ってハンスは作業場から出てしばらくすると、封筒を手にして戻って来た。




「アルシア山の麓にブンドルと言う鍛冶屋がいる、明日にでも路線馬車に乗って向かえ」




メルトはハンスの作業場をなかば追い出されるような形で家に帰ることになった。



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