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12 リハビリ

メルトは自分が両親のかたき討ちを胸に冒険者になったことをリリーンに明かした。


「・・・でも、あなたの作った強い武器を持った誰かが、白亜の塔を攻略すると考えることもできるわ」

「そうだ、鍛冶屋の修行中は自分の生み出した武器によってどこかの勇者がボスを倒すことになればとそれだけを思って鉄を打っていたよ、だが、今の自分には白亜の塔を攻略できるかもしれない、だとしたら、だとしたらそれは誰にも譲れないことなんだ」


リリーンはメルトの鬼気迫る表情に、それ以上何も言えなくなってしまった。


それから一週間経過するとセルフィンは松葉杖を使って北門周辺を歩き回ってリハビリに励むようになっていった。

リリーンは日がな一日腕のリハビリをして義手を急速に馴染ませていく。


ある日セルフィンが帰宅すると見知らぬ男性を伴っていた。


「どなたですか?」

リリーンが対応する。


「この娘に聞いたんだ、えらく腕のいい鍛冶のジョブ持ちがいて歩けるようになる義足を作ってくれるって」

「いえ、あの、確かに私の脚は動かせる義足ですが、彼が作ってくれるかどうかは・・・」


「彼?鍛冶屋のことかい?」

「はい、あのメルトさんがそうです」


セルフィンは椅子に腰かけているメルトを手でさし示した。


「アンタが動く義手を作れる鍛冶屋かい?俺の息子は冒険者をやっていたんだが利き手を斬られてしまってな、どうにか動く義手を作っちゃぁくれないか?」


それを聞いたメルトは黙ったままその男を見つめている。

「アンタの家業は何なんだい?」

「へ?ウチは食堂をやっているが・・・」


「だったら片手でも食堂の補佐くらいは出来るだろう」

「なっ、確かにそうだが・・・冒険者家業に戻ることをかなえてやりたいのが父親ってもんだろう?」


「アンタの事情は関係ない、与えられたもので何とかするんだな、どうしても義手が欲しいなら1億ゴールド持ってきたら作ってやる」

「いっ、一億・・・そんな金払えるはずがねぇ、だいいちこの娘は良くてウチの息子が駄目なのはどういう了見だ!!?」


男は怒鳴り声を上げてメルトに迫っている。


「ここにいる者は俺の目的を補佐してもらうために義手や義足を設えた、いいかいオジさん?誰もが善人じゃぁ無いんだ、俺は自分が良いと判断したことにだけ自分のスキルを使う、もう帰ってくれ」


男は怖い顔をして激しくドアを叩きつけて出て行った。


「メルト、なぜ断ったんだ?お前のスキルを見る限り義手や義足をつくるのはそれほど難しくないだろう?」


リリーンがメルトに話しかける。


「10年・・・寝食を忘れて10年間ずっと鍛冶屋の修行をやって来た、取りつかれたようにだ、難しくないスキルに10年かかって到達したんだよ、おいそれとくっ付けるだの動かすだの出来て良い時間じゃぁ無いんだ」


「・・・そうか、すまなかった、そうだな・・・」


リリーンは少し悲し気に言葉を発した。


「鍛冶屋ってのは裏方の存在なんだ、村にいたハンスさんは村人のために働いていた、村では持ちつ持たれつだからな偉い人だよ、だがこの町にはたくさんの鍛冶屋がいて、多くの人が軽んじている、そこに都合の良いスキルを持った鍛冶屋が現れたら途端に泣きついて来る、そんな都合のいい話があるか?」


メルトがそう語ると全員押し黙ってしまった。


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