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あなたは異世界へと人々を転生させる神に選ばれました。  作者: リリー
至福のデザート

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打開の呪文、オープン・セサミ

「暑い。」


 照りつける陽光。灼熱の業火と言っても過言ではない。バトランは日傘を差している。ザッ、ザッと砂を踏む音以外は無音の砂漠を歩き続ける。じぃっと彼女を見つめる。


「・・・そんなに見つめられても。この日傘は私のですよ。今回はちゃんと準備する時間があったんですから。失念する方が悪いのですよ。」


「メイドは主人が日焼けするのを黙ってみているの!?」


「神は日焼けしませんよ。」


「えっ!?そうなの!?」


「たぶん。50パーセントくらいのたぶんです。Maybeくらいのたぶんです。あとメイドじゃないです。」


「50パーのたぶん!?そんなコインの表裏くらいの確率でこんがり女神が誕生してしまうの!?」


「はあ。なんでこんな服を砂漠で着なければならないんですかね。クラシカルメイドは暑過ぎますって。まだ前のコスプレレベルのやつの方が。砂漠に黒の服は流石に堪えます。リインはワンピースを着ているんだから大丈夫でしょう?」


 ロングスカートの長さを私に訴えるために、少しだけバトランはスカートを掴み、上に引っ張った。


「カナイがいってたじゃん。メイド服は様々な時代に対応しているからバトランは着ていた方がいいって。昔の小説家も自分の小説にメイドの服は可愛いって書いてるらしいよ。今も受け入れられているし。メイドって歴史あるんだね。これが伝統的な服ってことなんだね。」


「昔?今?どこの世界のどこの時間軸ですか。たまに変なこと言いますよね、リインは。」


「バトランもMaybeってどこの言葉よ、それ。コスプレ?なにそれ。普通に言葉として使ってるけど。ああ、わかった。たぶん私達は今。」


「・・・灼熱の太陽にやられてる、ということでしょうか。」


 上を見ると空は快晴。眩しいので視点を戻す。景色は変わらない。音も変わらない。ただ、砂漠を踏んでいる。ザッ、ザッという音だけが続く。


 神様は疲弊するか?します。ほら。もう疲れた。変化のない現状に嫌気が差す。歩きたくないが、歩かなければ変わる期待すら失ってしまう。だから歩く。


 ザッ、ザッ、ザッ、ザッ、ザッ、ザッ。ザッ、ザッ、ザッ、ザッ、ザッ、ザッ。ザッ、ザッ、ザッ、ザッ、ザッ、ザッ。ザッ、ザッ、ザッ、ザッ、ザッ、ザッ。


 ・・・耐え難い。


「ねえ、バトラン。暇。暇暇暇。暇っ!おかしくなりそうっ!いや、なってる!ひーまーっ!!」


「そうですか。落ち着いて下さい。辿り着くまで物語でも話しましょうか。千夜にわたって。アラビアンナイトのシェヘラザードのように。シャフリヤール様。」


「いや、いいや。遠慮しとく。誰が残忍な王じゃ。」


 ザッ、ザッ、ザッ、ザッ、ザッ、ザッ。ザッ、ザッ、ザッ、ザッ、ザッ、ザッ。ザッ、ザッ、ザッ、ザッ、ザッ、ザッ。ザッ、ザッ、ザッ、ザッ、ザッ、ザッ。地面を踏む。


「景色、変わらないね。」


「いや、見違えるほど変わりましたよ。ほら。サボテンがあります。」


 ザッ、ザッ、ザッ、ザッ、ザッ、ザッ。ザッ、ザッ、ザッ、ザッ、ザッ、ザッ。ザッ、ザッ、ザッ、ザッ、ザッ、ザッ。ザッ、ザッ、ザッ、ザッ、ザッ、ザッ。歩く。


「ねえ、バトラン。・・・しりとりしようか。」


「何ですか、それ。」


「知らない?単語を言って、その単語の最後の文字から始まる言葉を交互に言うの。『ん』がつく言葉で終わってしまうか、続きを言えなくなったら負け。りんごから始まったら、ゴリラ、ラッパみたいに。」


「へえ。面白そうですね。語彙力の勝負ですね。」


「そんなとこ。じゃあ、スタート。りんご。」


「ゴfaたdgpAな。」


「なにそれ。」

「異世界の言葉で日傘です。」


「ふーん。なわとび。」


「び、ですか。び、び。び#2jmwxに。」


「なにそれ。」

「異世界の言葉で砂漠です。」


「・・・やめよう。ムカつく。」


 私達は今、果てしない『び#2jmwxに』を歩いている。暑い。暑すぎる。日焼け対策に、ここにくる時は必ず『ゴfaたdgpAな』を持ってくることが大切だ。


 ザッ、ザッ、ザッ、ザッ、ザッ、ザッ。ザッ、ザッ、ザッ、ザッ、ザッ、ザッ。ザッ、ザッ、ザッ、ザッ、ザッ、ザッ。ザッ、ザッ、ザッ、ザッ、ザッ、ザッ。


「リイン。」

「なに?どうしたの?」


「さっきのは嘘です。私の知る限りそんな言葉は存在しません。」


 バトランがぼそっと呟いた。思い付きの気分転換は疲労感が増しただけだった。未だに物語と私達は砂漠から動かない。

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