そうだった。
「置いていかれた?いや、その。信じて貰えないだろうけど。さっき私はこの学校で目覚めたんだけど。何も知らないんだ。」
信じてくれる筈がない。怪しすぎる。急に現れて、記憶がないみたいなことを言うやつを信じれるだろうか。でも、そう言うしかない。
「そうなの。じゃ、教えてあげる。ついてきて。杏次、今日のご飯は一人追加で。当番でしょ。」
「うん!わかった!」
少年は杏次っていうんだな。杏次が任せろと頷く。二人はここで暮らしている。家はないのだろう。事情がある。それに、物騒な刀の件も知りたい。それらよりも気になるのは、こんな私を信じてくれる理由。
「ねえ、なんで信じてくれるの?」
「仮に嘘でも困らないじゃない。」
凛音は私みたいな考え方をする。いや、当然思ったよ?この娘が私の前世なんじゃないかって。確証はないし、そんなことを聞いても分からない。何言っているんだってなる。
凛音と体育館の外へと歩いていく。場所を変えたかったのだろう。
「ちょっと待って。裸足?痛くない?」
私が入ってきた体育館の扉を閉めながら、凛音が私の足を見て言った。
「ああ、靴、無くて。」
「じゃあこの辺でいいや。他には誰もいないだろうし。」
凛音が座る。彼女に手で促されて、私も座る。
「リイン。当ててあげようか。記憶が無いのは本当。でも、そんなに表情に悲壮感がない。ってことは、以前は恵まれた環境にいたってこと。」
鋭い推察だ。
「うん。間違ってないんじゃないかな。ここは学校だよね。いつからここに?」
「二年前かな。知らないと思うから、先に言っておくね。10。」
「何の数字?」
「地球・・・いや。世界規模だと分からないけど。この国に私が知る限り、存在する人間の数。」
「そんな。10人!?他は!?」
「他の惑星に行った人と死んだ人。隕石ってわかる?あ、記憶はないけど知識はあるのか。あれ、地球外知的生命体が意図的に降らすことが出来るんだって。で、宇宙センターが受信したメッセージがあって。『1,000日以内に隕石を降らすから出ていけ』って。」
「それで。降ってきたんだ。」
「そう。でも、奇跡が起こってね。この地域の一部分だけ隕石が当たらなかった。」
「・・・学校。」
「そう。それもその日、この学校は休みだった。ここは、へんな学校で。あまり知られていないどこかの国の神様を信仰していた。その神様の教えで、家に居場所のない生徒のために、休みの日も一部の教室を開放しているの。ここの生徒しか知らない秘密。」
どこに行っても神か。神、神、神、神。私の前世の世界ですら、登場してくる。凛音が私の前世だとしたら、この少女は何をして私に生まれ変わったのだろうか。ロップのときとは少し違う。でも、このままじゃ、一緒になる。生き残った最後の一人が居なくなって世界は消滅する。
「・・・さて。本題に入ろうか。リイン。ここで暮らすなら、しなければならないこと。食糧調達。私達は一日のほとんどの時間を食糧調達に使う。植物の種を埋めたって、今日のみんなのお腹は膨れない。それくらいの状況。だから、毎日食べられるものを探すしかない。明日からはリインも。」
「んー、と。その問題は何とかなるかも。ええと、私、そういうの見つけるの上手いから。ほら。みんなで食べて。」
なんか出ろ。そう念じて私はスカートのポケットからブロック型のビスケットを10個取り出した。ポケットは期待通りの働きをした。ありがとう、バトラン。
「え、そんなに持ち歩いてたの?あ、ありがとう。」
驚いた顔で凛音は私にお礼をいった。
「凛音。教えて欲しいんだけど。この国の名前って。」
「それすらも忘れちゃったの?大変だ。『ジパ』だよ。」
「・・・ああ。そうだった。そんな気がしてたんだ。」




