約束、再会
別れの時はやってきた。世界樹の木の下でロップと最後に言葉を交わす。
「じゃあね、リイン。バトラン。」
「はい。ロップ様もお元気で。」
「じゃあね。ロップ。」
わざわざ歩く意味はないけれど、お互いの気持ちを察して、私とバトランはロップに背を向けて歩き出した。健気に私達を送りだすロップをみると、早く私は逃げ出したくなった。
時間を延ばすことと何もしないで終わりを待つこと。それはつまり、何かをする加害と何もしない加害だ。いずれにせよ私は加害者だ。ロップにとって、その選択を迫ることが希望となるのか、絶望となるのかが分からない。
スノードロップを世界樹に突き刺させば、この世界は延命する。必要ならば、剣をロップにあげてもいいくらいだ。そうすれば世界の寿命の伸長は担保されるんだから。
でも、私は心の安寧を選び、ついにはロップに言い出せなかった。光が私とバトランを包む。ゲートが開いた。ゲートに入ればこの世界とも別れを告げる。近い未来に、この世界も終わりを迎える。終焉によってロップの存在も消失する。
「待って!」
後ろからロップの声がした。追いかけてきたんだ。振り返ることが出来ない。
「ロップ。ばいばい。私、何も出来なくて・・・。」
「リイン!ありがとうね!本当に君達に出会えて良かった!楽しかった!ラーメン?だっけ?美味しかったよ!」
私の謝罪を掻き消すくらいにロップが大きな声を出した。
「私の使命は!この世界を見届けることだけどっ!それだけだったら、こんなに笑えなかった!それだけだったら!つまらなかった!君達は私にくれたんだ!ええと!生きてて良かったって!私は!本当に!感謝してるっ!使命を全うしたらっ!また会おうねっ!使命だけの人生を!変えてくれてっ!ありがとう!」
使命だけの人生を変えてくれて、ありがとう。ロップは、私の心残りを浄化する一言をくれた。
ロップが言ったことが本心なのかは分からない。ロップだけが知っている。理解してくれてありがとう。彼女が昨日、私に言った言葉だ。私も言いたくなった。
「ロップ!」
私は彼女の名前を言いながら、声のする方を振り返って。
既にロップがいないことに気がついた。
もう、ここは。いつもの白い何もない空間。
「さ、お疲れ様でした。私はもうちょっと寝ます。リインも寝た方がいいですよ。ほわ。」
バトランがあくびをする。目が赤い。ウサギみたいだ。
「ねえ。バトラン。私って。正しい?」
「は?知りませんよ。急にどうしたんですか。・・・神だからって烏滸がましいですよ。私が信仰する神様は。いつも悩んだり、ミスしたりしてますよ。ほら。泣け。」
バトランが両手を広げて、抱擁のポーズをした。胸に顔を埋めると温かい。
「そっか。そうだね。そうだよ。ごめんね。」
神様の涙はスノードロップ。




