神の夜食
微睡と眠りが混濁した中、急に意識を呼び戻される。ポタリ、ポタリと水滴が頬に当たって目が覚めたからだ。まだ暗いが周りが見える。
空は紺色と朱色が混ざった色。なら、今は未明かな。眼前には目を真っ赤にしたロップ・・・。いや、元々赤かったか。とりあえず、すんすんと泣いているロップがいる。
「ん、どうしたん?」
とりあえず声をかけてみた。
「リイン。う、う。うわぁああっ!リインっ!また嘘をついちゃったあ!あんなにカッコよく言えたのにぃ!嘘ですぅ!見栄張りましたぁ!今日くらい我儘言いたいーーっ!リインとバトランと遊びたいーーっ!思い出作りたいーっ!」
目を覚ました私を見て、ロップは縋り付いて泣きながら叫んだ。後悔したんだ。迫る期限を考えて、焦ったんだ。まだ本音を隠していたのか。
「はあ。素直じゃないんだから。偉ぶったり、泣いたり。でもよく言えたね。・・・じゃあさ。ロップ。ちょっと待ってね。バトランっ!起きてっ!」
「ぐぁーっ。んう?ん!敵ですか!?」
「おはよう。敵はいない。ごめんだけど、起きて。ロップとの思い出を作ろうと思って。」
「・・・おはようございます。私が寝ている間に何があったんですか。んー。まあ、大体検討はつきました。」
「さすがバトラン、話が早い。でさ、まずはあれをやりますか。」
「そういえば疲れて寝ちゃいましたが。やりますか、あれ。」
「あれって!?」
「今にわかるっ!バトランっ!!鍋と水!あれを三人分!いや、五人分でいこうっ!」
「もう出しましたっ!六人分でっ!」
「これは・・・?なんだ!?」
バトランが6袋を取り出した。一人につき二人前とは大したものだ。
「ロップ様。リインのラーメンを食べましょうっ!飛びますよ。・・、リインっ!まな板と包丁です!ネギっ!あと肉はどれに!?」
「エッセンにしよう!ちょっと焼くからフライパンを!!」
「はいっ。」
エッセン。限られた者しか食べられない、高級ソーセージ。それをふんだんに使うことにした。きっと前世で徳を詰んだら食べられるんだろうな。じゃなきゃ説明がつかない。あの袋、空気がパンパンでちょっと開けにくいよね。
「ラーメン?なにそれっ!?別に私はご飯を食べなくても。」
「私もそう!だけどね。美味しいものは食べた方が良いよ!」
必要なものは揃った。私が高速でネギを切り、その後にエッセンを焼き終えた頃には、バトランが麺を茹で上げた。スープの粉とお湯を入れて。ネギとエッセンとバター。ラーメンが手際よく完成した。
「へい、お待ち!ラーメン。」
バトランがラーメンから出る湯煙を手で仰いでロップに嗅がせる。
「な、なにこれ。嗅いだことのない良い匂い。」
「フォークのが良さそうだね。まずはスープから。いってらっしゃいっ!」
「なんですか、そのいってらっしゃいってのは?」
「分からないけど、なんか良くない?さ、ロップ。飲んでみて。」
「う、うん。」
私達が見守る中、ロップはスープを飲んだ。
「あつ!あついね、コレ。うわっ!なんだこれっ!美味しいっ!なんだこれっ!」
「麺とエッセンも食べてみて下さい。」
ロップが麺をフォークで巻き取り口に入れる。一段と笑顔になる。次にエッセンを豪快にカブッと齧る。凝縮されていた肉汁が飛び出す。更に笑顔に。
「うまっ!麺も。エッセンも。美味しいっ!」
「でしょう?リインのラーメンは世界一ですから。」
「なんでバトランが得意げなの。ま、いいや。食べよう。」
日の出までもうすこし。




