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あなたは異世界へと人々を転生させる神に選ばれました。  作者: リリー
ラビット・イン・ワンダーランド

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35/42

君の使命、私の使命

 ロップとそんなやりとりをしていたら、夜が訪れた。この世界にも夜は存在した。朱色の空が永遠に続くかと思っていたが違う。この世界は日の出ている時間が長いんだ。だから、きっと夜は短い筈だ。


 束の間の休息だ。バトランは眠っている。疲れたのだろう。音のない暗闇の中で私はロップに聞いてみることにした。私がロップを精霊だと確信したときから考えていたことだ。


「ロップ。起きてる?」


「うん。起きてる。なあに?」


 返事はすぐに返ってきた。ロップの口調は出会った当初と比べて、すっかり優しくなっている。


「ロップは何かやりたいことはある?私達がいる間に。楽しいこと。なんでもやろう。」


 今度は、しばらくの無音。思考に音はない。けれど、ロップが色々と考えていることがわかる。しばらくの静寂。少し経ってロップはこう言った。


「それは、最後にってことだよね?」


 私が伝えるまでもなく、ロップは理解していた。最後。精霊はその存在を生み出した対象物が失われたときに消えてしまう。


 世界樹がロップを生み出したとすると。ロップはこの世界の世界樹が失われたときに滅失してしまう、ということになる。


 ロップは言っている。世界樹は確かにあると。でも、世界樹とは自信を持っては呼べない事情がありそうだった。


 ロップはその木が弱っていることを知っているんだ。世界樹が寿命により朽ち果てるとき。ロップの存在は消えてなくなる。いつかはそのときが来る。


 世界を繋ぎ止める存在が誰もいなくなったときには、その世界は忘れ去られ、終焉を迎える。世界は誰かがその世界に存在し、認知されて初めて『ある』と言えるのだから。


 私のような神は一度きりしかその世界を旅することは出来ない。ここに一生留まることも出来ない。本来ならば、とっくに失われているこの世界を存続させていたのはロップという存在だ。


「そうだよ。遠くない未来に。終わりは来る。それまでに、ここに私達のような宇宙人・・・いや、来訪者が現れることはないと思う。」


 私は首肯した。これは私からの提案ではない。ロップも同じことを思っているという予想から伝えたのだから、反芻みたいなものだ。再認識させているに過ぎない。


 ロップは精霊。世界樹がない別の世界に行けば、消滅する。この世界に捕らわれているといえる。せめて、楽しい思い出くらいはあって欲しい。


「リイン。ありがとうね。そこまで理解してくれて。でもね。こんな世界でも、私が存在出来る理由なんだから。感謝しているんだ。それに君たちに出会えた。嬉しかった。どうにかしてここにいて貰えないかと色々考えたけど。君達には別の使命がありそうだから。これは私の使命で。誇りに思ってる。あっ。私はね。今、幸せだよ。これ以上にないくらいに。だから、望まないよ。一緒に世界樹を見て君達とはお別れ。それが一番の楽しいこと。」


 彼女は神にも出来ない不可能を成し遂げている。彼女の意志や覚悟は崇高なものだ。私はあれこれ考えていたが、終止符を打ち、結論を出した。ロップの言葉に私は反省しつつ、訂正する。


 ロップはこの世界の神様だ。私がロップに抱いている感情は羨望や尊敬を超越した、言い表せないくらいに特大の信仰に似た感情だ。私よりも偉大な神様だ。


 彼女がもし生まれ変わることが出来るのなら。私は精一杯の祝福を与えたい。


 明日には三人で世界樹を見れる。期待と寂しさを胸に私は眠りについた。バトランの爆弾みたいないびきの音が耳障りだったが、なんとか眠ることが出来そうだ。私も疲れていたんだ。神だって疲れる。

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