朱色の空
ロップがずんずんと先陣を切る。足取りが軽い。
ところで、ロップは何日、何年、一人でここに居たんだ?弾む足取りが彼女の心の中を教えてくれているようで愛おしく感じる。
進んでいく道が次第に険しくなってきた。道路はヒビだらけで、小さな穴もある。草木が繁茂していて、歩きづらく、木の枝は私達の視界を阻害する。森に入ったようだ。
「バトランっ。気をつけて。この辺は道路がボロボロだし、踏むと穴が空くかも。」
「ええ。ありがとうございます。それだけここは年月が経っているということですね。気をつけましょう。」
「そうそう。下だけじゃなくて、右も。左も。指差し確認大事。よし。」
ぐるぐると視点を動かして安全確認をした。異常はなし。
「あ。上も。うわ。綺麗な空だ。よし。」
この世界の空は美しい。夕暮れの朱色がずっと続いている。私達が青空を前提として生活をしているのとは違い、こちらでは朱色の空が続いている。夜はあるのだろうか。結構歩いたと思うけれど、変わらずに朱色。
「リイン!危ない!下!」
バトランが慌てた声で叫ぶ。
「あっ。」
踏むはずの地面がない。穴。それも大穴。バランスを崩してしまう。
「何やってんだ!」
そう言ってロップが手を差し出した。その手を私はガッチリと掴んだ。助かった。安堵した。
「あ、ありがとう。あ、あれ?」
おかしい。重力に従って落下していく。落下が止まらない。私の手を掴んだロップごと落ちていく。
ロップが差し出したのは両手だった。穴へと吸い込まれていく!
「意味ねぇーっ!!片方の手はどこかを掴んでなきゃ!落ちるうぅう!」
「ミスった!!うわぁぁああっ!」
そんな私達を見てバトランが冷ややかな一言。
「いや、飛べるでしょ。」
「あ、そうだった。久しぶりだったから。」
「えっ。えっ。え!」
ロップを抱えて宙を浮くと、彼女は驚いた。
簡単に穴から抜け出すことが出来た。そうだった。ここでは、私は空を飛べるし、強敵がいても、確実に倒せる。
「はぁ。はぁ。ありがとな。リイン!」
息を切らせながらロップがお礼を言う。
「こちらこそだよ。君は飛べないのに私を助けようとしてくれた。会って間もないというのに。ありがとう。でも、次からは両手を差し出さないでね。」
「咄嗟に!我の身体が勝手に動いちゃっただけだ!さ、行くぞ!」
照れながらロップは言った。私達は、また歩み始めた。結局、彼女は私の能力について何も聞いてこなかった。私に頼れば、その目的の世界樹だってすぐに行けるというのに。
「リイン、行きましょう。誰かを抱えて空を飛ぶのは疲れますから。」
「よく理解出来ました。それに。」
「ええ。そうですね。野暮ですから。冒険は歩くに限ります。ロップ様もそれを望んでいるのでしょう。」
朱色の空の下、世界樹を目指しての冒険は続く。旅のメンバーは神と神の使いとウサギで。




