ウサギの神様、ロップ
神の使いとしてのウサギは聞いたことがあった。けれど、ウサギの神様は聞いたことがなかった。
「そうだ。ウサギの神様だ。我を敬え宇宙人。」
「宇宙人?宇宙人って私たちのこと?」
「それ以外に誰がいるのだ。ここにいるなんて、どこからか来たに決まっている。私以外、ここにはいないはずなのだから。」
「まあ、君からみたら私達は宇宙人か。リインと。」
「メイドのバトランです。」
「友好的な宇宙人は歓迎するぞ、リインとバトラン。我はロップ。ここは村であり街であり。国であり。世界である。我は人であり、ウサギであり。国王であり。そして、神である。」
ロップは腰に手を当てて、ふん、と鼻息を出して偉そうにしたが、その姿は小動物が威嚇するよりも可愛らしく見えた。
「あの。ロップ様。」
「なんだ、バトランよ。」
「ここには誰もいないし、領地とかもないからなんでもあり。だから、ロップ様は神と名乗っているということですか?」
「む、むう。そうなるな。」
「なんだ。じゃあ、帰ろうか、バトラン。邪魔したね。バイバイ、ウサちゃん。またね。」
私が手を振って、そそくさと帰ろうとすると、私の服をロップが掴んだ。
「い、いや、違う!私はれっきとした神様だっ!私、じゃなくて。私はウサちゃんではない!ロップ様だっ!あ、待って。ええと、秘宝に興味はないか?」
「秘宝かー。ここにはあるの?」
「ある・・・。らしい。」
「らしい、ね。だったら別に行かなくても。折角だけど。ね、バトラン。」
「ええ。まぁ、そうなりますね。」
ぎゅっ。あるかも分からない秘宝探しに乗り気でない私達に、ロップの握りが強くなる。
「せ、世界樹っ!世界樹があるっ!折角来たんだから!綺麗だぞ!ちょっと歩くけど見て行った方がいいぞっ!」
「世界樹?天界とか冥府に繋がっているとかいう、あの世界樹?へー。どうしようかなー?うーん。」
考えている素振りを見せてから、ちらっ、とロップをみる。彼女はそわそわと落ち着かない様子だ。
「リイン。意地悪してるでしょう。」
ロップに聞こえないようにバトランが私に囁く。
「面白くて。ロップには、久しぶりの来客なのかもね。必死で可愛いね。」
「可哀想ですよ。」
「そうだね、ごめんごめん。からかうのはここまでにしておくから。でも。」
「ふふ。言わなくても分かっていますよ。」
「おい、何をひそひそ話しているんだ?世界樹だぞ。デカいぞ。」
ロップが私達を訝しむ。私達の表情を覗き込むように少し下からゆっくりと顔を近づけてきた。
「世界樹かあ。それは見たいかも。じゃあ、お願いしようかな。ウサちゃん。」
「ロップ様だっ!・・・えっ!本当か!?仕方ないなあ!連れて行ってやろう!」
ぴょん、ぴょんとロップは笑顔で跳ねた。行動と表情から喜びの感情が溢れ出ている様子だ。
「ロップ様。その世界樹には名前はあるのですか?」
「あ、ああっ!あるぞっ!ユグドラ・・・あっ、違うっ。ウ・・・。ウサドラシルだ!」
バトランの問いかけにロップはしどろもどろになりながら答えた。
道に穴がないかと注意しながら、私達は白ウサギについて行くことにした。だって、ウサギと穴は相性が良いから。




