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あなたは異世界へと人々を転生させる神に選ばれました。  作者: リリー
リインカーネーション

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もてなしと非対価

 人間の頃の記憶が曖昧なのだから、考えや言動の基軸となるのは神である私しかいない。神であった経験などない。だから私は想像の中の神を演じる。


 「きっと、前世の私は信仰心があまりない場所で生まれたみたい。それが良くなかったのかもしれない。」


 ごくっ。私はバトランにそう言った。


「はい。」


「それで。私にあるのは、とりあえず偉いという漠然とした神様のイメージ。他方、救いを求める人を救済するという、これまた漠然としたイメージ。私はこの二つの神に対するイメージを忠実に再現した。それが良くなかったのかもしれない。多くの者を救うことが最適だと、本気で思っていた。未熟だったね、私。」


 ごくっごくっ。


「はい。あの、ですね。大衆浴場の風呂上がりにフルーツ牛乳を飲みながら反省するのは、止めてもらっていいですか?全く説得力がないので。あ、未熟者は同意します。未熟なのは、その身体くらいにしてください。」


「だって無料なんだもん!タダ!お風呂、飲み物、食事、宿泊だってタダ!なんて良い世界なの!?後半の悪口も気にならないくらいに嬉しい!」


 ようこそ。観光客はこちらへ。無料の宿泊施設!温泉!食事!怪しい看板だったがきっと導きだろうと来てみたけれど、本当に無料だったのには驚いた。どうやらこの世界には救いがあるようですね。


「こんな世界もあるのですかね。それともこの国家だけなのか、村なのか。集合の単位が小さいとしても。いったいどうなっているのやら。」


 訝しげにバトランが言った。疑っている割には、彼女はとても長湯だった。


「じゃ、聞いてみる?あっ。ちょうど。あのー。」


 さっき牛乳をくれた黒髪の女性の店員さんがいたので私は話かけた。


「はい?」


「何故、この牛乳とかお風呂とか、ぜーんぶタダなんですか?」


「・・・ああ。ここの記念日ですよ。綺麗な金色の髪。あなたは外国の人ですね。歓迎します。楽しんでいって下さいね。」


「うん!そうするっ!ありがとう。」


 会話に少し間があった気がした。気のせいか。彼女の笑顔は素敵だ。彼女から追加で飲み物を貰ったので私は上機嫌でバトランに報告した。


「ここの記念日だって。よかったねっ!」


 飲んでみる。ごくごく。これも美味い。


「はあ。能天気。絶対おかしいですって。物やサービスに対して、一切対価を支払わない社会なんてあり得ません。記念日?どこにその記載が?全部タダ?ドリンク一杯無料とかならわかりますが。」


「まあまあ。おっ、これはコーヒーかな?それを入れた牛乳・・・こんな味だっけ。あ、れ?いしきが。とおのく。」


「え。ちょっ!リイン様!」


「なんちゃって。やーい。全然平気。でもこれは正真正銘の毒だね。死ぬ。普通の人ならね。」


 ゴッ!バトランに頭を殴られた鈍い音。


「痛ぁぁっ!」


「ちっ。ちょっと心配しちゃったじゃないですか。リイン。一刻も早く逃げますよ。ここは危険です。毒が、じゃありません。人々の殺意が、です。居ても碌なことに成らない。」


「でもどこに!?うわっ!?」


「こっち!誰も使っていない小屋があるから!」


 フードを被った子どもくらいの背丈の高い声の

、おそらく少年が突然、私の手を取って言った。


「バトラン!だって!行こう!」


 私は少年に従うことにした。悪意を感じないからだ。それくらいは理解できる。一つ気掛かりなのは、ここにいる皆からも悪意を感じないことだ。結果的に飲み物に毒が入っていただけで、何故かあるはずの悪意がないように感じがした。


「それが罠だったらどうするんですかっ!」


 バトランの言う通りだ。ごもっともな意見だ。彼が毒を入れた人物と通謀していたら、罠にまんまと引っ掛かってしまったことになる。でも。でもね。


「善意を信じられなくなったら!私、それこそ終わってしまうから!」


 信じないと。神でなくなってしまうから。誰かが私を信じてくれるように。


「ああ、もう!わかりました!昔っから!そういうとこは真面目なんですね!」


 私達は逃げ出した。渋々、バトランは付いてきてくれた。驚いたのは、私達が逃げるのを静止したり、追ってきたりする者がいないことだ。私達の容姿が珍しいのだろうか、皆が手を振って見送ってくれた。

 

 外はすっかり夜になっていた。進んでも道を照らすような明かりはない。でも薄っすらと足元が照らされている。花だ。色々な花が発光しているようだった。ここは多くの自然に囲まれている場所だ。こんな珍しい植物が沢山、自生しているところなのだろうか。


 どれくらい走ったか。もう、それが分からないくらいには走った。ずっと草木が生えた坂道を登っていたから、きっとここは小さな山の頂上だろう。足元の光は地上よりも強く発光して、明かりは必要ないくらいに。光る花がここの方が多いからだ。


 光に囲まれるように、小屋がそこにはあった。

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