甘い誘惑、コーヒー・キャンディ
貿易の中心、ハーヴン。カラフルな街並みとエメラルドグリーンの海。それらをテラスから眺める。ここはカフェ、アルコンシェル。昔からある老舗だ。
「ねえ。聞いてなかったけど、バトランさん。死んだんじゃなかったの。」
「リインは悪魔の言葉を信じちゃったのですか?悪魔信仰の方?」
「いや、全然。バトランに限っては、それはないって思った。ってか、誰が悪魔信仰だ。」
「確かにあの黒い刃は私を貫きましたよ。イテッ!と思いました。血も出ましたし。」
「うん。出てたね。え、それだけ?なんか事前に魔法を使っていたから大丈夫とか、あいつを欺く作戦があったとか。そんな感じじゃないの?」
折れた骨は回復しつつあるものの、まだ右手は使えない。私は慣れない左手で苦いコーヒーを飲んだ。
ん?こんな味だったかな?前に来たときよりも美味しい気がする。前も美味しかったけど。
「そんなものないですよ。ただ、オーダーさんに教わりました。」
「えっ、何を?」
「いかなる攻撃にも耐える方法を。」
「そんなのあるの!?ずるいっ!あるなら教えてよ!」
「それは。」
「うん。」
「根性とちょっとの魔力です。」
ぼぉーー、と汽笛の音がする。
「・・・そういえば、ハーコートさんは何してるんだろうね。あの美術館はもう続けられないし。結果的に良かったのか、悪かったのか。」
「ああ、それならですね。ここの・・・。」
バトランが何かを言いかけたとき、テーブルにコトン、とコーヒーが置かれる。
「お待たせしました。コーヒーのおかわりです。」
「あ、なんだか今日のコーヒー、とっても美味し・・・。ハーコートさん・・・!?なんで!?」
ハーコートさんがアルコンシェルの制服を着ている。
「ありがとうございます。私、昔は喫茶店もやっていたんですよ。アルクルは砂糖とミルクたっぷりのカフェオレが大好きでした。また作ってみたくなって。」
「私も飲んでみました。ハーコートさんのカフェオレは最高でした。とにかく甘くて。私がこの店に紹介しました。」
バトランは誇らしげに言ったが、私はこう思った。甘いのが理由かい!
でも、確かにコーヒーはとても美味しい。素人には作れない。それは事実だ。
「良かったです。こうしてまた会えて。」
私は左手を差し出した。ハーコートさんは私の手を労わるように優しく握って、深々と頭を下げた。
「私もです。色々とご迷惑をおかけしました。そして、ありがとうございました。お二人はアルクルと私自身の止まった刻を進めて下さいました。」
「いえ。職業柄、というか。倒さなければいけない敵を倒しただけですから。あ、あのことはどうか。内密に。」
「ほっほっほ。老人なので、もう忘れました。また、いつでもいらして下さい。」
ハーコートさんが自作したという、コーヒー・キャンディを舐めながら私達は宿に戻ることにした。これも美味しい。
「このキャンディはきっと、アルクルちゃんのために作ったんだろうね。」
「リイン。面白い話、お聞かせしましょうか。」
「なに?」
「あの悪魔、毎日のようにカフェオレとキャンディを作ってとハーコートさんに頼んでいたらしいですよ。」
「演技かな?」
「そこまで徹底しますかね?」
「はは。・・・美味かったんだろうね。ねえ、バトラン。」
「何ですか?」
「この世界、いつまでいたい?一回、帰ると二度とこれないんだから、迷っちゃうよ。」
「リインが死ぬほど大変な目に合っていますし、力も使えません。リインが決めるべきですよ。」
「悪魔ってさ。あんまり解明されていないんだけど。魔力のある世界にしかいないんだよね。必ずいるわけじゃないけど。一応。一応ね。」
「ここから去ってしまえば、私達以外の存在が倒すんでしょうか?」
「そうとも限らないし、一度、私達は確認しちゃったからね。悪魔がいることを。だから、この世界には他の悪魔もいるかもね。」
「リインが考えてること、わかりますよ。言いましょうか。」
「さすがバトラン。良いよ。せーの、で言おうか。せーの。」
「「もうちょっとだけ。いるかぁ。」」
お久しぶりです!カナイ様!色々あってもうちょっとこの世界にいます!落ち着いたら、後でまとめて報告します!絶対!します!後で! リインより。




