管理人、アルクル
一面のガラス細工に囲まれている。建物だけじゃない。美術館の入り口にある白鳥、馬、花のガラスのオブジェ。確かな存在感がこれらにはある。まるで本物のようだ。
それに。
もしやと思い、白鳥のオブジェに近づいてみる。ピクっと動いた気がする。
ならば、と手を伸ばして触れようとしてみる。そうすると白鳥はびっくりして、しなやかにガラスの翼を羽ばたかせて飛んでいった。
では馬のオブジェは・・・。いいや、やめておこう。
建物の扉はもちろん、扉の取手すらガラスだ。触ってみるととても強固だと感じた。見た目は割れそうだが、決して割れない気がした。
「ねえ、バトラン。これって。」
「明らかにオーバースペックですね。少なくとも、この世界の時代に合っていないです。」
「時代にそぐわない技術ね。それって。」
「ええ。リインが想像している通りかと。ハーヴンのガラス工芸が有名だとしても、ここまで発展しているのは奇妙です。これは魔法だと説明を受けたとしても、こんな精密に動かすことは不可能です。硬さも尋常じゃないです。」
ほっほっほっ、と。笑い声がした。あの声だ。
「ようこそガラスの美術館へ。転生の神、リイン様とその従者、バトラン様。お待ちしておりました。」
「ハーコートさん!ここって!?あれ、私達のことを知っている!?」
おかしい。確か、ハーコートさんは私達が名乗る前に去っていったのだから。
「説明は館内で致します。こちらは美術館の管理をして貰っている姪の。」
「アルクルですっ!リイン様っ!バトラン様っ!荷物があれば預かりますよっ!」
ハーコートさんの背中から現れた元気な子どもが両手を差し出した。三つ編みの白い髪の女の子だ。モスグリーン色のフリルスカートが可愛らしい。伝統的な服か何かだろうか。
「ふふ。お気遣いありがとうございます。大丈夫ですよ。ほら、何も持っていません。私は荷物をスカートに収納できるので。それに、こんなに若いお嬢様に重い荷物を持たせるわけにはいきませんし。」
「ほっほっ。」
「あっ!またかぁっ!」
バトランの返答にハーコートは笑い、アルクルは悔しそうにした。
「私っ!19歳ですからねっ!」
「「えっ!?」」
これまたガラスのオブジェなのかと疑うくらいにアルクルの見た目は幼かった。
「よく驚かれますっ!でも、しょうがないですっ!ではっ!来客用の部屋はこっち!ですっ!」
「へえ。凄いね。」
美術館の中には彩色された様々なガラスが沢山あった。椅子、テーブル、シャンデリア。鳥籠には透明な鳥が入っている。どれもキラキラと輝いている。きっとあの鳥も動くのだろう。
アルクルに誘導されてガラスの階段を登り、二階の部屋に案内された。勿論、そこにもガラスの椅子とテーブルがあった。ガラスの額縁に入った絵画もある。
お茶を用意させるとハーコートさんは言い、アルクルはその準備のため、一度私達とは離れた。
「お掛けください。ご足労お掛けしました。」
「いえいえ。」
私達が椅子に座るや否や、突然、ハーコートさんは床に頭を擦り付けた。
「・・・この度は申し訳ございません!お二人にお願いがございます!」
「えっ?ちょっ!?ハーコートさん!?頭を上げてください!」
「どうかお話しだけでも!聞いて頂けないでしょうか!」
「聞きますって!バトラン何かした!?ダメだよ!」
「してませんよ!」




